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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-7章 魔神王と五種の守獣たち

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275話 撤回


 仲間たちが帰ってくる。その時、私たちは完全にできあがった後だった。


「おーおかえりー、ようやく帰ってきた、おそいよー」


 仲間たちは、私の顔を見るなり汚物を見るかのような目で見てくる。


「何やってんだアリア、俺たちがクエスト行ってる間に」

「何って見ればわかるでしょー、飲み会だよーせっかく王子も来てるだしさー」


 フェクトは王子の方にも視線を向ける。その目は、なんとも言い難い目で彼を見ていた。


「王子様、何をしているのですか? あなたまで酒に呑まれるなんて状況分かってます?」


 彼はその声にビビり、すぐさま酔いを醒ました。次の瞬間、土下座をしたのであった。


「まさかとは思いますけど、お酒を飲むために来たのではありませんよね?」

「お詫びに伺いました。その際、剣聖様からのお誘いがあり、お断りするのも失礼と思い、お供させて頂きました」


 こちらをギロッと睨む目、完全にキレている。今にでも魔法を放ちそうであり、恐怖心を抱かせる。


「別に構わないでしょ、王様代理としてエルザが王位を継ぎ、その側近として子供たちは尽力することになってるんだから」

「それはそうですが、まだこのことは未発表案件です。それに大陸全土の民がどう思うか想像できるだろ」

「この話に関しては、私とイデリアとの意見を纏めて決まったことでしょ、今更口出すのはどうなの?」


 今にもお互いヒートアップしそうな勢い。頭で分かっていても、言葉が止まらない。

 そんな時だった、頭に強い衝撃が走ったのは。


「痛っ! 何するのよナズナ!」

「何か気に触るようなこと言ったか?」

「まず二人とも落ち着くニャー。ここで話した所で、何も解決なんてしないニャー」

「ナズナの言う通りですよ。お二方とも、少しばかり外の空気を吸ってきてはいかがですか?」


 ガードに言われるがまま、私たちは半ば強引に外に放出された。

 中に入ろうとすぐに振り返るが、勢いよく閉まる扉。ガチャっと鍵が閉まる音が聞こえ、私たちは仕方なく歩くことなる。

 

「まさか鍵まで掛けられるなんてね。ここまで強引なことしなくてもいいのにね」

「まぁ俺たちにも悪い所があったと言うことだろ。それよりどこ行く?」


 どこ行く? そう言われても私には行きたい場所なんてなかった。

 何度も長期滞在をして大抵の場所は一度は訪れている。


「特に行きたい場所はないかな」

「そうか。それだったらその辺ぶらぶら歩こう」


 そうして私たちは、大規模な抗議デモが行われている大通りを通る。


「あ、あの! 剣聖様ですよね、我々新聞社の者です、今お話よろしいでしょうか?」

「よろしくないわよ。あなたたちに話すことなんてこちらは何もないわよ」


 強い口調で言うが、全く怯むことなく話しかけてくる。


「管理者イデリア様が言っていることについて聞きたいのですが、協議して決めたと言っていましたがそれは本当でしょうか?」

「なんのこと? まずねなんでもかんでも、最初から情報を知っている前提で話さないでくれるかしら。ちゃんとどんなことか、言ってから聞きなさいよ!」


 男性の記者は少し怯むが、すぐに立て直して話を続けた。


「王としてエルフ族のエルザ様が王位を継ぐということ、現王様が今後戻ってくることについてです」


 イデリアが話した? このことを、それはまずもってあり得ないと考えるのが妥当だろう。

 なぜならこの発表は時期を見て言うことと決まっていたからだ。


「そんな情報知らないわよ。それに本当にイデリアが言っていたの?」


 男は途端に黙り込む。おそらくこれは、ギルド前で私たちの会話を聞いてしまったのだろう。

 だからこそその真意を突き止めたいと思ったと考えるのが妥当。


「もう一度聞くわね、誰が言っていたのそんなこと?」

「その辺で止めといてやれ、トラウマを植え付けるのは良くないぞ」


 フェクトの言葉で我に返る。そうして逃げるように去っていく彼を見送りつつ、私はテレパシーを発動させたのだった。


(ごめん私のせいだ、情報が漏れてた)

(王位のこと? 私の名前を使っているのは情報が入っているわ、それに対する抗議を今して来た所よ)

(おそらく奴らはその情報を出すけど先に発表しちゃう?)


 イデリアは考えたのち、すぐにその準備に取り掛かると言ってテレパシーが切れた。

 そうして三十分も経たないうちに、このことは大々的に魔法界、エルフ族のエルザが説明し話題を掻っ攫っていった。


 翌日。私たちの家の前には、大勢の新聞記者が出てくるのを待っているのが気配で分かる。

 おそらく前王様の一件だろう。私とイデリアの権限で、罪を償い次第王様としても復帰することについてだろう。


「みんなこれについては私が説明行くから、手は出さないでね」


 釘を刺すように言い、私は新聞記者に囲まれながら話をすることとなった。


「手短にね。私だって時間はあまりないんだから」

「早速なのですが、どうして復帰させると言ったのかその真意を教えてください」

「戻る義務があると思ったからです」

「それで納得出来ると思ってるのでしょうか? 剣聖の言葉だからといってな条件で信じろなんて言いませんよね!」


 的確に突いてくる辺り、ここにいる人たちはベテランなのだろう。

 逃げ道を作らせないように質問をしているのを見て、嫌になってしまう。


「信じろなんて言いません。だけどもう一度チャンスをいただけませんか? この大陸が発展するためにも」


「あなたの命を賭けてくれるならどうぞ。そんな覚悟ないでしょ」


 重く突き刺さる言葉。周りはそんな言葉に驚きを隠せずにいた。


「答えられないんですか? 昨日はあんなにガン詰しておいて、自分が不利になったら黙り込むんですか!」

「別に構いませんよ。私の命なんてあってないようなものなので」


 男は自分が思っていた回答と違ったのか、オドオドしたのち、自分のやらかしたことの重大さを理解したようだ。


「今の言葉は撤回します。だから今のことはなかったことになりませんか?」

「バカなの? 勢いに任せてそんなこと言うじゃねぇよ、それに撤回するつもりないから」


 このことは、大陸中をまたもや震撼させてしまうのだった。


 言ったかどうか覚えてないので言いますが、死神少女の世界線は、魔神王とイデリアが相打ちで死亡しています。

 被害は、新大陸を目指すことでしか生きられない程には、荒れ果てた大陸になっています。

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