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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-7章 魔神王と五種の守獣たち

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274話 自責の念


 ケルトは、自責の念に駆られた表情をしていた。入ってくるなり、王様に土下座をして詫びを入れた。


「あなたのせいでは無いわよ。アイツら殺し屋は、どんな時でも、実行に移せるように準備していただけなんだから」

「それを見抜けなかった俺に責任がある。そんな軽々しく発言しないでくれ」


 怒りを見せるが、それを表情に出すことはなかった。


「軽々しく発言はしてないわよ。それにもとは言えば、私に対する王族の逆恨みが発端だしね」

「何を言う! お前があんなことをしなければ良かったことだろう。こちらの意見を聞いていれば、こんなことをしなくて良かった。ほんと今まで最低最悪の剣聖だ!」


 この人……バカなのだろうか。全て自分がやりましたと問い詰めなくても自白したんですけど。

 それに気がついたのは、王様以外全員だった。

 最初は何が起こったのか皆んな分からなかったが、すぐに我に返る。


「発言失礼します。分かっていたことなんですけど、あなたの指示だったんですね」

「なんのことだ! 管理者は順応だったのに、そちら側の手を持つと言うのか!」


 この人まだ気が付かないんだ。早く気が付いた方が、身のためだと思うのは、私だけではない。

 実際にイデリア自身、声色は変えていないが、本気でキレている。

 私をバカにするような発言。それがトリガーとなったのだろう。

 周りにいる私たちにも、悪影響を及ぶかのような魔力が練られている。

 

 イデリアは徐に杖を取り出し、王様に向けた。


「私をバカにするのはどうでもいい。アリアをバカにした発言、死んで詫びろ。火葬の手間が省けるわ、インフェルノ」


 繰り出される魔法は、ドス黒く炎とは呼べない色をしていた。

 私は仕方なく王様の前に立ち剣を抜く。


「これ以上はダメだよイデリア」


 核を突き刺し消滅させる。


「殺すのはダメでしょ、一回深呼吸をするべきだ。それはそうと、剣を振り翳したところで、そんな鈍らな剣では殺せませんよ」

「うるさいうるさいうるさい! 我に敵意を向けたのだ、何をしても我は許されるのだ!」


 剣を軽く弾き、首筋に剣を突き立てる。王様は怯み、その場に座り込んでしまう。


「覚悟もないのにやったらダメですよ。罪を増やしてもいいことなんてありませんから」

「……うぅ」


 そうしてイデリアが落ち着くまでの間、静かな時が流れた。

 その間、玉座の間に入ろうと息子たちが何かしようとしていたが、イデリアの結界の前では無意味に終わる。


「王様、自分の発言そろそろ気が付いた?」


 王様は、すぐにハッとなり全て終わったと言わんばかりの顔で、地面に俯いた。

 勢いに任せた発言とは怖いものだと私はその時、再確認する。


「確かに師匠も、師匠の師匠もあなたたち王族に従順だったでしょうね。でもね、それでは剣聖としての称号の意味がないのよ」

「そうかもしれんな……剣聖様、この様なご無礼、誠に申し訳ありませんでした。心からお詫び申し上げます」


 ケルトは、自分の職務を全うするために王様を捕まえたのだった。

 その顔は、涙で前が見えなくなるほどに泣き崩れながらも、そんな彼はとてもカッコよく見えた。


「王様、あなたは確かに悪いことをしたわ。だからこそ、罪を償ってここに戻って来なさい。これは、剣聖命令です」


 扉が開いた瞬間、息子たちが襲ってきた時のことを考え、護衛として、フレリア、攻獣、守獣が一緒について行く。

 そうして玉座の間は、私たち三人とイデリアだけの四人だけになった。


「さっきから黙ってるけど、もう落ち着いているんでしょ?」

「さっきは止めてくれてありがとう。アリアが居なければ、私はあの人を殺していたわ」

「別に構わないよ。これから王都は忙しいくなるね」


 私にとっては他人事だ。だからこそクスッと笑ってしまう。そうしてこのことは、大陸全土にすぐに伝えられたのであった。

 王族に対する不満は、全土により根強く力を増す。

 王都では、毎日のように抗議活動が城の周りで行われていた。


「みんな暇なのかって思うぐらいには、毎日抗議活動してるねギルマス」

「アリアが居てくれてギルドとしてはありがたい限りだ」

「まぁ、不完全燃焼のお二人さんがクエスト受けてるからね」


 今回何も出来なかった二人に加え、ガードもクエストについて行ってしまっていた。

 それもあって、王都のクエストは新規のクエスト依頼がない。


「それにしても大変だよねギルマスもイデリアもさ」

「そうだな」


 遠い目をしているギルマス。いつも酒場で飲んでいた連中も全員、抗議活動に参加をしていた。

 ただ参加しているなら、問題ないのだが事件は起きる。

 誰かが冒険者をその気にさせてか、剣技や魔法を放つ冒険者が現れる。

 幸いにも、イデリアの結界で特に目立った被害はない。ただ、放った連中は全員、軍に連れて行かれる始末である。

 放つものが現れないようにと、魔法界まで駆り出される始末である。


「アリアの呑み相手、お灸を添えたりと忙しい限りだよ」


 そんな中、ギルドの外が異様に騒がしかった。つい数分前まで、静かだったはずが今では罵詈雑言の嵐である。

 気配的に誰が来たか二人とも分かってしまう。


「アリアにお客さんの様だ」

「そうみたいだね、私は話すことなんてないのにね」


 そうしてギルドのドアが開かれる。そうして、こちらにゆっくりと歩いて来た。


「この度は本当に申し訳ありませんでした」

「別に君が謝る必要はないよ。それに謝罪なら直接王様からもらってる」

「これは息子としての責任を果たすためです。どうしてもお詫び申し上げたく存じました」


 そうして私はまだ開けてないエールを開ける。そうして彼の前にグラスを差し出しこう告げた。


「安い酒で悪いんだけどさ、三人で飲まない?」

「安い酒で悪かったな」


 ギルマスは少しキレていたが、そんなことはどうでもいい。

 そうして私たち三人は、仲間が帰ってくるまでの間飲んだのであった。

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