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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-7章 魔神王と五種の守獣たち

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271話 恥ずいこと


 エールが届き、ひとまず乾杯を済ませた。ただ、元気なのは、私一人である。


「その暗さのままでいいから、早速だけど本題入ろうか」

「魔法の一件だろ。でもあれは今、エルフ族たちと話し合ってるんだから、俺たちに何が出来るんだよ」


 フェクトらしい回答を見せてくれる。それに対して、思わずにやけてしまいそうになる。


「今、王都各地に私の分身を放ってるだよね」


 酒場が一斉に静まり返った。仲間たちもどう返答したらいいのか分からず、戸惑いの表情を見せる。


「そんな顔をしないでよ。私を殺せるチャンスなんて、滅多にないんだから、誰かしらは挑戦してくるはずだから」


 楽観的な態度に仲間たちは、呆れた表情を浮かべてしまう。

 トータトンはすぐさま立ち上がり、出ていってしまう。


「分身を消す気なのかな。やめた方がいいと思うけどな」

「どうしてだ。普通に考えたらこの手が今とれる手やろ! 自分の命を蔑ろにするな」

「してるつもりはないよ。これ以上犠牲を出さないためだから」


 フェクトは何も言えなくなってしまう。他の三人を見ると、それぞれ食べたい料理を注文している最中だ。

 すぐに切り替えて、その時に備えるというのが伝わってくる。


「別に問題ないニャー。少しは落ち着いた方がいいニャー」

「何言ってんだナズナ。どんな魔法なのかもあまり分かってない中、それは流石に無謀だろう」


 そんなたわいもない会話をしている時だった。途端に景色が変わる。

 先ほどまで明るい店内に居たはずが、外に出てきていた。


「これが本人の意思なんて関係なく行う魔法ってこと? 人気のない場所だね。それに、私はこんな所を歩くようにはしていなかったはずだけど」


 ある程度自由。そう魔法を掛けていたが、なるべく人気のない場所には行かないようにしておいた。

 これも魔法の一種なのだろう。


「酒場で仲間といたはずなのにな。ここでお前は死ぬんだよ、剣聖アリア」


 全身黒い布に覆われ、まるで夜に生きる殺し屋。そう思うことしか出来ないぐらい、印象が強かった。


「でも私ガッカリしてるんだよね。攻撃した瞬間にチェンジさせれば、確実にダメージ与えられてたのに」

「正直に言うが、それが出来ていたらとっくにやってるわ」


 これから死ぬ相手なら別に言ってもいいと思ったのだろう。なんともアホなやつだ。そう思ってしまう自分がいた。


「じゃあ殺してみなさい、私を殺せると思ったから実行に移したよね」


 次の瞬間、鞘から抜かれた剣が木剣に激突する。凄まじい力なのは間違いない。

 だが、力で押しているだけで剣の技術はない。


「そういうことね。この力であなたは彼女の剣をぶち壊した」

「なぜお前の剣は全く壊れる気配がしないのだ」


 先ほどまでの威勢なんて消え、今はもう後悔という言葉に、頭を支配されているようだ。


「そんなの簡単なことよ。私の剣がそれで潰れるなら、とっくに私はもう生きてないってことよ!」


 弾きとばし、一気に体にトラウマを植え付けるかのように叩き込む。

 筋肉を魔法で増量した所で、所詮それはただのハリボテに過ぎない。

 急所に叩き込めば、どんな相手でも確実に怯む。


「さっきの威勢はどうしたの? 鳴いてみなさいよ、私を殺すんでしょ、やってみろよ!」


 痛みで声も出せず叩きのめされたのであった。


「はぁー。まさか途中で入れ替えたな犯人の野郎」


 あのテンション上がり過ぎて、途中恥ずいこと言っちゃった。

 まさかの発言をしたことにより、ショックを受ける私。しかもその相手が、おそらく他の殺し屋。


「最悪なんだけど、それにしてもどこだよここ!!」


 マップで調べてみると、食事をしていた酒場から遠く離れた場所である。

 周りにあるのは、殺人があった場所とはまた違う畑。


「とりあえず入れ替えるか」


 そうして酒場の分身と中身を入れ替えたのだ。みんな気が付いているのか、こちらを見てくる。


「そんなに視線を向けられた所で、何もなかったわよ。途中で犯人は入れ替わって逃げたし」

「そんなことは分かってる、無事で良かったよ」


 フェクトの温かい言葉に私はホッコリしつつ、エールに一口飲んだ。

 ジョッキをテーブルに置き、私はあったことを話した。


「トータトンには後で伝えておきますわ。それにしても、厄介なものですよね」

「そう思う。これ以上の犯罪行為は流石に見逃せない。全力で捕まえるわよ」


 その頃、魔法界本部では話し合いが続けられていた。


……


「今回のことを踏まえ、王都全域に分身禁止令を出しましょう! 少しでも対策しなければなりませんから」

「イデリアちゃん。とりあえずそれで良いともうけど、アリアちゃんは勝手に動いて、接触したみたいだよ」


 私の顔は次第に、青ざめていく。最悪な想像も一瞬してしまうぐらいには、動揺が広がってしまっていた。


「犯人には逃げられたみたいだけど、こうして入れ替わり騒動が起きてる以上、王族に関してはどうにかしておいてね」

「分かってるわ。アリアって、おてんばすぎるのよね。なんで、やっちゃうかな」


 会議が終わり、緊張の糸がプツンと切れたのか、愚痴ってしまう。

 人がどれだけ心配しているか、あまり理解している様子がない。

 それだけで、先が思いやられていく。


「アリアちゃんは強いし、心配ないと思うけど。イデリアちゃんは少しは気楽にやりな」

「そうかもしれないけいど、流石に心配するわよ」


 そんな話を、エルザとしつつ私は席を立った。そうして、今の様子を確認するため、その場を後にした。

 そうして外に出ると、ものすごい形相でトータトンと遭遇を果たすのだった。


「どうしたのトータトン。血相変えて何してるのよ」

「アリアの分身を消してるんだよ! あの方、このようなことこそ、我々に命じてほしい限りだ」

「そうかもしれないけど、アリアはもう犯人と戦ったわよ」


 トータトンの驚き顔。疲れ切った体にとどめをさしたのか、そのまま倒れ込んでしまうのだった。


 恥ずかしくかなっていたアリアだが、これは書き直した文書のため、最初はもっとすごいことを言っていた。

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