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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-6章 冬の旅路と15歳と学校

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243話 マイン


 春の陽気が静かに始まろうとする頃、私たちは旅を続けていました。

 運河を目指し、今日も気ままに箒を進める日々。それは、トラブルもなく順調そのものだといえるほど。


「アリア、このまま行くとあと数日掛からないんじゃねぇか?」

「何事も無ければね。ここまで順調だとやっぱり不安にはなるよ」

「何かあったら、わたしがどうにかするニャー」


 そうして、その日の旅が終わろうとする頃、私たちはある問題に直面していた。


「これどうなの?」


 思わず困惑した声を出してしまう状況。


「どう考えても、魔物の形跡だろ?」

「この跡って、結構な大きさだよね」


 夕暮れの光に照らせながら、ある魔物の足元に私た血は遭遇したのです。

 それも四足歩行で、ゆっくりと運河を目指して歩いている様子が、突如として現れた。


「今まで通った道には無かったよね?」

「それは確かだ。だが突然、平原のど真ん中にこんな跡が現れたとなると、人為的に運んでいる可能性が高いかもな」


 フェクトの考察は、練られたものだろうがおそらく違う。転移は、国から国でしか移動が出来ないからである。


「生きたものをボックスには入れられないしね」

「それも考えたけど、無理だ」


 そんな中、私はあることを閃いた。ここいら周辺には、村や国はない。

 それに、村や国に立ち寄らずに生活する犯罪者も多い。


「もしかしてさ、魔物を浮かせて移動してるって考えられない?」


 フェクトはすかさず否定する。それもかなり強い言い方をしている。

 それだけのあり得ないと言うことなのは、私も重々分かっているつもりである。

 それでも、私は考えを曲げることは無かった。


「喧嘩は辞めるニャー! それよりこれは前に進むべきだと思うニャー」


 ナズナはジッと足跡の先を見つめ、そんなことを言う。だが、辺りはすっかり日が暮れて夜が顔を出している。

 この暗闇では、闇雲に進むことは避けた方が良いだろう。


「今日はここで野宿しよう。二人は寝床の準備をしてて、私が料理作るから」

「あぁ分かった」

「了解」


 二人はその後、すぐに準備を始めるが会話が無かった。何をずっと考えながら、行動をしているように見える。

 それに気を取られているのか、あまり作業が進まない。

 なぜか、二人の行動が気になっている自分がそこには居た。


「遅くなったけど、ご飯出来たよ! 二人ともテントから出てきて」


 二人からはいつものような返事はなく、黙ったまま出てくる。

 ご飯を食べている間も、何かを考えており、その場に体はあるはずなのに、魂がその場にないように感じてしまう。

 それを言うべきかと迷ったが、心の中でグッと押し留めた。

 その日の夜は、すぐに二人はテントの中に戻ってしまい、ろくに話が出来ない。

 声を掛けようとしたが、何故か言葉が出てこない。声は出るはずなのに、止まってしまう。

 そんなモヤモヤを抱えたまま、私は夜の晩酌をしている。


「なんでさっき、声が出せなかったんだろう」


 一人になれば出る声。それにどこか私は、腹を立ててしまう私自身が嫌いになりそうだ。

 机に顔を突っ伏し、色々な感情が頭の中をぐるぐると回るこの感覚。

 私はそれを感じたくなくて、いつもより早いペースで酒に手を伸ばしてしまうのだった。


「やぁ、久しいねアリア。私のこと、覚えてる?」


 その声はとても懐かしい声に思えた。もう何年も出てきていない声が、私の耳元から聞こえてくる。


「おーいどうしたの? まだ寝ぼけてるって感じかなー?」


 体を揺り、私を目覚めさせようとしている存在。私は寝ぼけた頭を起こすように、体を起こす。

 そこは、昔何度か来たような場所が目の前に広がっていた。


「あ、ようやく起きた! 私のこと分かるよね、マインだよ」

「なんで私、ここに来たの?」


 困惑した声を漏らしてしまう。

 ここには、おそらくもう来ないだろうと思っていたのに、なぜ来てしまったのか私は見当も付かない。


「ここに来た理由? それは君が、酔った状態で色んなことを考えているからかな」


 確かに私は、色々なことを考えていた。

 それに対して、答えが出ずどうしたら良いのか分からず、お酒に頼っていた。


「最後は、酔った勢いでそのまま眠っちゃって魂をここに持ってきたってわけ」


 ここに連れて来られたのは、他にも理由があるのだとすぐに理解した。

 その愚痴をどうやら聞いてくれるらしい。


「まさか、こんな形でまた会うとは思って無かったよ。私の愚痴でも聞いてくれるの?」

「それもそうだね。それにしても、二人がご飯中に何も話さなかったぐらいで、悩みすぎだよ」

「今思えばそうだよね。二人がずっとアレに気になってるのは気が付いてたけどさ」


 その後も、マインは私の話を聞いてくれた。その話はいつしか、別の話になっていたがそれはそれで、楽しかったので良いことにしよう。

 そうして、もうすぐ朝を迎える頃、マインは口を開く。


「あの足跡、まずは鑑定をするべきだね。それでどんな魔物なのか、知ることをやるべきだよ」

「すっかり抜け落ちていたよ。ずっと追うことや、突然現れた謎をずっと考えていたよ」


 私はそうしてマインに挨拶をして、登り始める朝日を感じながら起きたのだ。

 凝り固まった体を、少しばかりほぐしストレッチを行う。

 そんなことをしていると、二人が起きてくる。


「え、アリア!? なんでもう起きてるの」

「ほんとだ!? なんで起きてんだ、具合でも悪いのか」


 二人とも驚きながら、話しかけてくる。それだけ私の行動が、二人からしてみればおかしいことなのだろう。


「そんな二人とも驚かないでよ。それより、あの足跡を鑑定してみない?」

「すっかり抜けてた。なんで気づかなかったんだろう」

「確かにそうだよね。わたしも気づかなかったよ」


 そうして私たちは足跡の側に行き、鑑定を発動させる。色々な情報が頭に流れ込んでくるのを感じる。

 そうして、鑑定結果がまとまったのだった。

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