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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-6章 冬の旅路と15歳と学校

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242話 戦闘


 その顔は、とても驚きに満ちており内心笑ってしまいたくなるほどの、インパクトだった。

 何度も私の顔を見ては、現実かどうか確認している様子である。


「それで、ここで何をこれ以上やらかす気かな? 剣聖に教えてくれないかな?」


 男は、頭の中が真っ白になってしまったのだろう。何も言い出せず、ただ私を見るばかり。

 そんな状況でも、悲鳴が相次いで聞こえて来た。


「君に構っている時間は無いみたいなのよ。何も情報を吐かないのなら、あなたの居る価値は、無いに等しいわ」


 ボックスから木剣を取り出し、男の腹部に一撃叩き込むのであった。男は何も出来ずに、あっさり落ちていく。

 それを回収して、ギルド前に置いて私自身も箒から降り国の状況を見て回る。

 各地で暴れている構成員たちを薙ぎ払いながら進んでいく。


「おーい! 剣聖様、こっちも助けてくれ! グッッ……!」


 私を呼んだのは、昨日の昼間に出会った市場のイケおじである。看板らしきものを持って交戦しているが、状況は芳しく無いのが伝わってくる。


「おじさんは無理しないで! お店が心配なのは分かるけど、自分の力量を考えないと死ぬわよ」


 私は、オブラートに包んだりする余裕がなかった。直感で、伝えたほうがいいと思ったのかもしれない。

 そんな中、それを割り込むように話しかけてくる存在にようやく気がついた。


「やっとこっちを見たか。俺のことなんて眼中にないのかと思って内心焦ったわ」


 おじさんとは対照的に、チャラそうな男が無粋にも話しかけてくる。睨みつけるが、特に様子の変化は感じられない。

 それどころか、まだ話しかけてくる始末である。


「ここであったのも何かの縁だしよ、せっかくだしいいことしない? 快楽の海に溺れさせてあげるよ」

「へぇー快楽の海ね。でもあなたが今から溺れるのは苦痛の海だけどね」

「はぁ!? って、ぐがあぁぁぁぁぁつ!」


 死なない程度に痛めつけ、私はその場を後にする。おそらく、彼はもう今まで通りの生活は行えないだろう。

 それだけの痛みを、一瞬にして感じさせたのだ。これで少しは会心をしたらいいがと思ってしまう。


「アリア! 状況はどんな感じだ?」

「フェクト! それって返り血だよね? 一気に攻め込んだみたいで、まだ混乱が続いてる」


 フェクトが声を掛けてきた時正直に言って、驚いてしまった。

 それだけのインパクトを感じてしまったのだ。

 服だけではなく、顔面にも血が飛び散っている。それに、拳は血が垂れていた。


「当たり前だろ! とりあえず状況が分かり次第、随時報告ってことで!」


 そう言い残し、またどこかに行ってしまうのだった。そうして、私も叫び声が聞こえる方へ走り出す。


「剣聖様! こっちで状況確認するから、思う存分暴れてくれ!」


 おじさん連中が、俺たちに任せろと訴えかけてくるようだった。

 私は軽く会釈をしたのち、一気にスピードをあげる。


「抵抗する奴らは殺してしまっても構わん! 我々の力を見せつけろ」

「見せつけられなくて残念ね。今の私を止められると思うな!」


 強く握りしめられた剣での一撃。それを耐えられるものを中々いない。

 彼らは吹き飛び、そのまま動かなくなる。


「我が名はアリア! 剣聖の称号を持つ者として、この場を治めに戻ってきた! これ以上の悪さは私が許さない」


 それを聞いていた住民たちは、それぞれ腕を上げ歓声をあげる。

 それに伴ってか、ダークウィッチーズの面々は、逃げ出す始末だ。


「剣聖から離れろ! ここで人数を減らす訳には行かないのだ!」ってぎゃあぁぁ!」


 部隊指揮官と思われるうるさい人物を叩きのめし、周りに固まっていた一部隊を葬る。

 魔法を放つ連中もちらほら見受けられたが、一切受け付けず、撃った魔法は儚く消える。

 そんな状況で、放ってくるアホは少なくなっていった。


「そんな弱い魔法、私に通じると思っているの? ほんと可愛らしいわね」


 ダークウィッチーズは、ほんの数時間足らずでほぼ壊滅したのだった。

 この街にいた冒険者以外にも、魔法界が派遣されたことも大きな要因だったと言えるだろう。


「この戦いは、我々の勝利だ!」


 この国の領主の宣言は、各地で歓声を呼んだ。それほどまでに、一致団結とした連中なのだと、私は改めて知るのだった。


「おーい! アリア、お疲れニャー」


 ナズナは相当暴れたのだろう。傷を作りながらも、とてつもなく満足した顔なのが伝わってくる。


「この国って、あんなに揉めてたのに、いつの間にか団結してたニャー」

「私もそれ思った。なんか、一皮剥けたっていうか強くなったって印象だね」

「そりゃそうだろ。魔法界の指導も厳しかったみたいだし、それが効いたのかもな」


 フェクトは、あれから相当暴れたのだろう。乱雑になった服装の姿でしか、得られない栄養素がそこにはあった。


「フェクト、香水の匂いがするニャー。どんな所で戦ったら、そんな複数の匂いがつくニャー?」

「あーこれか。香水を盗んでるバカが居たから、それを倒した時についたんだな」


 そうしてフェクトが不思議そうな顔を浮かべながら、こうなことを言う。


「なんでだか知らないけど、途中から黄色歓声に包まれたりしてたんだよな」


 私はこの時、言うべきか言わないべきか迷った。ただ、それを言ったところで無駄と思った私は言わなかった。

 掻き上げた髪。偶然出来上がったであろう複数の匂いの香水。イケてる顔が助けてくれたんだ、世の女性は惚れてもおかしくないだろう。


「まぁ良いんじゃないの。それより、今日は一日泊まることになりそうだね」

「だな。流石に俺たちは居た方が良さそうだしな」


 そうして、私たちの活躍は大々的に新聞にて報道された。それだけではなく、三人それぞれの特集ページが組まれ、世間の好感度は少しばかり回復したと風の噂で聞いた。


「じゃあ今度こそ、運河目指して行くわよ!」

「おう!」

「了解ニャー!!」


 私たちは、静かに旅立ったのである。

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