238話 宣言と無視
この度は申し訳ございませんでした。本来なら238話が公開のところ、239話が間違って投稿してしまいました。
本当に申し訳ありませんでした。
彼の目は本気だった。
それだけ、この状況を打破したいと言うことなのだろう。それが伝わってくる。
「私に勝てると思っているの? 正体を知っているのよね」
彼は何も言わず、ただ杖をこちらに突き立てていた。そのうち、杖に魔力が注がれいつでも準備出来ていた。
「殺る気ならさっさと撃ってきなさい。私に届くと思うのならね」
「聖なる刃」
放たれた一撃は、予想を遥に超える一撃。様々な感情が籠り、それを放出したある意味最高峰の一撃だと言えるだろう。
そんな魔法を私の刃は、最も容易く斬り捨てる。
「良い一撃だったと思うけど、私には到底届かないわよ」
次の瞬間、彼の首筋に刃を当てる一歩手前だった。
「これ以上は意味がないと思うけど。私たちは、聞きたいことがあってここに来たわけだし」
「聞きたいこと……?」
彼は、困惑した表情をしながら体を後に下げた。周りに、仲間と思しきメンバーが彼を囲むようにして、こちらを睨んでくる。
「お前ら辞めろ。それで聞きたいことってなんだ?」
「翼の生えたオーガって知ってるかしら? そのオーガの歩いた跡を追って来たんだけど?」
その瞬間、王族らしい格好をした男が何処かに逃げ出した。
だがそんな闘争劇は、数秒たらずで終わる。ナズナに首根っこを捕まえられ、抵抗虚しく私の前に置かれる。
「そのお話だけはどうかご勘弁を。我々にはどうすることも出来ないのです」
頭を地面に擦り付け、必死なのが伝わってくる。それ以上に、コイツらは何を知っているのが露呈した。
「それで君たちは誰?」
「俺たちは革命戦士だ!」
革命戦士? 何を言っているのか正直微塵も分からなかった。
ただその言葉だけは、はっきりと信念のある声だった。
「革命戦士ってなんだよ? 詳しく教えてみろ」
フェクトはこう言う時に、突っ込んでくれるからありがたい。
彼らは突然目を輝かせ、まるで子供が両親に何かを語る時のようなものを感じる。
「革命戦士とは、国で問題が起こった時その原因となるものを、排除するために立ち上がる組織です」
「そうしたら今回は、国が悪いと思い反乱を起こしたってわけか?」
「その背後にいるダークウィッチーズを目的としたものです」
やはりか。そのため今回、こんな大それたことを起こしたのか。
ただこの状況を察するに、やめ時がお互い分からなくなったのが伝わってくる。
初めから分かっていたはずだ。それでも、この国を守るために、あるいは革命を起こすために互いの熱がヒートアップし続けたのだろう。
「お互いこれに関してはやりすぎだよ。第三者の介入がなければ、終わらなかっただろうね」
この時私の心はホッとしていた。
なぜなら、魔法界がこの件に関わった場合、この国はたちまち泥舟に乗り替わっていただろう。
魔法界が国のトップになれば、完全にこの国は、国という皮を被っているだけに過ぎないからだ。
魔法界に全ての権限を握られ、元の生活には中々戻れないだろう。
革命戦士やらが生まれたとしても、一瞬で弾圧されて終わりである。
この国は、その程度のやらかしをしたのだ。おそらく今回、運が良かっただけだろう。
それだけが、この国の命運を分けたと言っても過言ではない。
「それでダークウィッチーズについて聞きたいけど」
「奴らはもうこの国には居ません。理由は、我々による反乱があったから。かろうじて逃げ出したと思います」
「研究施設とかないわけニャー?」
彼らの顔を見るに、それは見つかってないと推察出来た。だが、あの王族が声を掛けてきた。
「研究施設は確かにありました。だが今はもう破壊され、原型すら留まっていないでしょう」
「とりあえず魔法界本部に連絡してください。ここ修復にはそれが最前ですから」
「分かりました。でも大丈夫でしょうか? 魔法界がこの国の舵を取るんじゃ……」
「それは大丈夫です。もう落ち着いた場合は、厳重注意と罰則だけですから」
王族の男は苦笑しつつ、その顔は青ざめていた。そうして、ようやくフレリアと連絡が繋がるのだった。
(どうしたの、何かあった?)
(ようやく出た! 中々出ないから心配してたのよ)
(それで要件は?)
(オーガはとある国から出発したことが分かった。国は、内乱状態にあったけど私たちが鎮火しておいたから)
フレリアは、少しの間黙ったままである。そうしてようやく口を開いたと思うと、たった一言言ったのだ。
(今すぐそこから離れて!)
私はわけも分からず、その場に突っ立ていると、正門付近に、気配が突如現れる。
(イデリアがそっちに向かったのよ)
(まさかこんなに早く再会することになるとは)
(え、何かしでかす気!? それだけはやめてよね)
そんな言葉には耳を貸さず、私は正門に走り出した。それに釣られるかのように、二人も私の後を追う。
「この気配、イデリアだろ! 何する気だ?」
「まだ考え中。ただ、このままだとこの国の舵は、魔法界に移ってしまう。それは阻止しないと」
この国に、終わる末路を辿ってほしくはないと思っている自分がいた。
だからこそ、行動に移してしまったのだと実感してしまう。
「イデリアと殺り合うことになるニャー。それでもわたしは、着いていくニャー」
「まぁそれは楽しそうだから良いけどよ。派手にやるなよ!」
それはやれと言うことだろうか? そんなことを考えながら私は、正門の見張り台へと高らかに飛んだのだった。
「管理者様! 見張り台に三人ほど人影と思しき者が現れました」
「いちいち報告しなくても良いわよ。見えてるから」
その声はとても暗いものだった。それにこの禍々しいほどの魔力、キレているのがすぐに分かってしまう程だ。
「魔法界! ここは既に終戦を迎えた、厳重注意、罰則以外は断じて認めないわ!」
私は大声でそう宣言をする。だがこれだけでは、足りないことぐらい子供だって分かる。
「剣聖として、ここは一歩たりとも引くきはない! ここで攻撃しようものなら、剣聖が敵になると思え!」
次の瞬間、魔法が飛んでくるのだった。




