226話 戦闘開始
翌朝、朝日に照らされながら目が覚めた。心地よく起きられたことで気分も良く、軽く体をストレッチする。
窓から外を見ると、学生や働く人々が足早に向かっているのが分かる。
そんなことを考えていたら、ドアを叩く音が聞こえてくる。
「そろそろ朝食が出来上がります。準備を整えたら、降りてきてください」
ガードはそう言うと、足早に廊下を歩いていく。そうして、階段の降る音が聞こえてきた。
そうして準備を終え、廊下に出ると一階では、話し声が聞こえてくる。
声的に、フェクト、ナズナである。
「おはよう三人とも〜」
あくびをしながらリビングに到着する。
「遅いぞ、ご飯食べたら魔法界本部やら色々行くところあるんだから」
「そうだよ! アリアが降りてくるまで待ってたんだから、早く食べよう」
ナズナは服の袖を軽くひっぱり、テーブルに向かう。
「今日も朝から豪勢だね」
朝から相当手の込んだ料理たちが、テーブルには並んでいた。
ガードの方を向くと、少しばかり自慢げな顔でこちらを見てくる。
「朝からありがとうね。それじゃあ食べよっか!」
朝食は平和に終了し、一息入れようとソファーに腰を下ろした瞬間だった。
門のチャイムが鳴る。
それもピンポーンピンポーンピンポーンと何度も鳴った。
「私が見てきます」
そう言い残し、洗い物を中断し、すぐさま駆け足で向かっていた。
そうして数分も立たないうちに、玄関で声がした。
「大至急伝えたいことがあるそうです」
そんな声が聞こえ、すぐさま玄関に向かう。そこに立っていたのは、ギルドの制服をきた受付嬢の一人である。
「朝早くに申し訳ありません。王都の近郊で、ウェザーの構成員が目撃情報がありまして」
「それっておかしくない? アイツが言うには自分で殺めたって」
「そのはずでした。ただ、構成員全員に真新しい深い傷が残っているようで」
私は考えるより先に体が動いていた。門を飛び越え、箒を取り出し魔法界本部に向かう。
屋敷から、何かを言っているような声が聞こえた気がしたが、気のせいと独自の解釈をした。
「警備の魔法使いさんたち、そこ退きなさい!」
イデリアがいる取り調べ室に足を踏み入れる。
「どういうこと? なんであなたのお仲間が生きてんの」
「少し落ち着いて、それに関してはコイツも想定外だったみたいだし」
イデリアは冷静に言う。それがどこか身震いをしてしまいそうである。
「とりあえず対処は私がするわ! 王都で被害を出されても困るし」
「俺が言えた立場ではないが、殺さないでくれ」
本当に言えたことではない。ただ、私自身も無用な殺生はしたくない。
私は少しにこやかな表情を作り、彼にこう言ったのだ。
「善処するわ」
彼は大粒の涙を流しながら一言「ありがとう」と言うのであった。
外に出ると、二人が待ち構えていた。
「話は無事に終わってなによりだよ」
「ほんとハラハラさせやがって」
そんなことを言う二人だが、顔はにこやかだった。そうして、私たちは門付近まで移動する。
街の様子は、少しばかりの不安そうな気がした。
「おーいこっちだ!」
門の前で立っているとギルマスが声を掛けてくる。昨日の一件を感じさせないほどの元気な声だ。
「朝から済まないな。敵側もおそらく俺たちの動きに勘づいている頃だ。そこを一気に叩くぞ」
とても自信満々で言うので、少しばかり頼もしいと感じる。
それに格好を見るに、自ら戦いに出るのだと分かる。
「ギルマス、その剣はいい剣だね」
「剣聖様に褒められちまった。ここは頑張らねぇとな」
一気にプレッシャーが跳ね上がる。それと同時に、嫌な気配を感じ取る。
「来るわよ!! みんな行きなさい!」
その掛け声と共に、野太い声の雄叫びがあげる。そうして、ウェザーとの戦いが幕を開ける。
「フェクトとナズナは、それぞれ援護に入って!」
そう言い残し、一瞬のうちに先頭に踊り出る。各属性の魔弾が私たちを襲う。
斬り伏せつつ、一気に第一陣の懐に迫る。
「ボロボロみたいね。アイツから頼まれてるんだ、手加減はしてあげるわ」
木剣を振り出し、上空に何人か吹き飛ぶ。一気に戦場とかす草原。
それに追随するかのように、跳ね上がる鼓動が心地よかった。
「剣聖! これ以上邪魔はさせない」
暑苦しそうな男が現れる。顔には、とても痛かったであろう傷が出来上がっていた。
「その傷、クロスにしてやろうか? 光魔法の使い手さん」
「クソがッ! お前につけてやるよ。似合うと思うぞ」
光魔法と木剣が激しくぶつかり合う。それに伴って、周りにも被害が拡大していく。
「それにしても珍しいわよね、自然とは関係がないその属性がウェザーにいるなんて」
「そんなことお前には、関係ねぇだろ! 俺の意思でこの場に立ってんだ」
放たれる魔法は、とても豪快な一撃ばかり。それをアイツは惚れ込んだのだろうか。そんなことを考えてしまう。
えぐれる地面を見てまたニヤけてしまう。
そればかりか興奮して、ナニカが溢れ出してきそうである。
「これが剣聖の本性ってか!? ライトランス」
光の槍。先ほどから出される魔法は大体中遠距離が多い。おそらくこれは私を警戒しているからであろう。
「私に勝ちたいんだったら、もっと攻めないとダメだよ」
「満面の笑みで言うな! お前な、さっきから俺の攻撃、全て無に返してるじゃねぇかよ!」
オラオラと叫んでいる割には、焦ってきているのをひた隠しにしようとしているのが丸わかりである。
もうすでに、打つ手はないのだろう。
「楽しい時間はすぐに終わるね。楽しかったよ」
そうして、懐に入り込み木剣を叩き込むのであった。
一方その頃、ギルマスは構成員を複数同時に相手にならが、小隊長みたいなやつと戦っていた。
「お前らは雑魚を倒せ! コイツは任せておけ!」
「あらあら、自分の実力はお分かりかしら? 仲間を庇って出血なさってるというのに」
「こんな傷で根を上げてたら、アイツらに笑われるわ」




