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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-6章 冬の旅路と15歳と学校

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224話 いざこざ


 王都の昼下がり。先ほど起こったことには気にもせず、賑わっていた。

 人々が笑う姿を見ていると、自然とこちらまで笑ってしまう。

 そんな日だった。

 だがある場所では違うらしい。ギルドの前を通った時だ。ギルドから男がドアを突き破り飛んできた。

 地面に勢いよく体をぶつけ、声にもならないような声で悲痛な声を漏らしている。

 その姿には見覚えがあった。いやそれどころか、知り合いである。


「ギルマス何してんの?」


 先ほど会った時とは別人のようであり、全身ボロボロだった。

 すぐに気を失ったため、イデリアが回復魔法を始める。フェクトの方を見ると、すぐに戦闘態勢に移行している。


「フェクトここは街中だから、暴れることは出来ない。ここは私に任せて!」


 私は少しばかり焦ったような声で、フェクトに指示を出す。そうでもしないと、フェクトはおそらく向かってしまう。

 そんな時だ。ギルドの中から一人の男が出てくる。


「あの特徴的な耳。エルフ族」

「珍しいよねお嬢さん、怖い思いをさせたなら謹んでお詫び申し上げよう」


 私は言い終わる頃には、彼の顔面を殴り飛ばし、ギルドには大きな穴が空き、テーブルを薙ぎ倒していた。

 私は歩きならが、必死に怒りを抑えようと努力する。


「テメェ誰に向かって言ってるのか分かってんの? 剣聖を怒らせたんだ、ただでは済まないわよ」


 彼自身、ピクリとも動こうとはしなかった。

 いや、すでに気絶していたのか、動けないのかどちらか分からなかった。

 胸ぐらを掴み、床に叩きつける。


「まさかこんな簡単に伸びてんじゃないわよね。早くその汚らしい声でも出しやがれ」


 周りから殺気を感じる。私は彼を放り捨てその場で止まる。

 相手側の位置は簡単に分かる。ただ、向こうから手を出してこないのだ、私がこれ以上武力行使をしなくて良いだろう


「またエルザを呼ぶことになったね。エルフ族、お前らのせいでまためんどくさい案件が増えたのよ。その責任から逃げるなよ」


 ドスの聞いた声がギルド内に響く。エルフ族からしてみれば、すぐに逃げ出したい感じだと思っていいだろう。

 そんなことを思っていると、イデリアの気配が近づいてくる。


「少しやりすぎだから気を付けて。エルフ族さん、魔法界まで来てもらおうか」


 ゆっくりとエルフ族たちが出てきた。おそらく、旅をするエルフ族なのだろう。

 それぞれ武器を持っている感じ、旅行とかではない。


「こうなるだったらあのおっさん、殺しておけばよかったな」


 捨て台詞を吐くかのように、そう言った男のエルフはすぐさま後悔した。

 なぜなら、剣聖と管理者を完全に怒らせたからである。

 魔法で貫かれ、その瞬間回復され、また攻撃されるのを何度も何度も繰り返されたのだ。


「もう、や……やめ、やめて……くれ」


 そんな言葉と悲痛な叫び声が、ギルド内に響くのであった。

 いつの間にか、ギルド内に結界が張っており結界の外には漏れなかった。


「二人ともやりすぎだ!」


 フェクトから渾身の一撃を頭にそれぞれ喰らって、エルフ族の男は精神崩壊で済んだ。

 フェクトはエルフ族の彼を見るなり、大きなため息をついて、こちらを睨んでいる。


「幸い見ていたのは、ここにいる連中だろ? それだったら問題ない」

「問題ないって何をする気?」


 明らかにフェクトの魔力が高まっているのを感じる。

 何をしでかそうとしているのか、私では全く見当が付かなかった。

 だが、横目でイデリアの顔を見ると、何を察しているようだ。


「許可しないわよ、フェクト」

「なんでテメェの許可がいるんだよ。俺の主人はアリアだ!」

「フェクト、何をしようとしているのか分かっているのよね?」

「都合の悪い記憶を消すだけだ、なんら問題ないだろ?」


 フェクトは魔神のような不適な笑顔を見せる。その顔は、肌がピリつくほどのプレッシャーを放っていた。


「記憶を消す魔法は、私の前だとしても許さないわよ」

「禁忌の一つっていうわけね、それだったら私も許可出来ないわよ」


 フェクトはとても嫌そうな顔で見つめてくる。


「フェクトそれは仕方ないことよ。まぁでも物理で忘れ去れるなら、問題ないわよね?」

「何言ってんのバカなの!? 私が言えた立場ではないけどさ」

「一発殴れば大体記憶吹き飛ぶよ。任せておいて」


 フェクトはとてもにこやかな笑顔で、軽くデコピンした。


「なんだったの今の茶番!?」


 イデリアの華麗なツッコミが入った。そんな会話をしながら、彼らを連行するのであった。


「ギルマスあなたにも来てもらうわよ。ここは第五にでも任せて、さっさと行くわよ」


 魔法界本部は、とてつもなく重たい空気が流れていた。それもそのはずである。

 ウェザーのトップ、王都ギルドマスター暴行事件が起きたのだから。


「ギルマス、何があったのよ。あなたは充分強いはずでしょ、負けるなんて思わないだけど?」

「俺が手を出してないことぐらい知ってるだろ。ただいちゃもん付けられただけだよ」


 ギルマスの言っていることは本当なのだろう。だからこそ、すぐに話に応じたのだろう。


「そんな大事にしないであげてくれ。アイツらも、少し調子に乗ってただけなんだ」

「そうは言ってももう連絡しちゃったし。それに私たちがあなたのために怒ったのトップ記事だよ」


 ギルマスはとてつもなく驚いた顔をして、何度も私の顔を見てくる。

 それだけ衝撃が強かったのだろう。

 まさかの自分が、ウェザーのトップの案件よりも大々的に記事になったのだ。

 そのような顔になっても仕方ないだろう。


「とりあえずそういうことだから。ギルドの方は安心しなさい、第五王子がしてくれてるから」


 その瞬間、勢いよく椅子から転げ落ちるのだった。

 そうしてそのまま意識を失い、フェクトに迷惑を掛けたのは言うまでもない。

 その頃ウェザーの方は、全てを話していたのであった。


……


「あなたが殺せなかったこの命、今度は我々があなたをお救いします」


 また王都の近郊で、何かが起ころうとしているのを、アリアはまだ知らない。



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