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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-6章 冬の旅路と15歳と学校

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210話 イデリアの圧


 ベッドで眠っていると、ドアの向こう側から音が微かに聞こえてくる。

 その音で、頭は少しばかり起きようとしているが体はそれに追いつかなかった。

 ただ早く、諦めてくれと思いながら時間が過ぎていくのを待った。

 ただひたすらに待った。それが何分だろうが何十分だろうが関係ないとこの時は、確実に思っていただろう。

 それが一時間が経った頃、それは続いていた。

 疲労感が残る体をなんとか起こし、ドアの方に近づいていく。

 髪をポリポリと掻きながら、怪訝な顔でドアの前に立った。


「あ! ようやく起きましたか、私エスです。今後の予定のために参りました。ここを開けてください」


 先ほどまで、一寸の狂いもなくドアに手を当て続けていた彼女の声は、とても元気の良い声であった。

 それゆえに、どれだけ腹が立ったかもう私にも分からなかった。

 ただ今だけは、寝かせてほしいと思ってしまったのだ。


「お引き取りください。これ以上邪魔するなら、私たちはここからすぐに退去します」


 少し強めで言ったのが功を奏したのだろう。少ししょんぼりとした声で、エスは去っていた。

 これでようやく寝られると思ったら、次の問題が発生した。

 それは、窓ガラスが村人たちによって割られたのである。石などは当たることはなかったが。これは明確な犯罪行為である。

 それにやっているのは、ここの女将を筆頭にした村人だと気配で分かる。


(イデリア、ちょっくら村人たちの人生を物理的に終わらせてくるわ)

(え、何よ突然!? ちょっと、何があったか知らないけど、少し待ってなさい。村人たちに危害加えないでよね)



 おそらくイデリアにテレパシーしたのは、私の中に残っていた彼らに対する慈悲なのであろう。

 ただそんな時だ、また彼女は私たちを守るかのように、間に立ち声をあげたのだ。


「少しばかり待ってください! これ以上何かしでかすとまずいです! 一旦皆さんは家に帰ってください、あなた方が不安なのはわかりますが、冒険者だって人間ですから」


 だけどコイツ、一時間近くひたすら無心でドアを叩き続けて居たんだよなって思うと、信用出来なかった。


「だけどおめぇーが剣聖様に話すって言ったんだろ! それが失敗したから、kこうして無理矢理出てきてもらおうってなったんじゃねぇか!」


 ほらねやっぱり。所詮は、村の自警団ってところよ。一瞬でも肩を持ちかけた私をぶん殴ってやりたいぐらいだわ。


「皆さん落ち着いて聞いてください」


 その声は、村中に響き渡っていた。結界の外を見ると、いつの間にか魔法界の構成員がここの周りを囲んでいた。


「私の名はイデリア。魔法界のトップを勤めております、何やら冒険者の方々に、大変無礼な働きをしたとか小耳に挟みました。その事実調査を実施致します」


 次の瞬間、結界は簡単に解除され、その上村人の数よりも多い人数が攻め入ったのである。

 村人は、子供を入れても三十いるかいない程度。それに対し、魔法界の構成員はぱっと見五十人程度だ。

 数でも負け、圧倒的すぎる力の前に勝ち目など無い。


「勝手に入ってこられては困る! 出ていってくれ」


 少しばかり震えた声で、村長は投げかけているがそれに対して誰も無反応である。

 そればかりか、足元に魔法が放たれる始末。村長の男は、それを受けて全速力で家の中に入っていた。

 それを見ていた連中も、一目散に逃げようとする。


「止まれ」


 その魔言の威力は、彼らを地面に叩きつけるまでの威力を見せていた。

 それを前に、やべー奴らはなすすべなかった。

 そんな所を見せられたら、先ほどまでの感情は綺麗さっぱり消え去っている。

 だがこんな状況を作り出した責任がある。私は二階から飛び降り、イデリアの前に立ったのである。


「イデリア、もう大丈夫だから。安心してくれていいよ」

「ダメよ、ここの村は度々問題を起こしていた。そのため、ここはなんらかの処罰対象だから」


 イデリアはおそらく私の場所をほぼ完璧に把握している。ある意味ストーカーと呼べる存在だ。

 決して褒めている訳では無い。キモいしやめてほしいと思っているが、それをイデリアに言ったところで辞める気は無いであろう。

 それにイデリアの中で、我慢の限界を超えているのが分かる。

 そうじゃなければ、一人で来るはずだ。


「お、お待ちください! どうにか改心致しますでの寛大なる慈悲をお願い致します」


 エスはただ一人、逃げなかった村人である。


「アリアの眠りを邪魔しておいて、よくそんなことが言えるな」

「ちょっと待て! イデリア、もしかして村人の行動を感知させていたの? それだったらシンプルにキモいよ」

「キモいって何よ!? 出来ちゃうんだから仕方ないでしょう」


 流石は生まれ持っての才能って、こういうことなのかと思ってしまう。

 ただそれは今、関係無いことである。自ら話を脱線させてしまった。


「話を脱線させてごめん、話を続けて」

「寛大なる慈悲って言うけど、あなたたちの村は相当言われてるわよ」

「それに関しては、情報は入ってきています。全て私が至らないばっかりに」


 舌打ちの音が、とてつもなく暗く聞こえる。それにこの空気感、私は逃げ出したくなる。


「あなた一人が良ければいいって訳では無いのよ。あなたがどれだけ努力しようが、意味が無い」

「変われば宜しいのでしょうか?」

「一瞬変わったところで意味が無い。どちらにせよ、刑罰は受けてもらうわ」


 それだけイデリアの中で、この村をそこまで信頼していないのだろう。

 だからこそ、ここまで酷いあたりをしているのだろう。


「分かりました、ご迷惑をお掛けします」

「イデリアを呼んだのは私だし、少しばかりクエストは手伝うよ」


 イデリアには少しばかり睨まれたが、こればっかりは仕方ない。

 どのみちクエストは受けようとはしていた。

 ただ印象の問題で、逃げようともしたがそれもここまで大事になれば、大人しくなるだろう。

 そうして私は、二人を起こしに宿に戻るのであった。


 

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