204話 解熱の実とも呼ばれている実
サルは手頃な石の上に座り、ゆっくり話そうと言わんばかりである。
イライラしていたら相手の思う壺だ。深呼吸をして心を落ち着かせる。
「お主は、何を求めてこんな場所に来た?」
「仲間を救うため、薬になりそうな物を探しに来た」
頭をポリポリと掻きつつ、話を聞いている様子だ。
「お前の仲間は人間なのだろ? ポーションとかいうやつを使えば良いだけじゃないのか?」
至極真っ当な質問である。普通ならそうと答えればいいが、その解答は私の答えではない。
「驚かないでね。魔神なんだよ、私の仲間って」
周りで聞いていたサルの魔物が、殺気を曝け出してきている。今にでも私に飛びかかってきそうな状況だ。
「テメェら落ち着け! お前らが殺気を出したところで、なんら意味はない」
納得出来ないのか、機嫌が悪いのがこちらに伝わってくる。
魔物からしてみれば、魔神なんて厄介である。ましては関わりたいなんて、思う魔物はまずいないだろう。
「うちの若い連中が済まない。それだったら、あなたがここに来るのも納得だ。ついてこい」
私は促されるまま、後をついて行く。その間も、周りからはずっとこちらを睨まれていた。
正直に言おう。私はこの状況に対しムカついていたし、剣だって取り出して暴れても良かった。
ただそんなことをやってしまえば、この状況は作れなかったと自覚している。
「あなたには迷惑ばかりかけているな。本当は、あなたならこんな所、すぐにでも抜けられたでしょう。それなのに、言葉で逃げろと促すなんて、変わったお方だ」
「ただめんどくさくなっただけだよ。君たちを殺しながら進むより、逃げるように促したほうが早いと思っただけだよ」
彼は「ありがとう」と言うように、こちらをチラッと見て頭を少し下げるのであった。
そうして開けた場所に出た。木々を見ると、見たことのない果実が実っていた。
「これって?」
「これは解熱の実とも呼ばれるガングの実です。昔の人々はそれをよく利用していました」
ガングの実―見た目はけして美味しそうとは言えない程の水色であり、刺々しい見た目をしている。
「でもこれって魔物や魔族に使えるの?」
「はいもちろんです。魔物などの発熱原因は主に、魔力の暴走です。それを抑える効果を持っているのです」
ただこれをどう使うか、皆目見当もつかない。それを察したかのように、彼は続けてこういったのだ。
「これを絞り、抽出された汁を飲みます。味は苦くてこの世ではないような感覚に陥りますが、効き目は最高ですから」
目が笑ってない。それに言い方を察するに何度も飲んだ経験があるのだろう。
それを聞いてもう一度視線を向けるが、寒気を感じてしまった。
「それでは失礼します。良い旅を」
そう言い残し、彼は森の中に消えていった。私はそれを見送り、すぐに果実を余分を含め十個程ボックスにしまう。
そうしてすぐさま、元いた場所に戻っていくのであった。
「うんあれって?」
いた場所が見えてくるなり、気配感知を発動させる。その理由は簡単である。異常に魔物が集まっているからである。
それにフェクトを守りながら、必死に抵抗しているのが見えた。
「あいつらって、さっきのサルの魔物?」
すぐに見当がつく。おそらくコイツらは報復行動に打って出たのだ。
それも、私と彼が話している間に。
「ナズナ! フェクトの側に居てあげて。ここは私が相手をする」
私はすぐさま行動に移した。上空から飛び降り、勢いよく着地する。
サルたちはビビり、少し後ろへ下がっていった。
ただ、そんなことで帰るのならこんなことをすることはないだろう。
それだけ、覚悟を決めて行動しているということが伺える。
「私の仲間に手を出すなんて良い度胸ね! そこだけは褒めてあげる」
魔物は、唸り声をあげ飛びかかってくる。それをすかさず、斬り払い次々に斬っていた。
ものの数分足らずで、ほとんどが消滅している。残った数匹は、途方にくれたような様子なのが伺えた。
「まだ殺るの? さっさと帰ってほしいんだけど」
そうしてようやく、私はフェクトの側に駆け寄れるのであった。
フェクトは、ぐったりした様子である。どんどん衰弱していっているのが分かる。
「フェクト、すぐに良くなるからね。なんたって、ガングの実をとってきたからね」
次の瞬間だった。あまりに突然のことで、私は気づけば、宙を舞っていたのだ。
「アリア!? フェクト何やってるの!」
ナズナは驚いた様子で私を呼び、すぐさまフェクトを怒鳴り出していた。
地面に勢いよく体を打ち付け悶える私。なんとも言い難い絵図がそこには広がっていた。
「アリア来ないで……それだけはダメだって」
先ほどまで衰弱していた体とは思えないほどである。それだけ、この果実がやばいということなのだろう。
ただこれを飲まない限り、良くならない。
「ナズナ全力で抑えつけてて、なんとしてでも飲ますから」
「ヘーイ。フェクト観念しなさいニャー」
ナズナがフェクトを押さえつけようと画策している間に、薬を準備する。
ベトベトな液体が、少しずつ落ちていく。その色も、外見同様の見た目の色をしており、とても飲みたいとは言えなかった。
「そろそろ準備出来るけど、抑えつけられた?」
横を振り向くと、ナズナの全力で殴られていた瞬間であった。吹っ飛ぶとかではなく、地面にバウンドするように叩きつけられていた。
地面にはクレーターが出来上がり、とても病人にしていい行動とは呼べなかった。
私がこの光景にドン引きしていると、こちらに気が付いたナズナが駆け寄ってくる。
「これで、フェクトに飲ませられるニャー」
「そ、そうだね」
これ絶対、私復讐されるやつだよと内心ビビりまくる。
「フェクトごめんね。少しだけ我慢してね」
ナズナに抑えつけられ、全てを悟っているかのようなフェクトに薬を飲ませるのであった。
翌日治ったフェクトに、ガングの実を一個絞った液体を、無理矢理飲まされるのであった。




