17話 食事と襲われ
お店に入ると、酔っ払っているマメシアと遭遇。
酔っ払ってはいるものの、食べ方はとても上品である。どこかの令嬢かよってツッコミを入れたくなるレベルだ。
「ここのお通し、美味しいですね」
マメシアは、目をキラキラさせ何度も頷いていた。
「大将! 剣聖少女様におすすめを出してあげて」
マメシアは、気分が良くなっているのか大声で注文を入れた。
そして大将も、気乗りしているようで自信満々な笑みを浮かべている。
「何頼んだのですか?」
「えーとね、ロック鳥の唐揚げ」
ザ・居酒屋メニューだ。鳥の唐揚げは、お店それぞれの特徴がありそれを楽しむのも醍醐味なのである。
しかもロック鳥である。
ロック鳥のお肉は、柔らかく食べやすいのが特徴なのだ。それで脂身もよく、私も好きな食事だ。
飲み物を頼みつつ、鶏の唐揚げを待つ。その間、マメシアは何か喋っていたが全く聞き取れなかった。
「はい、お待ちよ!」
大将自ら、鶏の唐揚げを持ってきてくれた。もう見た目の時点で、美味しいのが分かりきっていた。
唾を飲み込む。
一口、口に放り込む。口に入れた時点で美味しい、噛んだ瞬間肉汁と油が口に広がり美味しすぎる。
そして、酒で流し込む。
「美味しい〜」
もうその一言に尽きる。一つで満足できる料理だった。
「剣聖様って、美味しそうに食べるんだね」
「え!? そう?」
「周りを見てみなよ」
マメシアに、周りを見るように言われ見てみると、みんなが頼んでいる。
「さすが剣聖様だね、影響力ある〜」
「一回お水飲みなさいな、他になんかおすすめある?」
お水を差し出しつつ、メニュー表も一緒に差し出した。
「えーとね、薬草サラダとオーガ肉のサイコロステーキ」
「すみません、薬草サラダとオーガ肉のサイコロステーキお願いします」
そうして、朝の話をしようとした直後、マメシアは真っ青の顔になっている。
「早くトイレ行け!」
マメシアにそう言い放ち、それどころではなくなった。それから数分後、とてもスッキリとした表情していたのはいうまでもない。
ご飯を食べ終え、お店を後にした。
「この後って、宿戻るだけ? お風呂入りに行かない?」
「入りに行こうか」
酔いが回って少し敬語を出なくなっているが、特に何も思わなかったのでスルーした。
それから、夜風を浴びつつ歩いていく。居酒屋特有の熱気を冷ましつつ、二人とも何もしゃべらなかった。
ただ、何も喋る話題もなかったので、こちらとしてもありがたかった。
「ここだよ」
連れられてきた場所は、昔からある銭湯だった。
受付を済ませ、脱衣所に着いた。
服を脱いでいると、マメシアは驚いた表情で、私の体を隅々見てくる。
「え、何? 何かついてる?」
「いや、体ナイスプロポーションすぎるでしょ! 胸の形も綺麗だし、何やったらそんなことになるのよ」
正直言って、修行しかしていない。来る日も来る日も修行の日々に明け暮れていたため、あいにく美容に関する知識はあまりない。
「修行」
「嘘でしょう、私美容にはお金かけたのになぁ」
明らかに、がっかりしている。お酒の酔いが完全に冷めた様子だ。私も何か声を掛けるべきなのかと迷ったが、何を言ったらいいかわからず黙っていた。
風呂場では、マメシアの声が聞こえていたのか、とても見られているような気がする。
すごくいづらい。
「マメシアのせいでめっちゃ私、見られてるんだけど」
「そりゃ見ますよ、そんないい体してたら、私抱いて」
「アホ」
やっぱり訂正しよう。間違いなくまだ酔っているな。軽く平手で頭を叩きつつ、私は体を洗っていった。
「まだ酔いが残ってるみたいだし、早めに出るわよ」
体を洗って浴槽の中にはいる。やはり、大きいお風呂は気持ちがいい。
最高である。
一瞬で、疲れが取れていく。
「あ〜気持ちいい。マメシアどう?」
「え、気持ちいいですー、ゴボゴボッ!」
すぐに引き上げ、他のお客に一礼しつつ、脱衣所に戻ってきた。
「あのね、風呂場で意識を落とすじゃないわよ」
「すみませんでした、これからは気をつけます」
マメシアを注意しつつ、私はマメシアと別れた。
そして、ある違和感に文句を言うのだ。
「いつまで隠れているつもりなんですか、私が誰か分かってますよね」
今日一日つけてきた魔法使いに向けて、言い放つ。
マメシアが居たら、危険に晒すところだったからここまで引っ張ってよかった。
「なんだ気がついておられたのですか、それだったら話は早い。シャドウランス!」
あれは、闇魔法のシャドウランス。槍の形状をしており手投げ槍を魔法で表現したものだ。
「効くかよ」
木剣で、斬りつつ姿を現すのを待った。
どいつもこいつも、同じローブを着て現れる。
「あなたには負けませってぎゃぁぁっ!!」
話してる間に斬りかかり、マメシアには悪いが、魔法界支部に届けてあげた。
だが、夜勤組が対応を行い、宿に帰ったのは日を跨いだ後になった。
ベッドの上で、倒れ込むように寝て、起きたらすっかり太陽は、お外を明るく照らしていた。
「あー眠い」
そう呟く。
眠たい目を擦って、朝ごはんを買いに外に出る。外では、活気がいい朝市が色々な場所で行われていた。
「あ、マメシア! 昨日は、あの後ちゃんと家には帰れた?」
「それより聞きましたわよ、剣聖少女様が襲われたって、大丈夫なのですか?」
「それはもちろん」
その後、朝ごはんを頬ばりつつ、魔法界支部に向かうのであった。
着くと、朝からてんてこ舞いな様子である。
マメシアと私は、そんな光景を通り過ぎ、マメシアの自室に向かうのであった。
そこで、今回起きた出来事をまとめた資料を見つつ、対策会議を行うことになり、私も当事者として、参加が決まるのである。
正直めんどくさいのは山々だが、これも巻き込まれた私が悪いと、腹を括り会議室に向かうのであった。




