201話 勘違いから始まる旅プラン
秋風もだんだんと冬の風に変わる頃、今日も変わらず旅を続けていました。
森林地域を抜け、平原地帯を颯爽と走っていた。
「寒くなってきたね」
結界魔法が無ければ、今頃寒さで震え始めていたことでしょう。
「そうだな、でも問題が残ってるよな」
問題? それは一体なんのことでしょう。フェクトは深刻な顔でこちらを見てくる。
そんな私の顔は、きょとんとしており少々噛み合っていませんでした。
そんな私を見てフェクトは察したのでしょう。
呆れた様子で、口を開くのだった。
「忘れたのか? 今アリアとイデリアは接近禁止が言われてるだろ」
「…… あ! すっかり忘れてた、この場合ってどうなるんだろ?」
最近色々なことがあって、すっかり頭から抜け落ちていた。自分の頭を軽くペちと叩く。
これは、忘れてしまっていたことに関してのバツです。
「それに関しては、少し話し合ってみるわ」
そんな時です。私の背で眠っていたナズナが目を覚ます。気配を感じるに、少々機嫌が悪そうに思えた。
そう思った私は、ナズナに声をかけようとしたその時、ナズナの一言が、私たちの胸に突き刺さったのです。
「わたし、王都飽きたー。冬の旅してみたい」
ダイナールは、春夏秋冬の四季であるがただ問題がある。夏と冬の以上の強さである。
夏は灼熱のように熱く、冬は極寒の寒さである。そのため数少ない旅人ですら、冬はどこかの国で籠るのが一般的である。
「ナズナ無茶言うな。全部俺に負担掛かるよ」
「魔族を越える魔神様が何を言ってんの〜」
私は、この状況を止められなかった自分を責めてしまった。こんな状態になってしまえば、もう未来が手に取るように分かる。
「そんな事言うんだな! 後悔するなよ」
「ちょっと待って! 流石にダメだよ、新聞会社の格好のネタになっちゃうって」
そんなことを言っても、二人に一蹴されてしまった。完全に、判断を間違った。
だがそんな時思い出した。
「やっぱり戻らないとダメだよ、我が家にあの子がいるでしょう?」
「何思い出したように言ってんの? 俺はよくテレパシーで話してるよ」
「わたしもだよー。アリアは全然、話しかけてこないって言ってた」
自ら墓穴を掘ってしまい、私のライフは全て削り切られた。
私は軽く咳払いをし、気を取り直して話しかける。
「でもやっぱり帰った方がいいんじゃないかな?」
「今のナズナに何を言っても無駄だ。アリアは、早く確認と話してやれ」
私は大人しく従うほかなかった。それにともなって、箒を地上に下ろした。
二人が食事の準備に取り掛かっている間、少し離れた場所にある丘の上に来ていた。
丘から見た景色は、とても雄大である。人による介入がない平原地帯。
それは遠くまで広がっており、こんな景色を見るために私は旅をしているのではと思ってしまった。
私は、自分自身の頬をパチンと叩く。見惚れる前にやらなきゃいけないことがある。
(聞こえる? アリアだけど)
少し緊張した声になってしまう。
(どうしたの、今はちょっと忙しいんだけど?)
(あのさ、私たちって接近禁止出てるじゃん、だからさ今年の冬は帰らないかなって思ってるんだけど?)
それを言った瞬間から、数分静寂の時が流れる。そうして、大きなため息が聞こえたのち思いっきり怒鳴られたのであった。
(あれって冬までだったけ? 完全に忘れてた)
そうしてテレパシーは終わった。先ほどの怒鳴られた後遺症だろうか、頭がキーンと痛む。
私はそのことを伝えるために来た道を戻っていく。だがそれがいけなかった。辺りはいっぺんに霧に覆われ、完全に場所を分からなくなっていた。
私は、無闇に動くのを辞めた。気配感知をフルに発動させる。だが、魔力で作られた霧のため、気配感知は完全に使えなくなっていた。
足に魔力を集中させ、飛び上がってみるが、天にも届きそうな霧に阻まれ、思うように索敵が出来ない。
だんだんと焦る気持ち。それが感覚を鈍らせていくのを感じる。
深呼吸をして少し落ち着かせる。
「おそらく魔物の仕業。幻想系、それだったら結構簡単に終わってくれるんだけどな」
でもそんな魔物が出てくる気配すら感じない。それに少しおかしな点に気がつき始める。
それは、霧の魔力量である。魔物から発せられる霧や魔法の霧。
それは、魔力量が多いとされている。使う理由は、隠れるためなどに使われるから。それなのに、今回の霧の魔力は通常に比べても少ない分類だ。
もう一度深呼吸をする。そうして、気配感知を発動させたのだった。
そしたら、先ほどは感じることが出来なかった気配を感じられる。
「おーい、二人とも聞いてほしい話があるんだけど?」
二人は少し驚いた様子で見てくる。不思議に思ったが、すぐに理解出来た。
「なんだ二人とも、この霧の正体が分からなかったのか?」
「そりゃそうだろ、突然だったから驚いたんだよ」
「でも上手いこと、はめられた感はあるよね」
ナズナの言葉で、三人とも笑ってしまった。ひとしきり笑ったのち、私は本題を切り出した。
「私たち忘れてたけど、冬には戻れるわよ。さっき怒鳴られたんだから」
二人とも口をぽかーんと開けた状態で時が止まっている。すぐさま二人とも我に返り、二人とも「マジかよ……」と言いたそうな顔をしていた。
「それだったら旅は無しだな!」
フェクトはキッパリとした態度で言うものだから、ナズナは少々驚いてフェクトの方を向いていた。
その時見た顔は忘れないだろう。
「さっきまで怒っていたのどこに行ったの? 戻ってきてよ」
「ナズナ、怒りなんて大抵のことは数秒あれば落ち着くもんだよ」
「そんなことをキメ顔で言われても、面白くないニャー」
フェクトは、そう言われても意見を変えることはなかった。
私自身、何か忘れていることがあるけど、今はいいや。
「ご飯食べようよ! せっかくあったかいんだから、早く食べようよ!」




