196話 偽の救援
秋風に移り変わるこの季節。もう半袖では寒くなってきた今日この頃、今日も箒で旅を続けていました。
山道を抜け、草原を突き進んでいく。辺りには何もなくただポツンと私たちがいるだけでした。
何も会話もなく、ただ風の音と風で草木が靡く音だけが響いている。
ただそんな時でも、お腹は空きます。そんな音が私たちの口を開かせたのであった。
「そろそろ休憩するか?」
体温が上昇するのを感じる。静寂の時を破って、私のお腹から音がなったのです。
顔を赤くしながら、私は首を縦に降った。
そんな時です。遠くから救難を知らせる発煙筒が見えたのです。
「ねぇフェクトご飯は無理みたい」
「わかってる、ナズナもアリアにしっかり捕まっておくんだぞ」
そうして、見えるから見えないかの瀬戸際からわたしたちは箒を全速力で飛ばした。
そうして見えてくるのは、国であった。
「救難出してませんでしたか?」
私は、焦った様子で門番に声を掛けた。門番は、顔をキラキラさせた状態である。
「冒険者が来てくれたぞ! 今すぐギルドマスターに伝えてきてくれ」
大きな声でいきなりそんなことを言ったのだ。私たちにはさっぱりな状態である。
ただ言われるがまま、私たちはギルドの方に歩いていく。
その間、住民たちは歓喜の舞を踊っていたりと一種のお祭り騒ぎだ。
それがとても私の恐怖心を蝕んでいくのだった。
(おいこれって、アウトだよな)
(えぇ、どう考えても冒険者が三人来ただけでの盛り上がり方じゃない)
(ねぇ、ここ早く抜け出した方がいいよ)
三人とも意見は一致した。そうと決まればやることは一つ。
「情報を発見次第、報告よろしく!」
風が舞ったかのごとく、三人とも別々の屋根に飛び移ったのだ。
その瞬間である。街の住民たちが一斉に態度を豹変させたのだった。
「アイツらを捕まえろ! さっさと捕まえて奴隷にでも落としちまえ!」
完全に操られているのが分かる。私たちはただ、救難信号が出ているから来ただけなのに。
自分の心が弄ばれたような感覚で、怒りに満ちた顔で彼らを睨みつけた。
(フェクト、全力で結界を壊してきて。それで一気に変わるから)
(了解! アリアにナズナ、くれぐれも暴れすぎるなよ)
(ナズナは、全力で誘導しておいて。その間に、私が元凶行くから)
(了解ニャー)
そうして私たちそれぞれの戦いが始まったのだ。
私は、気配感知をフル稼働させる。ここに着いてからずっと思っていることがあった。
それは、この国地下には人々がいるということだ。
緊急時以外で、地下に隠れることはまずない。それに、地下に隠れた場合ある問題も発生するのだ。
それは、衝撃による地盤沈下である。そのことから、ほとんどの場合使われることはなくなっているのだ。
それなのにこの国では、ある意味緊急性を要しているとは思うが、それでも普通使われることはない。
「おそらくだけど、何かしらの原因で幽閉されていると思った方が良さそうね」
そんなことを考えていると、魔法があちこちから飛び始めていた。
「あの特徴的な服って、魔法界!?」
嘘でしょ。思わず口をこぼしてしまいたくなるようなことが起きてしまっている。
あの魔法界が敵の手に堕ちているということだ。
「うざったらしいわね」
全身に魔力を巡らせ、一気に駆け抜けていく。そうしなければ時間がかかり過ぎてしまう。
上空に目を向ければ、フェクトも魔法界の連中と交戦しているのが分かる。
ナズナの方も同じだ。
「ダークウィッチーズの犯行だろうね」
おそらく長年の潜入があってこそ出来ることだろう。そんなことを考えているうちに、領主邸の門にたどり着いた。
「やっぱり結界あるわよね。それにしてもウザイわよ!」
操られた構成員を、結界にそれぞれ打ち付けヒビを入れる。
木剣を突き立て、結界を破壊する。領主邸、それに貴族階級の家が並んでいた。
「誰だよ!、俺様の城に殴り込みに来たのわよ!」
「なんだ思ったより、可愛らしい顔をした乗っ取り犯だこと」
そんな言葉を聞いて、腹が立ったのかインフェルノが飛んでくる。容易く斬り捨てた。
「流石は剣聖だね。俺様の常識を破壊してくれる」
いかにも、暴君王とでも言ってほしそうな格好しているが顔のせいで全く似合っていない犯人。
「仲間は何処にいる? あれをだけの催眠結界だ一人って訳ねぇだろ?」
「一人だよ、だって俺様はなんでも完璧に出来る人間だからな、
「あ、ぼっちなのか。暴君は仲間なんて要らないからか。ごめんごめん」
「サイクロン」
放たれたサイクロンは、私の知っている威力よりも遥かに弱かった。
「ねぇ舐めてるの?」
即座に斬られる魔法。それは自信を失うには、もってこいであった。
「おいこっちに来んな! 聖なる刃」
ドス黒い魔法がこっちに向かってくる。それも簡単にダメにした。
「こんなことをやったんだ、覚悟は出来てるだろうね」
「や、やめてくれ、解除するから、命だけは取らないでくれー」
コイツは何を言っているのだろうか。自分が何をしたのか分かっていないのだろうか。
私より年上なコイツは、もうダメだ。
「テメェが行く場所なんて一つしかねぇよ。魔法界管理者の元だよ」
私は思いっきり、剣を彼の頭に振りかざすのであった。
その瞬間、結界も無事に割れた。
(お疲れ! すぐに元に戻るだろうから対処行くわよ)
(すぐに降りるわ)
そうして国は元に戻り、街の人々には感謝された。そうして気になっていた場所に足を運ぶのであった。
地下に通じる古びた扉、それが地下に入る方法である。それを開け、久しぶりに日の光が地下を照らす。
「もう終わった、出てきても大丈夫だ!」
私は大きな声を地下の連中に対し、言ったのだ。恐る恐る来ている気配を感じる。
そうして、階段を登ってくる音が刻一刻と、近づいてくるのだった。




