188話 ウェザーの幹部とパーティを組もう
秋の陽気を感じながら、今日も旅を続けていた。
「ねぇアリア、魔神の胃袋ってまだ?」
ナズナは、うずうずした感じで聞いてくる。今か今かと、ずっと待ち望んでいるのが伝わってくる。
ただこれは、今に始まったことではない。村を出てから、ここ最近何回も聞いて来るのだ。
その度に「まだだよ」と言うのが最近の流れになっている。
そうして私はいつもの流れをそのまま実行に移すのであった。
そうやって言うと、後ろを振り返った時だけ、ナズナは少し顔を膨らませ、落ち込んだ表情を見せる。
「ナズナ、楽しみなのは分かるけど少しは我慢しろよな」
フェクトはナズナに向かって、そのようなことを言うが、ナズナは聞く耳を持たなかった。
「もう少しスピードを上げてもいいけど、上げた分休むわよ」
「それでもいいから、早く行こうよ!」
私たちはため息をつきつつ、スピードを上げた。それが良かったのか、悪かったのか私には分からない。
この話を誰に話しても、答えは出なかった。
そうして、箒のスピードを上げて数日ようやくそのダンジョンにたどり着いたのだ。
森の奥深くのダンジョン。周りには、魔物気配は感じられなかった。
「もう休むわよ、二日はしんどいままかも」
魔力の消費がこの数日いつもより格段に多く、相当疲労感が溜まっていた。
それは、フェクトもナズナも理解出来ていたため、ナズナは目の前で来たダンジョンをグッと我慢しながら過ごしていた。
そうして三日後、ある出会いがあったのだ。
「あなたウェザーの幹部?」
朝、ご飯を食べていてた時、ダンジョンの前にある女性が立ち止まったのです。
その時、頭の中で何かを感じ取ったのだ。普通の冒険者よりは魔力量が多く。洗練された魔法使いといった感じであった。
それは、ウェザーのインスとかと一緒のような気がして声をかけてしまったのだ。
明らかに汗が吹き出している。それに呼吸も浅く、挙動不審である。
そうして彼女が振り返った瞬間、彼女の発した言葉で理解するであった。
「剣聖少女!? なんでこんなところに」
彼女は。すぐに臨戦態勢へと移行するが、少し諦めた表情だ。
杖を取り出しているが、それはすぐに下に下がった。
「あ、あの話良いですか?」
突然のことで、今までのウェザーの幹部とは違うと感じ取った。
彼女はほっとした表情で話し始めた。
「私の名前はリーランスです! お察しの通り、ウェザーで幹部をしている者です」
「アリア、そんなやつのことを聞くことはない」
フェクトは、私を自分の後に下げ完全に敵意剥き出しで、リーランスを見ていた。
リーランスも、これは当たり前のことだと言わんばかりの顔だが、それでもリーランスは私たちを見つめていた。
そうして、地面に座り込み頭を地面に打ちつけたのだ。
「今までの私たちの行動、そう思われても仕方ないと思います。ただ、私は今ウェザーに疑問を抱いています。どうかお話だけでも聞いてはいただけないでしょうか?」
リーランスは、額から血を流しながらそんなことを言ったのだ。
私は、二人の顔を後ろから見る。困惑の顔、疑っている顔である。そんな顔を見て私は決心したのだった。
「話を聞くよ、私の出来ることならなんでもするよ」
リーランスは、顔を上げ私を見てくる。フェクトからは、睨まれているがそれもいいだろう。
私が面白いと思って選んだのだ、誰にも文句は言わせるつもりはない。
「私は、自首しようと思っています」
リーランスは、はっきりと言ったのだ。その声に、嘘なんて感じられなかった。
リーランスがどういう経緯で、そう思ったのか私には聞く権利があると思った。
「どうしてそんな考えに至ったの?」
「今あの方は、私に知っていたあの方とは別人そのものだからです」
私はその時思い出した。
ウェザーの親玉は、取り憑かれているレベルでおかしくなっているとアイツが言っていたことを。
「でもリーランス、あなたはあの球体を持っているわよね」
彼女は、ボックスの中から取り出した。禍々しいオーラを感じさせる球体。
以前見た時よりも、だいぶ強まっているのを感じる。
憶測にはなるが、それは力が集まってきているという証拠だろう。
それを持っていながら、リーランスは特におかしい点はないように思える。
「もうすでに、風の魔法は入れてあります。これを持って私は自首しようと思います」
おそらくこの子をこのまま自首させた所で、意味はないだろう。
ウェザー、ダークウィッチーズはここぞとばかりに狙ってくるからだ。
「剣聖様、私を殺していただけませんか? あなたの考えはなんとなく想像が出来ますから」
その言葉に私はすぐに返事は出来なかった。
「ねぇ、そんなことよりダンジョン攻略行こうよ」
ナズナが我慢の限界を迎えたのか、駄々をコネ始めてしまっていた。
フェクトも宥めようとはしてくれているが、あまり効果はない。
「リーランス、ここであったのも何かの縁だ。一緒にダンジョン探索しない?」
「何言ってんだアリア!」
「そうですよ剣聖様。どうやったら、そんな考えに行きつくのですか?」
二人はすぐに反対の意見を言ってくる。ナズナだけは違った。
「いいじゃん、早く行こうよ!」
フェクトは呆れた様子だが、すぐにこれは意見がどうあっても反対にはならないだろうと、確信したような表情へ変わる。
リーランスは、困惑した表情で私を見つめてくる。
「せっかくのクリアされていないダンジョンなんだ、いいじゃん」
そうして、おかしなパーティが結成されるのであった。
「ここでは何が起きるかあまり分かっていないから充分気をつけて行くわよ」
「アリア、俺はコイツを監視しながら歩くからな」
「そのほうが、私としても気が楽です」
ナズナは、そんなことにも聞く耳持たずダンジョンの中に入っていくのであった。
私たちはそれを追いかける形で、ダンジョンに足を踏み入れたのであった。




