15話 斬り裂く魔法使い
季節はすっかり夏に差し掛かる頃、アリアは今日も旅を続けていました。
「あ、国だ!」
森を箒で抜けると、そこには小さな国が見えてきた。国の名前はヒゲキと云う。
門番の審査をいつも通りに受けると街の中は、閑散としていた。
「人が誰もいない」
通常なら、商人やら旅芸人なんかが街の人々を楽しませていてもおかしくないはずだ。
すると突然、転移で魔法使いがやってきたのです。
「ようこそおいでくださいました、私魔法界管理連合ヒゲキ支部所属、マメシアと申します」
「魔法界が私になんのよう? もしかしてこの状況と関連してる?」
マメシアと名乗ったこの女性、かなり強い。旅の中で出会った中でおそらく一番だろう。
だが、私には到底及ばないのはわかりきっている。
「品定めですか、当たり前ですよね。この国に関するある事件について、一緒に解決に導いてくださいませんでしょうか?」
いつものように断ろうとした瞬間、それを阻止するかのように斬撃が飛んできたのだ。
「どう云うつもりか説明あるわよね」
剣で余裕でガードできたもののこの攻撃、魔法だ。この私を狙ってきたのだ。
「それは後でいいわ、それじゃ青髪の魔法使いさん」
周りにあった建物の一つに、飛び乗り屋根と屋根をジャンプして、進んでいく。
「狙った場所にいない。それどころか、残留魔力すら残ってない」
「ご協力お願いできませんか、いまこの国では、連続殺人が行われています」
「いいぜ」
そうして、国について早々事件に首を突っ込むのであった。魔法界支部で、話し合いということになり、道中案内されつつ言われるがまま、一軒の家に入るのであった。
「連続殺人っていうのは?」
「早速本題ですか、この国では何者かによって街の三箇所で殺人が起きています」
「それがさっきの斬撃と関係があるってことか」
「はい。ただ、該当者がおらず完全に誰かわからないのです」
犯人の目星すらないってことか。資料を見る限り、殺害現場は、全部バラバラで犯行日時も全てバラバラ。
殺されているのは、全て街のギャング。
全員、首を一撃で。
「恨みを持った犯行って線は?」
「調べましたが、所属の攻撃魔法たちも、それが起きる前から滞在している冒険者旅人も調べましたが、全く」
あの斬撃、確かに魔法だったのは間違いない。魔力も感じた上、わざわざサイレント魔法を使ってくるあたり手だれだ。
「マメシアさん、まだ誰とも交戦してないってことであってるよね」
「おそらくですけど」
マメシアは、あまり自信がなそうにそう言ったのだ。そうして、私たちの共同捜査が始まったのであった。
そんなことが決まった直後のことである。応接室にけたたましい足音とともに、残念な知らせが入ってきたのだ。
「マメシア様、ご報告いたします! 四人目の犠牲が確認されました」
「ノート、それは本当だね。このままでは、大変なことが起きる。今すぐ、軍の兵士も入れて捜索をする」
マメシアは、慌てて出て行った。
完全に私は、忘れ去られたのだ。それは、それで動きやすいのでいいのだが、どうもいやな予感がする。
この殺人は、おそらく私が来たから行われたものの可能性もある。
「とりあえず私も街を見てくるか」
その時だった、外の方で爆撃音が鳴り響いたのだ。
「え、何事!?」
すぐに階段で一階のロビーにまでいく。
外では、マメシアは見えない敵と戦っていたのだ。
いや正確には、仲間を守るため攻撃を必死に防いでいたのだ。
「ゴーレム始動」
破片から、ゴーレムを生成し防御として機能させている。その間に、攻撃の居場所を探ろうとしていたが、それは無駄だ。
「危ない!!」
アリアは、咄嗟にロビーから飛び出していた。
剣で、斬撃を斬りつつマメシアを守ったのだ。
「それ多分無理だよ。相手は、完全に気配を消してる」
「ここは一旦引いた方がいい。この攻撃は、魔法使いで間違いない」
ここまで、魔力を消せて感知すらさせない。これで魔法使いでなければ、アサシンとかそういったレベルの類だ。
「ちょっと離してください、私一人で戻れますから」
マメシアを抱き抱え、一度ロビーに戻ってきた。
「待っててください」
次の瞬間、ゴーレムを簡単に斬り裂くとともに結界と衝突する魔法が飛んできたのだ。
舌打ちをしつつ、マメシアの部下たちを部屋の中に押し戻す。
「いつまでそうやってる気かはしらねぇが、観念して私と戦ってよ」
一気に蓋をしていた魔力が、体外に噴き出す。
その魔力は、まるで魔法使いが扱う魔力と、なんら遜色ない魔力である。
「何あの魔力」
ようやく、姿が見えないが可愛らしく絶望寸前の声が聞こえた。
「そこか」
杖と剣がぶつかった。
「え、なんで!?」
「魔法使いが、私の魔力にビビってんじゃねぇよ」
全身を覆い隠すような、黒いローブを来た女を地面に叩きつけた。
ただ。これで決着はつかないことだけは、わかる。
(街は後で一緒に直そう)
彼女の魔弾が瞬時に飛んでくる。勢いだけがさすがであり、あとはからきっしである。
「良かったのは、斬撃だけかよ」
「――クソがっ! ハイ・スラッシュ」
斬撃も、先ほどに比べたら自身のないへなちょこな魔法に成り下がっている。
「まだ終わるわけにはいかないんだー!! グラウンド・プロトリューション」
「遅いよそんな魔法」
飛び出てくることさえ、わかっていれば避けるのも容易い魔法だ。
「インフェルノ」
薙ぎ払いつつ、ゆっくりと進んでいく。進むたび後に下がっていくが、私の足は前に詰めていく方が早いようだ。
その後、何度も何度もインフェルノが放つが、全く理解できていない様子だ。
もうすでに頭は、真っ白であろう。
あとさき考えず、魔法を放つもんだから私が目の前に立った瞬間、魔力切れを起こすことを理解できなかったのであろう。
アリアは、泣きながら尻餅をついている女に、肩に手を乗せたのだ。
「もういいかな」
彼女は、恐怖のあまり
泡を吹いて倒れるのであった。




