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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-5章 剣聖は旅を気ままにやっていきたい

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183話 二人でおでかけ


 翌日の朝。私の朝は最近早い。単に眠れていないという訳ではない。

 あの一ヶ月の影響か、生活リズムが良くなったと言ってもいいだろう。

 カーテンから零れ落ちる光。それに照らされながら、ベッドから起き上がる。

 軽く全身のストレッチを済ませ、顔を洗いに洗面所の方へ行く。

 鏡を見ると、寝ぼけ眼な私と対面する。水を流し、顔に押し当て、目を覚めたのだった。


「どうせ二人とも起きているだろうし、早めに準備済ませるか」


 いつも通り準備をしていく。そんな時だ、頭に明るく元気な声が、脳内に重く突き刺さるのだった。


(アリアおはよう! アリアがこんな早くから目覚めてるの珍しいじゃん、どこ行く?)


 どこ行く……私はこの時思い出したのだ。今日は何をするのか、昨日から決まっていたことを。


(とりあえず朝ごはん食べに行こうよ)


 私は忘れてなんかいないという嘘がバレないように、返事をした。

 その声は、嘘がバレないようにいつも通りの声質だ。


(アリア、普通に忘れてた? アリアから言い出したことなのに)


 ハイバレた。こういう所の勘はやたら鋭いイデリアに、私は全て正直に告白するのであった。

 準備をしながら怒られ、これも全て自分が悪いと甘んじて受け入れた。

 そうして二人とは、宿で別れ待ち合わせ場所である魔法界支部に足早に向かっていく。


「フェクトたちにも怒られたんだよな」


 そりゃ怒るのも分かるけど、流石に朝から三人に怒られるのは気が滅入る。

 それでも私は、早く向かうのであった。


「イデリアごめん待った?」

「いいえ、今来たとこ」


 そうして、二人だけで行うお出かけが始まるのであった。

 朝ごはんを食べにきた。

 朝からやっている大衆食堂で、このお店は、国の中でも昔からある老舗であり、人気の高いお店である。

 メニューはシンプルなものばかり。なんなら悩む必要すらない。

 日替わりの朝定食、昼定食、晩定食のメニューを頼めば間違いないと言われているほどである。

 目の前に出される食事。


「朝から、ドラゴン肉のサンドイッチが食べられるなんて贅沢だよね」


 息が荒々しくなる。人前なんか気にせず、私は無我夢中で食べ始めるのであった。

 あまりのおいしさに私は、天にも登るような気分である。


「イデリア美味しいね!」

「えぇそうね、肉汁がパンと野菜に染み込んでそれが堪らなく美味しいわね」

「こんなの朝からエール飲みたくなるじゃん!」


 イデリアもそれには了承し、二人で朝からエールを飲んだ。

 キンキンに冷えたエール。ドラゴン肉のサンドイッチ。交互に食べていく。

 最高なスパイラルが完成したと、この時思ったのであった。

 そんな食事を楽しみ、私たちはその店を後にした。そうして、街を歩き始めた。

 

「この国も素敵な場所よね」

「そうだね! 料理は美味しいし、魔物は珍しいやつもいたし楽しい国だよね」

「ねぇアリア、私と手合わせしてくれないかな」


 イデリアの突然の申し出。あまりにも唐突で、あのイデリアがそんなことを言うはずないと思っていた私の脳内は、思考回路が急ブレーキした。

 

「え、でもそれ、今やるの?」

「今日はお礼で、私と遊んでくれるんでしょ? だったらお願い聞いてよ、アリア」

「イデリアがそう言うんだったら」


 そうして急遽、私たちはここから少し離れた位置にある荒野地帯にやって来た。

 イデリアの魔力は、明らかに昨日よりも遥に洗練された魔力である。

 それが溢れ出ている。

 周囲にいた魔物たちが、逃げ出すほどである。イデリアは、完全に整えてきている。

 私もそれに答えなくてはならない。


「じゃあ始めようか。アリア、私の全力見せてあげる! 真剣で来なさい」

「剣聖の力、舐めるなよ」


 始まった瞬間、荒野が高密度の魔弾に耐えきれず、爆発する。

 それを連発するか。私じゃなかったら、ここで終わっててもおかしくないな。


「涼しい顔で避けるな! インフェルノ」


 インフェルノを軽く斬り裂き、足を止めずに、そのまま進み続ける。

 防御壁出すよな、だがそんな一枚じゃ私の剣は止まらない。


「はぁぁぁっ!」


 防御壁は案の定、粉々に消えた。


聖なる刃(ライトニング)


 激しくぶつかり合う。そこにはイデリアの姿はなかった。というか、分身で私を止められると思っているようだ。


火焔龍の息吹(バースト・ブレス)

「私は剣聖だよ、たかが最上位の一角の魔法で敗れると思うな!」


 空中から落下しながら魔法攻撃。その判断は悪くない。

 私は、聖なる刃(ライトニング)を上空へと打ち上げたのだ。

 いくら最上位の魔法と言っても、それを化物が打ち上げたんだ。そう簡単には、私には届かない。


「任せておいても良いんだけど、それでは面白くないわよね」

「ま、まさか!?」


 私の一撃は、剣聖として最高峰の頂きに立つ一撃。

 飛び上がり、聖なる刃(ライトニング)をより押し出すように、いや違う。

 全ての攻撃を無に返すかのような、一撃を放ったのだった。


手を叩く(オフセット)


 膨大な魔力の塊たちは、イデリアの力によって消滅した。それ以外にも、私の斬撃は避けられたようだ。


「随分と焦った様子だったけど、大丈夫?」

「アリア。あなたね、最高じゃない」


 その顔は、まるで鏡を見ているようだった。だってそんな顔、私ぐらいしかしないと思っていた。

 イデリアが消える。いや、身体強化か。

 次の瞬間、私は宙を待っていた。顔面にものすごい衝撃が迸ったのだ。


「出たよ、魔法使いが近接戦闘か。まるでどこかのエルフ族じゃん」


 私もそれに答えた方が良さそうだ。体をひねり、軽く足が地面に着いた瞬間、身体強化で速度をあげる。

 剣を仕舞い、イデリアの不適な笑みがこっちにくるのを待って、攻撃を開始した。


「なんだイデリア、あの時の仕返しか? 私に思いっきり殴られたもんな」

「何言ってんの、あの後私相当仕返したわよね」


 いつしか普通に笑みがこぼれ落ちていた。

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