178話 アリアvsインス
「付き合わせちゃってごめんね、クミ」
「全然大丈夫です! グリフォンも討伐ありがとうございました」
そんな会話を続けながら約四時間が経過、全速力で飛ばしてなんとか門の受付が閉まる前に、着くことが出来た。
ナズナ以外、全員魔力の消耗が激しかった。そのため、元気が有り余っているナズナと対比に、私たちは今すぐにでも横になりたいぐらいだ。
「アリア、どこから探す?」
ナズナは無邪気に聞いてくる。私はそれに適当に返事をしてしまう。
朝から、戦闘、移動、戦闘、移動を繰り返している。流石に、私自身頭の回転が遅くなってきていた。
「とりあえず今日は、ご飯食べて風呂入って寝る! 以上」
ナズナは、今まで見せたことがあるか分からないぐらいの顔で、こちらを見てくる。
その顔は、どう表現していいか分からず、私はスルーした。
そうして、宿をサクッと見つけて夜の街に繰り出す。
本当は、今すぐにでもベッドに横になりたかった。ただ今それをやってしまうと、おそらく私は起きられなくなってしまうだろう。
それが二人なら「まぁいいか」ともなるが、今回はそういうわけには行かない。
グッと我慢して、私は酒場を探すのだった。
「剣聖様、あそこなんていかがですか?」
クミの指の先を見る。指差した先には、大きい酒場があり、外にも漏れているぐらい賑わっていた。
そうして酒場に入る。
「とりあえずエール頼んだけど、それで良かったよね」
「はい、ここのメニュー見てください、美味しそうじゃないですか?」
メニュー表には、ロック鳥の丸焼きというなんとも頭の悪いメニューがあった。
だが、写真を見る限りとてつもなく大きい。
「これ、もしかしてあの大きいステージで食べるんじゃない?」
この酒場には、中央に大きなステージがある。なんのためにあるのかは知らないが、珍しい作りになっている。
「せっかくだからいいんじゃない? わたし食べたいー」
「俺も食べたいぜ」
そうして、剣聖は出てきたロック鳥を四人で軽く平らげるのであった。
それは、その日の酒場で一番の盛り上がりを見せた。そのことは翌日の新聞に見出しで取り上げられたのだった。
(何アリア目立ってるのよ! 流石にわきまえなさいよ)
(それはごめんって、でもまぁ抑止力にはなるとは思うけど)
イデリアのため息がこちらに流れ込んでくる。それを聞くだけで、こちらの気分も滅入ってしまう。
(それよりあのエルフ誰? なんか楽しげだったけど)
おそらくこちらが本題だろう。私に新しい仲間が出来たのではないかと、ソワソワしているのが声で分かる。
それに、目立った所でもう慣れているイデリアにとって、あの黒歴史よりは全て格下だろう。
(襲ってきて、相談事を解決してちょっとの間一緒に旅することになったんだ)
(相談事って何?)
食い気味で聞いてくるイデリアには、流石にぶるっと震えたがグリフォンのことを詳しく説明するのであった。
そのついでに、クミの腕についても情報を渡す。イデリアなら、どうにかしてくれると思ったからである。
イデリアは、そのことについて親身になって聞いてくれた。
(とりあえず分かったわ、私も動けるようになったらそこそっちに行くわ)
そうして、イデリアとのテレパシーは終わった。そうして、身支度を整えている時のことである。
閉めていたはずの窓から、中に入ってくる気配がした。
「インスいい度胸だね。私を襲いにでも来たの?」
おそらく、三人には気付かれている。一気に警戒度が増しているのをビシビシと気配で感じ取れた。
「手短に済ましてくれた方が、お互いの為だと思うけど?」
「そうだな、俺は剣聖アリアと一騎打ちがしたい」
そんな所だと思った。彼はわざわざ騒ぎを起こし、一度フェクトを死の淵へ追いあった人物だ。
それも全て私と戦うためにやった事だ。それだけ私に固執している。
そんな彼を私は、嫌いにはなれない。
「いいよ、いつやる? あの球体はもうどうせ本部だろ」
「なんだ、知ってたのか。いつでもいい、場所はこの国を出たすぐの平原地帯でやろう」
そうして私たちは、転移した。
「門番さんには悪いことしちゃったかな」
「剣聖特権を使わしてしまってすまなかった」
そういうところは、律儀にも謝るんだっと思う私。だが、そんなことを長く思える時間はなかった。
そうして、私たちの一騎打ちが始まったのだった。
「アイスマウンテン!」
開幕、速攻でこれか。私を安易に突っ込ませないための策か。
「氷山衝撃」
安易に突っ込んでたらそうなるわけね。だが、範囲が相当広い。
それに速度も相当早く、攻撃も鋭い。
「そんな中遠距離の攻撃した所で、私には効かないよ!」
「そうだな、だけどどこ向いて喋ってんだ? 氷の手」
冷たい力が背中から全身に広がる。
「させないよ」
顔面を思いっきり殴られた。地面に叩きつけられ、体の自由が無くなるのを感じる。
それでいい気になるな! 体を無理矢理動かし木剣を振りかぶった。
インスの体は、砕け散ったのだ。氷の破片として。
「影分身か、それに氷魔法はなんでもってところか」
私は手を叩かなかった。今の彼と全力で戦いたいと思ったからだ。
彼の魔法は、明らかに強くなっている。彼なりに努力したのだろう。
だけど、その程度の努力や戦略では私を一瞬欺けても意味がない。
「完全に火を付けたか、これはタダで済むことは無くなったな」
「何かを感じ取ったのかい? 姿を見せないのはいいけど、それで勝てると思ってる?」
彼から返事はない。何か手立てでも考えているのだろうか。どんな手を使ってこようが意味はない。
「「スモーク」」
同時に複数の場所からの声、あまり動かない方がいいだろう。
気配感知も作動させているが、スモークの魔力によってほぼ場所は分からないと思った方がいい。
「こっからどうやって攻撃してくるのか実物だね」
私は感情が昂ると同時に、笑みを浮かべるのだった。
イデリアの黒歴史。
アリアが一年目の冬に王都に来た際、お風呂やでアリアの胸を思いっきりしばいたこと。
それが王都で広まり、なんとか王都で情報をストップさせ、その新聞記事をほぼ回収し燃やした。
その新聞記事は、高値で取引されている模様。




