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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-5章 剣聖は旅を気ままにやっていきたい

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177話 グリフォンと剣聖


 森の奥深くへとやってきた。森の中は、とても静かでグリフォンがいるとは思えない状況だった。


「グリフォンに未だ動きなし」


 そう言ってみたものの、おそらく私たちはとっくに気づかれていると思っていいだろう。

 それでも動く気配はない。この状況で考えられるのんは、主に二つ。

 

 一つ目は、怪我がひどく動けない状況。

 二つ目は、私たちを待ち構えている状況である。


 おそらくこの状況で正解の選択肢は、後者であろう。グリフォンは、強い存在である。

 そんな存在が、怪我で動けないなんて考えづらい。

 私は、三人を抜き去りその答えを知るべく三人を置いて行った。


「見えた、堂々と待ち構えてる」


 実際に見て分かる。彼は怪我していても関係ない。本来の強さを保っている。

 気配が弱かったのは、おそらくここに冒険者を呼び寄せるため。

 ほとんどの人が感じたことのない気配。そんな気配が森にあるならば、冒険者は我先にと行くであろう。

 それが分かっていたからこそ、こうして目の前にいる。


「お主強いな」


 私の足は止まった。辺りをキョロキョロと見渡すが、私たち以外には誰もいない。

 声を出したのは、目の前にいるグリフォン。そう確信するのに時間は掛からなかった。


「人語喋れるのか、頭のいい魔物みたいなものだしな」

「お主と戦うなら、この姿では少々不便だな」


 突然目の前が光に包まれる。そうして目を開けると、予想出来てはいたが、なんとも言えない表情で彼を見つめていた。


「お主どうかねこの姿? 逞しい体だろ」


 目の前には、グリフォンが人型となった姿が目の前にあった。

 見た感じ、二十代男性、上半身裸の逞しい肉体。そして背中には、立派な鷹の羽が二本揃っている。

 斬ったら高く売れそうである。


「今邪な考えをしていなかったか! 羽はすぐに消滅するぞ」


 なんだーがっかりだ。そんな思いは、露骨に顔に出した。


「やっぱり羽を見てたのか、そんなことよりこの肉体を見ろ!」

「どうでもいいから、そろそろ殺ろうよ」


 その言葉を言い放った瞬間、魔法が放たれたのだ。先ほどまで立っていた場所に、雷が落ちてくる。

 運よく避けられたがアイツ、なんの躊躇もなく放ってきやがった。

 それが開戦の合図となったのだ。


「ウィンドランチャー」


 ウィンドランチャー―高出力の風魔法を高出力の発射によって、発動する魔法。

 その威力は、サイクロンの威力を吹き飛ばすだけの力を持っている。


「それぐらいの魔法、私には効かない!」


 振りかざした一撃は、ウィンドランチャーを消し去った。これぐらいだったら、私は大丈夫だ。


「やっぱ規格外ってこういうことを言うだな、剣一本で斬り開くというのか。己の道を」

「何言ってんのさ、ビビってるの? 面白くならないでしょ、早く攻撃してきなよ」


 顔つきが変わった。それでこそ、私が戦う相手に相応しい。

 一気に魔力の高まりを感じる。

 

 来る!


 次の瞬間、魔弾が放たれる。それは花火のように、一定数伸びた後、一気に弾け飛んだ。

 そんなことにさえ、私は気づかなかった。一段階目を避けただけで、二段階目の攻撃に体に熱い熱を押し当てられたのだ。


「っっグゥッ……これぐらい行ける」


 体のあちこちが熱い。痛い、涙が出てきそうだ。それでも私は、刃を彼に押し当てなきゃ行けない。


「それぐらいでは怯まないというわけか、どうりで強いはずだ」


 地面に彼の魔力を感じる。次の魔法は草魔法だろう。


「気づいて飛んだか、だがなそれぐらい想定済みだ」


 私は剣を落とした。そのまま手を叩いた。(オフセット)

 一瞬何が起こったのか分からないといった表情をしている。

 私は地面から剣を拾い上げ、一気に駆け出す。


「私は剣聖だ、これぐらいで調子に乗るなー!!」


 剣は、自慢の肉体に突き刺さった。耐えきれず血を吐き出す彼。


「はあぁぁぁっ!!」


 そのまま斬り上げる。悲痛な叫び声と共に、宙に舞う彼。私はそのまま、飛び上がり彼の心臓に剣を突き立てたのであった。


「ッチ……心臓を移動させたか」

「それが分かった所でどうにもならんぞ! 衝撃(インパクト)


 彼の手は私の体に触れていた。次の瞬間、体は宙を舞い、青い空が木々の間から見えた。

 木々を破壊しながら、吹き飛ばされる私。止まる頃には、木々がこちらに倒れ込もうとしていた。


「魔武式・一鉄突き」


 倒れ込もうとした木々は、フェクトの一撃によって跡形も残らず消滅した。

 朧げに見えるフェクトは、肩で息をしている。相当無理をして飛んできたのが分かる。

 そうして私の方に振り返る。手を差し伸べながら声を掛けてきたのだ。


「大丈夫か? あんまり無茶すんじゃねぇぞ」

「ありがとう、それより彼は?」


 フェクトは、不思議そうな顔で私を見る。私は瞬時に理解した。

 私だけが心の中だけで呼んでいる名前を、言っても分かるはずはない。


「えーと、グリフォンだよ」


 慌てて言い直す。


「グリフォンは居ないけど、彼ってあそこで倒れている奴か?」


 フェクトの指さす方に目を向ける。そこには、彼が倒れてたままだ。

 私の剣が、地面に無造作に倒れている。そんな光景を見て、嫌な予感が頭に過った。

 全力で走った、そうして彼の元に辿り着くと、そこには彼の亡骸が灰になって風に吹かれなくなろうとしていた。


「無理にあんなことやるからだよ」


 私の体に衝撃を与えた直後、手に持っていた剣は、彼の体を抉り斬っていた。

 それが致命傷になったのだろう。


「もっと戦いたかったよ」


 そうして、グリフォンとの戦いが終わった。


「二人とも大丈夫だった?」

「今終わったとこ。二人は遅かったね」

「あのね、魔物が襲ってきたから返り討ちにしてたー」


 全員が一息つき座っていると、一本のテレパシーが飛んできた。


(アリア今どこいらにいる?)


 その声は、イデリアだった。慌てた様子もないし、どうしたのだろうと不思議に思ってしまう。


(今大きい森林地帯、グリフォンとさっきまで戦ってた)

(えグリフォン!? 何それ、それよりインスの目撃情報があったの)


 私たちは、その情報の真意を確かめるため近くの国に向かうのであった。

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