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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-5章 剣聖は旅を気ままにやっていきたい

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169話 ナズナの成長


 ミニシアの言葉に誰も何も言えなかった。誰一人動かず、全員が、ジロジロと互いの顔を見てしまう状況が続いてしまう。

 そんな状況に嫌気がさしてしまったのだろう。ミニシアは、再度言ったのだった。

 椅子の倒れる音が部屋に響く。


「そんなこと出来るわけないだろ! 君は被害者側だ!」


 その音の正体は、第五王子だ。椅子から勢いよく立ち、ミニシアに話しかけていた。だが、この状況である。ミニシア自身も自分の疑いが晴れるまでは一歩も引かない。

 ミニシアは、そんな女性なのだ。その予想は簡単に当たることとなる。ミニシアは、第五王子の話に一切耳を貸そうとはしなかった。

 ただ私を見つめて、訴えかけてくるようだ。


「ミニシアが望んでいることだ、捕縛する」

「何を言っているんだアリア! 君何を口走っているのか分かっているのか」


 第五王子は、返答次第ではこちらに向かってきそうな勢いである。

 だが、だからと言ってこのままでいるわけにもいかない。


「あぁ分かってる、だからこそだよ」


 案の定、円卓の机を飛び越えこちらへ一直線に向かってくる。

 魔力の上昇を感じる。怒りと云う感情に身を任せているのが分かる。


雪鳥の一撃(スノーバード)

 

 氷魔法の一種。その名の通り、雪で作られた鳥である。その威力は、民家の家を一撃で全壊させるレベルである。

 だが幾ら強い魔法であろうと、相殺してしまえば怖くないのだ。


 手を叩いたのだ。(オフセット)


 魔法で作られた鳥は無惨にも、押しつぶされるような形で私に届く前に消えて無くなった。

 魔法では無意味だと分かったのだろう、私相手に殴りかかってきたのだ。

 殴られそうになる瞬間、どこからか指のなる音が聞こえた。

 先ほどまで殴り掛かろうとした第五王子は、吹き飛ばされ壁に全身をぶつけていた。


「なんであなたが居るわけエルザ?」


 私の真横には、エルザが立っていた。皆驚いた表情をエルザに向けていた。


「殴られそうになってたじゃん、だから助けただけだって〜。そんな顔しないでよアリアちゃん」

「なんか用があるから来たんでしょ?」


 私は、驚きもしなかったので淡々と進めていく。エルザもそれに同感なのか、すぐに話始めた。


「あの子を捕縛するかってことでしょう? それはしなくて大丈夫だよー」


 どうしてそれを知っているかは聞かないでおくが、おそらく考えていることを読む魔法でも使ったのだろう。


「その魔法使いたちは関係無かったってこと?」

「いやそれは違うんだよな、魔神王の瘴気に当てられて屍同然だったよー」


 それがどういう意味か分かるっていう顔でこちらを見つめてくる。

 エルザは机を飛び越え、中心までゆっくりと歩いていく。


「今回は魔神王が起こしたことだから、まだ狙われるよそこの君」


 ミニシアの方を見て、そう言ったのだ。それはどこか楽しそうにいうエルザには呆れてしまう。

 そうして話し合いは、終了した。私たちはこれ以上居ても仕方ないと感じたため、戻ることにしたのだ。

 先ほどの言動に対してフェクトは文句を言ってきたが、私はそれを聞き流した。

 ナズナはどこか考え事をしているようだ。ナズナには似合っていない、深刻そうな顔である。

 その理由を聞こうとも考えたが、自分から言い出さないのならこちらから聞かなくて良いだろう。

 だが、今にも覚悟を決めそうである。


「アリア! わたしと戦ってくれニャー」

「良いよ、それで悩みが解決するなら」


 そうして、国を出て少し離れた場所に来た。そうして、私とナズナの勝負が始まったのだ。

 ナズナの戦い方は、完全に近接戦闘向けである。そのためすぐに距離を詰めてきた。

 スピードを生かした戦闘を得意とし、それに合わせた格闘術は圧巻の強さを誇る。


「ファーリー武術の強さ、その身で思い知るがいいニャー」


 持っていた剣がない、いや違う簡単に剣を吹き飛ばれた。思わず口から零れ落ちる言葉。


「マジか……」


 剣がない以上私は、武術に切り替えるほかない。だが、ナズナの攻撃は、それを嘲笑うかのように詰めた攻撃をしてきたのだ。

 私の懐に潜り込み、その一撃が急所にクリティカルに当たっていく。

 私は思わず、後に飛んだ。剣をとり息を整える。


「これではアイツに勝てない」


 ナズナはそんなことを呟いていた。私は痛みのせいか、動き出せない。

 それでも一歩踏み出すが、それを待ち望んでいたかのように、鳩尾に強く拳が撃ち込まれた。

 溢れ出す血、そのまま繰り出される足技に私は対処出来ず地面に転がったのだ。

 地面に体を強くぶつけ、立つことも精一杯である。


「魔神王のことを考えているの?」

「あの時何も出来なかった、もっと強くならなければ、アリアの隣に立ってられない」


 そんなことない。

 

 そんな言葉が、頭に過ぎる。それを言ったて今のナズナにはなんの効果もない。

 それに今のナズナには、そんな言葉など求められてはいない。


「わたしは自信を持ってアリアと対等に生きて行きたいの、だからあんなやつに負けたくない」

 

 なんだろうこの感覚。ナズナに何か起こりそうである。それを私は受け止める!

 両腕に、獣人族のマークが甲に浮かび上がる。

 次の瞬間、ナズナは成長を遂げたのだ。


「っぶねー、ナズナ! 力に飲み込まれるな!」


 起き上がれずにいた体を、蹴り上げようとしていた。先ほどまで、あんなにも離れていたのに。

 それを瞬時に転がって避けた自分を褒めたい限りだ。だがそんな時間がないことぐらい自分が一番分かっている。

 今大事なのは、ナズナと語り合い受け止めることである。

 すぐに立ち上がり、後に下がる。それをすかさず追ってくるナズナ。

 ナズナは、拳を構えいつでも攻撃可能といったところである。

 剣を構え、迎え撃ったのだ。

 力は互角。競り合って、私はそのまま突き出した。ナズナの反射神経は、時に私を遥に超える。

 突き出した剣を避け、するりと懐に入ってくる。突然大きな音に驚き、思考が停止したのであった。 

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