13話 違法と不信感
アリアは、少し違和感を感じるが違法であることは分かっているうえで、ミーシャをダンジョンに連れていくことを決意。
正直、この状況で放置は流石にまずい。おそらくこのままだと、また無茶に挑みかねないと考えたからだ。
「とりあえず、私の指示に従ってもらいますから」
「ありがとうございます!!」
二人揃って、頭を深々と下げた。
「それで場所はどこ?」
「こちらです」
案内されるがまま辿り着くと、確かにダンジョンである。洞窟型のダンジョン。
そして周りは、近いうちにあったであろう土砂崩れの跡。ダンジョンが、自身を守るために結界でも張ったのであろう。
それによって顕になったことがうかがえた。
マップで見ると、確かに誰も攻略されていないのがわかる。攻略されていた場合、右下に王冠マークが付いているのだ。
それが確認できない。
「とりあえず今から入るけど、絶対に勝手な動きしないでね」
三人は、首を大きく縦に何度も振った。
そしてダンジョンに入っていくのであった。
「どこまでクリアできたの?」
「一階層の途中です……そこまでいってなくてすみません」
正直頭を抱えたくなるレベルだ。どうして挑もうと思ったのか意味がわからない。
そして五人失ってる時点で、報告するべき。ただ、それを言おうと思ったが、寸止めでやめた。
最初から、上位者のゴブリンが出てきたからだ。考え事をしていて、感知していたのを気づかなかった。
それも集団である。
見た目は、大人ぐらいの大きさで、筋肉質の全身緑色だ。
そして一番の特徴は、黒いニ本のツノが生えている。
「ホーンゴブリンか、まぁ私には関係ないけどね」
サクッと始末しつつ、魔石を回収。
「二人とも、感知は常に使いなさい」
「はい!!」
銀の冒険者とは思えないほど、何もできてない。それどころらか、ダンジョンに入ってからどこかこわばった表情をしている。
それを横目に見つつ、先に進んでいく。それからは、少しずつ声を出すようになったが、二人も弱い。
私に比べたら、弱く見えるのは当然だがそれにしても、あまりにも弱すぎる。
「動きが硬いけど大丈夫?」
「――だ、大丈夫ですよ」
「大丈夫です!」
ランドは、一瞬言葉が詰まったかのような回答だったが、それを掻き消すかのようにルーミが答えてきた。
「それなら、いいけど」
ここまで疑惑の念が晴れない以上、流石に信用は一切できない。
そうして歩いていくうちに、大量の血痕がついた開けた場所に辿り着く。血は、すでに乾いており魔物の徘徊後がある。
おそらくここが、魔物に襲われた形跡の場所であろう。ミーシャは、ルーミに隠れるかのように足元で顔を隠している。
「ここだね」
「はいそうです、ミーシャが怖がっているので先に進みませんか?」
ルーミが提案してくるが、それはできない相談である。
「見た感じ、これは鋭利なもので殺害された感じだね」
二人が少し、肩をビクッとあげた。
何か隠してるのは、間違いないであろう。それでも、今は追求するのをやめた。
今何を言っても、答えは返ってこない。
「とりあえず先に進む前に、血の匂いで寄ってきている魔物たちを討伐するよ!」
「了解!」
血に飢えたオーガたちである。オーガなどの食用になる魔物は、ダンジョンでは魔石に即座に変換される。
そのため、食用の場合はダンジョン外で倒すしかないのだ。
オーガを斬り伏せつつ、この場所を後にした。
「そういえば、仲間たちの死体って回収できたの?」
「回収してます」
「それなら、ちゃんと供養できるね」
そうして、辺りを探索しつつ進んでいく。開けられた宝箱をいくつかを見つつ、ボス部屋に辿り着く。
「ここは、私がやるから」
「わかりました。俺たちは、ミーシャを守ってますね」
そっちの方が邪魔にならないので気が楽だ。そして扉を開ける。
そこには、ファイターゴリラが鎮座している。
見た目は、筋肉質の赤毛のゴリラ。大きさは、先ほどのホーンゴブリンと同じぐらいだ。
そして攻撃方法は、もちろん拳である。
私を見た瞬間、速攻攻撃。
「遅いよ、そんな攻撃」
だが、遅い。八歳の時に見た師匠の攻撃より遥かに遅い。余裕で避けるものだから、ゴリラはムキになっているのが丸わかりである。
「ムキになった所で、攻撃が当たると思ってる? 単調になってるわよ」
剣を振り下ろし、一撃で終わった。
「はい終わり」
そして魔法陣が現れ、二階層に突入する。
「マップ」
魔法で作り出した、マップを展開する。地図を確認する。
「見た感じ、入り組んだ様子ではないね」
「ですね、でもさっきに比べて魔物の気配が」
ミールの方は、ちゃんと感知を使いこなしている。警戒も怠っていない。
それに比べて、ランドはダメだ。まだ強張っている。それどころか、感知を全く使っていない。まだ、ミーシャの方が気配を探ろうとしている。
「ねぇダンジョンを舐めてるの? ランド」
「え、どうしてですか?」
この状況で、自分がまだ何も出来ていないことに気がついてすらない。
「ランド、あって数時間でいうのもアレだけど、あんた冒険者向いてないよ」
その言葉に、ランドはすごく動揺していた。それを感じ取ってるのは、ルーミも同じようだ。
「ランド、剣聖様が何をやれって言ったか覚えてる? 全く出来てないよ」
ルーミの言葉で、ようやく思い出したかのように感知を使い出す羽目だ。
逆に、なんで今まで生きていられたか心配になる。
「ここのダンジョンの攻略ができたら、あなたたちは処罰を受けることになる、それを機に辞めるのを勧めるわ」
「剣聖少女様待ってくれ! まだ俺だって傷が癒えてないんだ、それなのになんでそこまで言われなきゃならないんだ!」
心の傷が癒えていないのは、もちろん分かっている。それでも、ミールは成し遂げたいことがあるからちゃんと指示されたことはしてる。
「ルーミは、出来てるけど」
ランドは黙りはてた。
アリアは、呆れてものが言えなくなるのであった。




