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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-4章 14歳になった私の旅は、魔神王の気配をのせて

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162話 冒険心をくすぐる魔物


 暑い夏の日が続いてる。恵とも言えるような雨はここ数週間降った記憶は私には持ち合わせていなかった。

 箒は低空飛行で、森の中を進んでいく。

 日陰を通っているものの、暑さはまるで変わらず行き場のない怒りが沸々湧いているような感覚に陥っていた。


「フェクト、冷たい風を強めてよ!」


 私は、少し強い言葉で言ってしまう。何とか抑えようとするが反発心とでも言ったらいいのだろうか? 全く抑えられていない。


「アリア暑いのは分かるが、少しは我慢をしろ! 流石に魔力の温存も考えておかないとだな」

「そ、そうだよ、アリア。わ、わたし、だって、我慢してるんだから、言わないでよ」


 もうすでに限界を迎え、途切れ途切れで喋るナズナ。


「一回休もう、ナズナが限界だよ」


 私たちは、一度木陰で箒から降りたのだ。すぐに結界を張り、ナズナを休ませる。

 私は近くの偵察がてら一人飛び出して行ったのであった。


「鬱憤ばらしになるような魔物は居ないかな」


 木々を飛び越え、辺りを確認しながら進む。

 気配感知に何も引っかからないということは、そういうことなのだろうがまだ決まった訳ではない。

 気配感知は万能な魔法ではない。誤作動も起こすし、予想外の襲撃には弱い魔法である。

 それでも私は、信じなければならないのだ。

 それが、私とこの世を繋ぐ命綱の一つだと言ってもいいからだ。

 そんなことを考えつつ、次の木に飛び移ろうとした直後だ。

 木陰から、勢いよく飛び出してきたナニカとぶつかったのだ。

 幸い、当たりは浅くすぐに体勢を立て直せる。


「何者!? 私と会ったからには生きては帰さないわよ!」


 剣を取り出し、着地と同時に構えを取る。

 その瞬間、気配感知に大量の気配が感知される。次の瞬間には、気配感知はパンクした。


「まさか降りた瞬間に、上に戻る羽目になるなんて」


 反応は、全て地中からだ。何が居るのかまだわからないが、それなりに見当は立てられる。


「モグラ系、いやそれだったら影なんて関係ないよな」


 考えが頭でぐるぐると考察していると、痺れを切らしたのか、黒い物体が飛び出してくる。

 その手には、小刀が装備しており一撃に全てを掛けた勢いである。


「シャドウアサシンか」


 シャドウアサシン―黒い妖精といった所だと言われている魔物。

 常に影に潜み、一撃に全てを掛けて突撃してくる特徴を持つ。

 それにより、殺し屋連中と同じぐらい嫌われており、実際に、家柄のいいお嬢さんが殺されたなんて報道されるレベルだ。

 実際に対峙したのは初めてだが、首や心臓に目掛けて飛んでくる奴を殺せない訳がない。

 いや、実際には殺さなくても決まらなければ勝手に消滅していく。だが、そんな面白い状況、それを避けて終わらすなんてもってのほかだ。

 なぜなら私は剣聖であり、冒険者だからだ。


「さぁ来いよ、私を狙え!」


 真正面、死角からの同時攻撃か。気配感知がなくてもそれぐらい余裕で分かる。

 剣を薙ぎ払い消滅させていく。それに加えて、地面に向けて剣叩きつけた。

 その衝撃は、地面を破壊するぐらい造作もなかった。慌てた様子で飛び出してくる。

 ニヤリと笑いながら、剣を再び薙ぎ払う。


「おいおいそんなものかよ、私に傷を付けてくれるんじゃなかったの?」


 テンションの上昇を感じる、夏の暑さだろうか、自分でも何を言っているのか分からなくなるぐらい、声を出していた。

 それから何分経った頃だろうか、私が正気に戻ったのは。

地面は、至る所衝撃に耐えられずへこんだ跡がある。

 それに加えて、数本木々は斬られその生涯に幕を閉じた形跡まで見られるのだ。


「ちとやり過ぎた、すぐに治すからね」


 なんで声を掛けているかも分からないが、私は魔法で辺りを元通りにした。

 気配感知は、もう元に戻っているようで辺りを確認するが気配は残っていない。

 倒した証の残らない魔物。それはまた、達成感に欠けるものだったと言えるであろう。


「そろそろ戻ろうかな、流石に遊びすぎた」


 私は急いで箒に乗り込み、進んでいく。戻ると、ずっとキョロキョロしているフェクト。

 まるで私を探しているかのような動きである。


「ごめん、今戻った」


 上空から声を掛けると、とても契約者に見せてはいい顔ではなかった。

 顔から伝わってくる、やり場のない表情。


「本当に申し訳ありませんでした! 全て私が悪いです、どうかお許しを」

「そんなことは望んでねぇよご飯出来てるぞ、冷めないうちに食べようぜ」


 フェクトは呆れた顔をしつつも、笑いが堪えられなくなったのか、たちまち笑いだしたのだった。

 その声に反応したのか、それともご飯の匂いに反応したのか知らないが、ナズナが起き上がったのだ。


「二人とも何してるの? なんか美味しそうな匂いもするけど」

「今からご飯だぞ、食べられそうか?」


 ナズナは元気よく頷き、食事が始まったのだ。その時に、先ほどのことを話す私。


「そんなことがあったのか、だからあの反応か」


 フェクトは、納得したような表情で頷いている。ナズナは、わたしも戦いたかったと頬を膨らませていた。


「とりあえ今日はここで泊まるとして、せっかくだから聞きたいことがあるんだよね」


 二人とも不思議そうな顔してこちらを見てくる。


「なんだ聞きたいことって? アリアがそんなに気になっていることがあるのか?」

「珍しいよね、わたしたちに分かることなら答えるよ!」


 二人とも頼もしい限りだ。だからこそ仲間は美しいと言えるのであろう。

 共に足りない部分を補って、支え合って困難に立ち向かっていく。

 それこそが、仲間としての利点であろうと私は改めて思ったのだった。


「聞きたいことはエルフ族のことだよ、長が話してた子について知りたいんだよね」


 その瞬間、フェクトの顔は暗くなるがすぐに元に戻る。そして、一呼吸置いてこう言ったのだった。


「分かった、俺が知ってること教えてやる」


 そうして、話が始まるのであった。

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