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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
1部-4章 14歳になった私の旅は、魔神王の気配をのせて

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158話 一悶着と覚悟


「剣聖様、剣を収めてはいただけませんか?」

「収めるわけないだろ、お前の行動はお見通しなんだよ」


 彼女の顔が変わる。顔はにやけ気がついてくれてありがとうなんて言われそうである。


「アイツらより三歩は後に歩いていた。それに、常に魔法を使えるように、魔力すらも臨戦態勢に入ってたしな」


 彼女は、頷くだけで何も話そうとはしない。ただ、合っていることだけは分かる。


「あの子達があのような発言をすることぐらい分かってましたから、少しは痛い目をみてくれて嬉しい限りです」

「そうかよ、そんなことより私にも用があって来たんだろう?」


 彼女は少し驚いた様子を見せるが、すぐさま納得しているのがわかった。

 元々、魔神王の復活が近い今、私が近くにいるとなると、すっ飛んでくるのも分かる。

 それだけ、剣聖という称号は凄まじい強さをはっきするのだ。

 剣聖は、剣の力を存分に使い人々を脅威から守るもの。それが今どれだけ大切なことかわかっていたはずだ。

 それなのに彼女は、二人発言をやんわりと注意するだけで、特に追求はしなかった。

 ここんな状態の時点で、話はどういうものが行われても、上手く思い通りにはならないとわかっているはずだ。

 それでも、尚毅然とした態度。

 エルフ族のどれだけの影響力を持っていも、こんなところで揉め事を起こす奴は、上にはいけない。


「魔神王の一件です、立ち話もなんですし里の方に行きませんか?」

「なんだ、人前では言えない話か?」

「そうではありませんが、せっかくですし来ませんか?」

「ここで充分だろ、仲間を侮辱した奴の住む集落に行けるわけねぇだろ!」


 両者一歩も引かない状態に陥っていく。このような話はすでに、何度もループするかのように続いた。

 終わりは突然告げる。


「ユーミンさん、ここは引きませんか? これ以上剣聖様との関係を壊すのは得策だとは思えません」


 ハーンは私たちの間に立ってそう言ったのだ。そしてこちらの方を向いて、頭を下げたのだった。


「この度のご無礼誠に申し訳ありませんでした、介抱ありがとうございました」


 それを黙っているわけには行かないのだろう。ユーミンとかいうエルフの気配が一気に増す。

 それに魔力量も桁違いに感じるほどだ。


「元々はお前が悪いんだろうが! それなのに辞めろってか、頭沸いてんじゃねぇか! インフェルノ」


 本性はおそらくこっちであろう。さっきまでのは、ど厚い皮を被っているだけだったようだ。


「私に炎だなんて、深呼吸なされては如何ですか? オーシャンランス」


 勝負はその一撃で決まる。なんとも強い一撃が、インフェルノも一緒に打ち破ったのだ。

 勢い余って、ユーミンは地面に叩きつけられていた。


「相当強いんだね、見直したよ」

「ありがとうございます、周りが見えなくなった輩には、水で全身を冷やすのが良いですから!」


 そう言ってハーンは伸びている三人を魔法で浮かせ、改めてお礼を言って帰って行った。


「あのオーシャンランス相当だったな、生成も早かったが何より威力も高かった」


 オーシャンランス―杖を使って水の槍を作成する。単純な水の槍というわけではなく、狭い場所だと膝小僧まで水かさが発動後にやってくる。

 一撃も凄まじく、炎魔法の大体を打ち消してしまうレベルだという。


「なんかさ、嵐のような人だったね」

「ナズナの言う通りかもしれないな。そんなことよりどうするよ、めっちゃ濡れてるけど」


 小さな洞窟というのもあったが、出していた荷物は全て濡れた。


「ま、まあ、片付けましょうか」


 本当は、怒りを何処かにぶつけたかったが、そうする訳にも行かず、言葉を震わせつつも、冷静に物事を判断した。

 それにしても、先ほどの魔法は本当に強かった。一度、手合わせしたいものだと思う。

 あの子はあの状態は病み上がりである、それですらあの魔法を放てるのなら、本調子はもっと強いのだろう。

 だがそれでこそ、浮かび上がってくるものがあるというものだ。

 それは、魔族の強さだ。ハーンの実力なら、魔族は普通に対処できるはずだ。それなのにどうだろうか? ハーンは実際の所、大怪我をしていた。

 傷口は確かに、魔族に付けられたものだったとフェクトも言っていた。


「二人とも今日は寝られないと思う」

「どうしたんだ急に?」

「魔族狩りをするわよ! 準備しなさい」


 何言ってんだコイツ、みたいな顔を二人からされるが、構わず私は出発した。


「待てよ! 今はここいらに魔族の気配はしない、無闇に探しても意味ねぇだろ!」

「それはそうかもだけど、あの状態であそこまでの火力を持つハーンでさえ大怪我をしてたのよ」

「それはそうかも知れないけどアリア、今は休むべきだよ」


 ナズナもフェクトの意見に賛成のようだ。ここからひっくり返すことは私では出来ないだろう。


「わかったわ、ちょっと焦った」


 翌日、目覚めるとすっかり日は昇っており今日も夏の日差しが厳しそうだ。


「アリア早く起きろ、言わなきゃいけないことも出来たからな」


 フェクトは真剣な様子だ。それにナズナも準備体操をして、いつでも準備万端のようだ。

 私は少し気になって、気配感知をより鮮明にする。フェクトの言いたいことが分かった気がする。


「魔族の気配があるみたいだね」

「なんだ気がついていたのか、おそらくエルフ族の里がバレそうなんだろうな」


 おそらく情報共有だろう、ということは昨日戦った相手は、間違いなく配下だと確定した。


「すぐに準備するから待ってて、何があっても守り抜くわよ!」

「「了解!!」」


 私たちは、洞窟にお別れをつげ出発する。箒で空からの探索を開始すると同時に、気配が徐々に集まって行く地点がある。

 マップには何も載っていないが、おそらくエルフ族の里があるのだろう。

 箒を勢いよく飛ばしつつ、一度大きな深呼吸をするのだった。

 今から始まる戦いに対し、覚悟を決めた瞬間だったと言えるのであった。

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