114話 覚えてないけど楽しかったわ
投稿遅れてしまい申し訳ありませんでした。
その後、回復術師の二人は病院で入院することが決まった。
「一週間の入院か、寂しくなるよね」
「本当だったら助からなかったかも、本当にありがとうございましたー」
カエリアは、深々と私たちに頭を下げたのだ。そうしてイデリアは何度も何度も頭を下げている。
私たちは、それをもういいよと言うのをやめた。気が済むまで謝ったらそれでいいだろう、そう考えたのであった。
そして、私たちは昼間から酒場へと赴くのである。
とりあえずエールを頼みつつ、私は気になっていることを聞いた。
「君たちがなんでこんな所にいるの?」
「私たちは、とある国のギルドにて、ここで発生しているクエストを受けてほしいと頼まれたのです」
まだ彼女らは、銀の冒険者である。それなのに、指名されることなんてまずありえない。
おそらく、何しからの思惑があって半ば無理矢理連れて来られた形であろう。
「頼まれごとか、何か巻き込まれてる?」
二人は、顔をチラッと見合わせ決心がついたのか、私たちに話し始めた。
「ことの発端は、イデリア様とちょっとしたいざこざがありまして」
私は、その時記憶の片隅で眠っていた記憶が呼び覚まされたのだ。
「あの時か、イデリアが暴れまくった時か。確かに、イデリアが吹き飛ばされたって書いてたわ」
「その時、吹き飛ばしたのが私で、それ以降めんどくさいことになったんです」
大体想像ができる、それは簡単なことだからだ。
「ギルド会議か、それで君を特別的に金の冒険者にしようとい動きがあったからだね」
こくりと頷くキャンシーが頷いた。
「イデリアを吹き飛ばすことができる銀の冒険者か、そりゃ願ってもない幸運だろうな」
「でも私、見ての通り銀の冒険者として活動してるんです、お二方のギルドマスターが反対してくれた影響で」
そこも大体想像がつく。元受付嬢として働いていたギルマスと、最年長であり最も長くギルマスとして活動しているあの二人だろう。
二人は、彼女の実力をちゃんとわかっている、それだけで十分過ぎるほどの後ろ盾である。
それを気に食わないと思ったやつの犯行か、ここで金の冒険者としての技量を認められるように仕向けられたのだろう。
「それは災難だったね、キャンシーはまだ自分が金の冒険者としての自分が想像できないみたいだしね」
「アリアは、ほんとなんでもお見通しって感じだね」
私は、自信たっぷりに笑顔を添えてこう答えたのだ。
「だって私の初めての友達で親友だもん!」
その言葉を聞いた途端、キャンシーも泣き始めてしまった。
私は、流石におろおろとしてしまった。
「とりあえず君の件はよくわかった、ちょっくら席を外すね」
そして私は、ある言葉を付け加えたのだ。
「こっからは、君たちを私は全力で救うよ」
私は酒場を後にした。
……
「なんか申し訳ないです、アリアにだって旅があるのに」
「別に問題ないよ、アリアは君たちのことをよく話してくれた、だから助けたいと思ったんだよ」
「そうだよね、一人旅のことめっちゃ話してくれたよね」
黙っていたカエリアが口を開く。
「アリアって、まだ強くなるんですよね」
「そうだろうな、アリアの強さなんて、底なんてないだろうな」
俺は笑いながらそんなことを言った。だが、それを言い終えた瞬間、気になったこともある。
「それがどうかしたか?」
「今、私たちが受けているクエストに関係しているんです」
その言葉を聞いた瞬間、嫌な予感がした。それはナズナも同じだろう。お互い、顔には出してないが内心焦っている。
「魔神王関連か」
コクリと頷く二人。そして何よりこの子たちの置かれた状況がとんでもなく、悲惨だというのを俺たちは思い知った。
「わかった、ここは俺たちが受け継ぐ」
「それ大丈夫なの? 普通に考えて認めると思えないけど」
ナズナの言いたことはわかる。ただ俺は、この状況を打破するのにはこれしかないと思うことしかできなかった。
そんな時だ、酒場の扉が開いたと思ったら相当機嫌が悪そうな、うちの主人が帰ってきた。
……
「ほんとアイツら最悪だね、とりあえず今回のクエストに関して、私たちの介入を承諾させたわ」
「帰ってきて早々機嫌が悪いね」
「フェクト当たり前じゃない、アイツら話題性とかそう言うのしか考えてないのよ」
そうして私たちは、酒場を後にした。今回私たちが討伐する魔物は、魔神王を探す魔族だ。
そしてそいつは、毒槍を持っているそうで私たち以外の情報を収集しているのがわかる。
毒というのが厄介ではあるが、他は問題がない。
「とりあえず今からパパッと討伐するわよ」
「私たちも同行しても大丈夫ですか?」
私は考えることなく、こう答えた。
「当たり前じゃない、但し今回討伐しても金の冒険者としての試験は受けられないからね」
「元からそのつもりです!」
キャンシーは、とてもいい返事で言う。それはとても私も嬉しく、思わず踊りたい気分になってしまう。
「とりあえず付近まで移動するわよ」
その時だ、足元の地面に剣が突き刺さったのだ。
周りを見ると、この国の荒くれ者といった所だろうか。指示を出したのは、間違いなくこの国のギルマスだ。
「なんのつもり?」
「お前たちを殺すだよ、俺たちに依頼してきたやつが金をたっぷりくれてな」
「フェクト、ナズナ止めないでよ」
それを制止したのは、キャンシーである。
「アリア、攻撃したら全面的に悪くなるのはアリアになるわ」
「そんなことどうでもいいよ、剣聖に攻撃を仕掛けたんだ、それだけありゃ十分だよ」
次の瞬間、キャンシーの言葉を張り切るかのようにお頭だと思われる男を、木剣で攻撃をした。
一撃で倒れるお頭、それを見て今頃後悔する顔の数々。
「さぁ、剣聖少女と踊り狂いましょう」
その後のことなんて何も覚えない。ただ目の前に広がる、荒くれ者たちの気絶した姿を見て察したのだった。
そして私は言うのだ。
「覚えてないけど、楽しかったわ」




