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剣聖少女 〜あてもない旅がしたいと願った少女の冒険譚、剣聖にもなれたので箒に乗って路銀稼ぎや旅を楽しみたいと思います〜  作者: 両天海道
第1部-1章 剣聖少女前日譚と旅の始まり

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7話 湯に浸かる剣聖と探される剣聖


「あーあてもない旅してるー」


 いつものように昼の修行を終え、箒の上で寝転がりながらアリアはそんなことを叫んでいた。

 辺り一面、草木が生い茂り自然を感じる暖かさの中、箒を自由気ままに飛ばしていた。

 横になっていたのを起き上がるやいなや、久方ぶりの国が見えてきたのだ。

 アリアは、正門の前で箒を降りた。昼の陽気にやられたのか、あくびをしていた門番さん。

 顔を見るなり、目を見開いてパチパチさせていた。


「びっくりさせてごめんなさいね。国に入りたいけど、審査お願いできますか?」


 門番はビシッと構え直し一礼した。


「もちろんでございます。剣聖少女様、こちらの書類に必要事項を書いてください」


 それを書き終え、国の中に入ったのだ。

 国は、いたってシンプルの作りをしている。一番外側に近いのが庶民の人々が暮らす場所。中央の門の部分がこの国の領主様の家となっている。


「もう夕暮れが近いし、さっさと宿を取らないと」


 そう思い立ったがすぐに行動。正門からすぐ近い安い宿が取れた。

 これで寝る場所は、一安心である。

 その頃には、空は茜色に染まっていっていた。日中に働いていた人たちが、多く見受けられる。

 みんな、解放されたという顔で帰路に就こうとするところである。

 そんな中、夜のお仕事が昼のお仕事とバトンタッチをしている最中、揉め事が起きた。


「何すんのよ、離して!」


 女性の声が聞こえてくる。だいぶ、緊迫した様子なのがわかる。

 すぐさまそこに向かおうとするが、それを阻む存在があった。

 それは野次馬である。我先にと行こうとするのはいいが、特に何をするでもなく、ただそこにいる人たちのことである。

 

「あ! 返して、そのバッグを返して」


 どうやらひったくりだったようだ。露出度の高いドレスを着た女性から、中年の小太り男がバッグをひったくったのだ。


『はいそこまで! 今ここで私に斬られたいのなら別だけど』


 男は、崩れ落ちるかのように尻餅をついた。考えてみたら当たり前だ。

 ひったくり犯は、バッグを盗めたと思った矢先、剣聖が目の前で実剣を構えているのだ。

 それでおとなしくならないのは、ただの命知らずである。


「盗んだバッグ、返してもらおうか」


 そう言い終えるやいなや、先ほどの被害者が男性から奪い返したのだ。


「剣聖様! ありがとうございました、なんてお礼を言ったらいいか」

「次からは、取られないようにするんだよ。とりあえず、男の方はギルドだな」

 

 男は、逃げられないとわかっているようだ。完全におとなしくなってしまっている。


「すみません! ひったくり犯そこで捕まえたんですが」

「事情は全て聞いております、ご協力感謝いたします」


 当然と言ったらそうだが、ギルドからの報酬は出なかった。ただ、お礼を言われただけだった。

 書類や説明などで、時間はすっかり取られたのであった。

 辺りはすっかり真っ暗である。

 ご飯屋を見つけたい一心で歩き出そうとした直後、あの女性から声をかけらたのです。

 

「先ほどは、本当にありがとうございました。助けていただいたお礼をさせてほしいのですが?」

「え、いや結構です、私先を急いでいますので」


 師匠が見てたら怒られそうな状況だけど、今はそんなことに構っている余裕がなかったのだ。

 アリアは、一礼してその場から逃げるように立ち去った。

 そうして、ギルドとは反対方向にある酒場で、大いにご飯を楽しんだ。

 

「あ〜美味しかった」


 お風呂に入りたかったのもあったため、すぐさま宿屋近くまで歩いて行く。

 一人で旅をするようになってからというもの、街の人たちにほんと、とてつもなくコソコソと話されている。


「コソコソ話してないで、面と向かって言いなさいよ!」


 周囲に向けて怒鳴ってしまった。酔わないはずの酒に酔ってしまったのかと後悔するが、言えてスッキリしたところもあったのも事実であった。

 そう言い放った直後、アリアより少しだけ大人の女性二人が近づいてきた。


「私たちの所のお姉さんが、あなたに助けらたのです。どうかお礼をさせてはいただけないでしょうか?」


「当然のことをしたまでだよ、何もお礼なんていらないから。そう伝えておいてくれる?」


 正直、本当に迷惑していた。早くしないとお風呂やが閉まるからだ。

 お久しぶりの国で、風呂に入れないのが嫌なのだ。

 少し、子供っぽく表情を顔に出した。


「私、急いでいるんだけど。そこ、どいていただけますか?」


 口調は丁寧だが、怒りのこもった表情と声色に二人は後に引き下がった。


「それでは」

 そう言って、箒で一気に飛んだのであった。


 お風呂の時間は、楽しめる時間ぐらいの余裕があって到着した。

 

「剣聖少女様! 今すぐ貸し切りを用意いたします」


「大丈夫ですよ、民の憩いの場をこんな風に汚してはいけないと思いますよ」


「申し訳ございませんでした」


 受付に座っていたおばあちゃんは、頭を深々と下げていた。


「お風呂代、銅貨五枚ね」


 それを受付で渡し、念願のお風呂に入っていく。

 一部始終を聞いていたのか、脱衣所にいた女性たちは、少しよそよそしい雰囲気だ。

 これもしかたないことかと、心のどこかで納得してお風呂場にやってきたのだ。

 

 そりゃ見られるよな。バキバキに割れたおなか。全身の筋肉。

 その時、アリアは気がついてはいなかった。誰もが、アリアの胸を見ていたことに。

 

「あ〜生き返る。やっぱお風呂、最高!!」


 だらけきった声が、お風呂場に響き渡る。


「剣聖様お話、よろしいでしょうか?」


 こっちから話しかけても、ビクついて多分ダメだった。そっちから話かけられたほうが、とても嬉しかった。

 話しかけてきたのは、受付にいた人よりは若いがそれでも五十代に見える。

 その後、話は大いに盛り上がりお風呂場に居たみんなと、世間話を楽しむのであった。


 …………


 アリアがお風呂やを楽しんでいる一方この方は、アリアを探していた。

 名前は、カエリア。夜のお店で働く二十代の女性だ。

 助けてくれたお礼をしたいがためだけに、国中を探し回っている女性なのでした。

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