食の歴史 in 平井作品~拙作を食事シーンで振り返ってみる~
2023年の「小説家になろう」公式企画「秋の歴史」のテーマは「食事」でした。
私も二作品投稿したわけですが、あらためて考えてみると、これまでに私が書いてきた小説には結構な頻度で食事シーンが出て来るなあ、と思いまして。
そこで、食事シーンから拙作を振り返ってみようというのが本稿の趣旨です。
それでは、いってみましょ~。
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・フリードリヒ二世の手紙
・2022.10.19完結
・なし
平井の初小説。2022年の『秋の歴史』向けに書いた作品ですが、これには食事のシーンは全く無し。この頃はまだ余裕がありませんでしたからね。
今書くなら、フリードリヒやバイバルスが食事をするシーンとか盛り込むんじゃないかと思います。二人とも、生命力旺盛で欲望に忠実そうですしね。でも、この時代の食事ってどんなものだったんだろう。
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・つれますかメイドさん
・2022.10.29投稿
・<朝食>鯵の干物,南瓜と揚げの味噌汁,切り干し大根,野沢菜漬け,五穀米のご飯,<夕食>ワカサギ&野菜の天ぷら,猪汁,大根の皮とスモークサーモンの重ね巻き,ワカサギのキッシュ
ひだまりのねこ様主催の『つれないメイド企画』参加作品。
前作はストーリー展開に重きを置いた作品だったので、今度はとことんディテールにこだわった作品にしようと思い、食事シーンにも力を入れてみました。各務さんの有能っぷりアピールという側面もありますしね。うわ、美味しそう、こんな料理を作ってくれるメイドさん羨ましい、と思っていただけたら大成功です。
あと、特に朝食などは、益孝坊ちゃまの健康にも配慮したメニューとなっております(笑)。まさに愛!
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・ウィルヘルミナのラジオ☆オラニエ
・2023.1.1投稿
・なし
食事シーンは無し。そりゃそうだ。ひたすらラジオで喋ってるだけの作品ですからね。
オランダ料理、といっても日本ではあまり知られていませんね。よく食されているのは、クロケット(コロッケ)や塩漬けニシンなどらしいですが。ウィルヘルミナ様の好物は何だったんだろう、と思ってちょっと調べてみましたが、情報は見つかりませんでした。
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・召し上がれメイドさん
・2023.5.31投稿
・けんちん煮,ブリの照り焼き風,胡瓜と茄子の酢の物,玉ねぎとわかめの味噌汁,菜飯,
知さまの『ぺこりんグルメ祭』参加作品ですので、そりゃあ当然食事シーン盛り盛りですよ。
益孝くんが各務さんへの日頃の感謝を込めて、料理に挑戦するお話。
「けんちん煮」という料理はレシピの幅がかなり広いようで、「汁物かと思ってた」という方もいらっしゃるようですが、作中に登場したのは我が家のレシピです。
それと、地方名家という設定な割にはメニューがやたらと庶民的なのでは?と思われる(だって作者が庶民だから)ことへの対策として、未来母さんは一般家庭の出身という設定にしたのですが、これが後に『ミルフィーユは恋の味』に繋がっていきます。
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・人間椅子
・2023.7.29投稿
・なし
これも映画のワンシーンの撮影風景だけを切り取った作品ですからね。まあ撮影の合間には何か食べていたんだろうけど、作中での描写は無し。
ちなみに、アナには作中でも言及したミチコという日本人の友人がいるのですが、カリフォルニアロールが好物だと言ったらすごく嫌そうな顔をされたのがいまだに納得いかなかったりします(笑)。
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・ベルトラム王国物語
・2023.8.11完結
・ザクロ果汁のシャーベット
長岡更紗さまの『ドアマット大好き企画』参加作品。
ファンタジーものの定番、氷魔法で果汁を凍らせたシャーベットの屋台(笑)。
元ネタであるベトナムの女帝・李昭皇について、遊び友達だった陳煚にビンロウをあげたら陳守度に求婚の意思表示だとこじつけられて結婚させられた、という逸話があり、それを作中世界ではザクロに置き換えてみました。
そしてそれを踏まえた上で、タリアンからの意思表示だったわけですが、パトリシアはタリアンを危険に巻き込むことを恐れ、これを拒絶する、というエピソードです。
まあザクロの果汁なんて酸っぱいばかりで甘味は少ないんですけどね。蜂蜜か何かで甘味を付けてるんですよ。知らんけど。
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・マルタ=スカヴロンスカヤは灰かぶりの夢を見るか
・2023.8.24投稿
・なし
秋月忍さまの『サマーシンデレラ企画』参加作品。
これも食事シーンは無し。
執筆後に、「ピョートル大帝のステーキ」なる料理が存在することを知りました。これは、エカチェリーナがピョートルの胃袋を掴んだとされている料理で、先に知っていたら作中に盛り込んでいたのですが……。残念。
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・鏑矢の鳴る頃に
・2023.8.29完結
・そば粉の餅山羊乳チーズ乗せ
作中の竜神の里の人たちがどんな食生活を送っているのかを描写するために盛り込んだシーン。
山間で蕎麦や雑穀などを栽培し、山羊の放牧を行ってその乳でチーズを作り、時には山羊を潰して食べる、といったような暮らしをしている、という設定です。
「餅」と書いて「ピン」とルビを振っていますが、ここでは要するにそば粉のガレットです。
それと、オストハーンが中原の使者に歓待を受ける場面もあり、料理の詳細は記していないものの、彼は高粱酒を気に入ってがぶ飲みしています。
草原では手に入らない高アルコール度の蒸留酒、という設定ですが、この時代(史実に照らすと秦漢の頃)にすでに作られていたのかは知らん。
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・女帝のお茶会
・2023.10.10完結
・ロシアンティー,プリャーニク(蜂蜜パン),バランキ(ロシア風ベーグル)
公式企画『秋の歴史2023』一本目。なので当然食事シーンが出てきます。
元々、『女王様はロマンの塊』執筆に際して色々調べていた時に、大黒屋光太夫がエカチェリーナ二世のお茶会に招かれたのが、日本人が公式な場で紅茶を飲んだとされる最初の事例、と書かれているのを見つけ、小説のネタにできないかな、と考えていたのです。
で、今秋の公式企画のお題が「食事」ということだったもんで、題材にしてみました。
幸い、ロシア風のお茶会はがっつりお菓子類などを食べるらしいので、れっきとした食事です文句あっか(笑)。
女帝のお茶会に招待されている雰囲気を味わっていただければ幸いです。
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・ハギスと女王と元女王
・2023.10.24完結
・ハギスのマッシュポテト添え
公式企画『秋の歴史2023』二本目。
いや、我ながらなんでこんなネタ思いついたんだろうね(笑)。
これまでに女王様小説を四本書いてきて、ここらでそろそろ英国の女王を題材にしたいと考えてはいたのですが……。
スコットランドの料理って何があるのかと思い調べてみたら、やっぱりハギスが有名なようで……。エリザベス一世が登場する小説は世界中に数あれど、彼女にハギスを食べさせたのはきっと私が初だろうと思ってみたり(笑)。
それと、後書きでも言い訳してますが、ジャガイモが登場するのも微妙なんだよね。
まあ細けえことは気にすんな。
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・ミルフィーユは恋の味
・2023.11.2投稿
・ミルフィーユとんかつ
しいなここみ様の『とんかつ短編料理企画』参加作品で、『益孝くんと各務さん』シリーズの外伝です。
益孝くんの両親の若い頃のお話。ちょうどシーが開業して間もない頃ですね。
安いバラ肉を使って工夫した自分ちの「とんかつ」を、それが普通だと思っていた未来さん。裕福な地方名家出身の司くんとの恋に思い悩みますが、最終的にはハッピーエンドです。じゃないと益孝くんが生まれて来ないしね(笑)。
ちなみに我が家でとんかつと言えば一口ヒレカツが主流でした。
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以上、なろうデビュー以来の二年間、というか、最初の方はエッセイばっか(これも結構食べ物ネタが多かったりする)だったので、実質一年と少々ですが、その間に書いた作品の三分の二くらいに、何らかの食事シーンが登場してるんですよね。これって普通?
私自身、食べることは好きなので、登場人物たちに美味しいものを食べさせてやりたいという気持ちはあります。
作品および登場人物に奥行きを持たせるための格好の手段でもありますしね。
もちろん、描写には毎回頭を悩ませますし、すごく大変なのですが。
『剣客商売』や『鬼平犯科帳』シリーズで知られる池波正太郎先生の作品は、食事シーンにやたらと気合が入っていることで有名ですが、その足元にも及ばないとしても、ちょっとそれっぽい雰囲気だけでも出せたらなぁと思っています。
ではまた、次回作でお会いしましょう。