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第60話 俺、同棲初夜を過ごす


 ガスの立会いに大型家具の搬入、それからシバの飯を含めた食料品の買い出し、気がつけばもう夜遅くになっていた。


「英介、おやすみ〜」


「おう、おやすみ」


 シバはいつもと同じ飯を食って満足げに自分の部屋へと戻っていった。そうか、前みたいにシバが寝ているところを拝めないのか……それは残念。今日はコンビニの弁当とカップ麺で済ませたが……なんか食べる場所が違うとこう高級に見えてくるもんだ。


「岡本クーン!」


 と廊下の奥から俺を呼ぶ声がする。というのも彼女は今、風呂に入っている。なんでも「女の子は毎日1時間お風呂にはいるの!」とのことらしいからな。


「どうした〜?」


「バスタオル! とって!」


「脱衣所においてなかった?」


「違うの、私のふわふわタオルが荷物に入れっぱなしで……お肌に優しいやつ!」


 なるほど、バスタオルも音奏はこだわっているんだな。そういえば、顔はタオルで拭かずに専用の使い捨てペーパーがあるとか言われてさっき衝撃を受けたわ。女の子って俺が思っている以上に大変らしい。


「ちょいまち」


 俺は音奏のどでかいバッグから薄ピンク色のふわふわタオルを見つけてバスルームへ向かった。


「はいるぞ〜」


「うん」


 ホテルのような洗面台が2個ある洗面所を抜けて脱衣所に入るとこれまた大きなドラム式洗濯機(新品)と脱衣するには広すぎる空間に入る。

 その先の風呂の扉は透け透けだが、曇っていて中は見えない。


「ここにおいておくぞ」


「うん、ありがと」


 俺はさっさとリビングに戻るとソファーに身を沈めてスマホを眺める。目の前の眺望はとても美しい夜景だった。東京タワーにキラキラと輝くビル、首都高は渋滞していて赤いランプがいっぱいだ。

 音奏のいう通り、この高さならあまり近所の目は気にしなくてよさそうだ。立地がいいのかすぐ隣にオフィスビルがあったりしないし、タワマンが並んで立っているわけでもない。


「綺麗だなぁ……」


「綺麗だねぇ〜」


 後ろから声をかけられて振り返ると、そこにはバスタオル一枚で髪にはもう一枚のタオルを巻き、ビールを持った俺の彼女が立っていた。

 あまりにも刺激的すぎる姿に俺は固まってしまう。


「飲む?」


「あ〜、はい、飲みます」


「なんで敬語? ってか、顔赤くなりすぎじゃん?」


「いや、その……女性のバスタオル一枚とか見るの初めてなので」


「私だって見せるの初めてだもん!」


 と照れ隠しなのか音奏は冷たいビールを俺の首筋にガッと当てた。


「つめてぇっ、死ぬっ」


 ビールを受け取って、俺も照れ隠しをするように一気に飲んだ。タワマンで飲むビール。うめぇ……。


「いつまでそのカッコでいるんだよ」


「そりゃ……寝るまで?」


「風邪ひくぞ」


「だってさ、付き合ってるのにずっとお預け食らってたんだし……、その私もそういうムード? とか出さないととか思っちゃったりして☆」


 うん、多分失敗だぞ。

 男・岡本英介。覚悟を決める時が来たらしい……女の子にここまで言わせちゃ流石にだめ……だよな?


 だが、心に決めていることがある。どんなに望まれても絶対に「避妊」はするんだ……! 負けちゃダメだ!


「いいっすか」


「私……その初めてなんだけど……いいかな? 岡本くん」


 といいムードになりかけた時、どうしても気になって俺は意図せず言葉を発してしまった。


「そういえば、いつまで俺のこと苗字で呼ぶつもり?」


「あっ、そういえば……クセで」


「一応、恋人なんだし……同棲するってことは結婚とかも考えてるわけだし。そろそろ俺も下の名前で呼ばれたいな」


 音奏は少し考え込むと


「何がいいかなぁ」


 とまさかのこちらにバトンを渡してきた。ギャルな彼女のことだから「えいぴ〜」みたいな変なあだ名でもつけてくるかと思いきや……。


「おまかせする」


「じゃあ……やっぱりそのシてから考えてもいい……?」


「えっ」


 そのまま、口づけを拒むこともできず俺たちはベッドに向かった。


 

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マンガから来ました、両親の紹介合戦オマチシテマス。
面白かった テンポよく読める 続きが気になる と言う事で、続きの投稿お待ちしております。
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