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第51話 俺、久々の仕事をする


「お届け物でーす」


「あざっす」


 いつもの宅配のお兄さんに挨拶をして俺は段ボール箱を受け取った。もちろん、送り主はマネージャーの雪平さんである。無地のダンボールなのはこの中に入っているカップ麺が新作発表前のものだからだろう。


「えっと、メールは」


 PCを開いて、メールに添付された「案件依頼書」を確認する。ここには禁止事項やクライアントからの希望事項がいろいろと記入されていた。


「なになに、動画にシバ様の写り込み希望。企画、SNS投稿はシバ様もご一緒していただけると幸いです、だってよ」


 シバはくわっとあくびをするとこちらにやってきて一緒にPCの画面を眺める。


「オレ、カップ麺は好きじゃないぞ。熱いし」


「違う違う、可愛いシバ様が一緒に写ってると購買意欲が湧くんだろ? ほら、こういうののCMって基本美人な女優さんとかだろ?」


「じゃあ、犬用のおやつでもつけてくれよなぁ? 気がきかね〜の」


 今日のシバはちょっと不機嫌だ。というのも、今朝の散歩中お気に入りの散歩仲間であるポチ子(柴犬 メス2歳)に会えなかったからだ。ポチ子はまんまるの豆柴で普通の犬だがその可愛さったら……俺もシバもメロメロなのである。



「どーする? いいね50万のシバ様」


「まぁ、協力してやらんこともない」


 クライアントさんがこういう指示をしてくるのもわかる。だって俺のSNSは露骨に「シバが写っているか」「そうでないか」でいいね数が違う。

 本体なんて呼ばれているが最近ではプロ犬なんて呼ぶ人もいる。ちなみに、シバの正体を犬神だと明かしてはいないが、しゃべっているところが配信されているのでモンスターだということはバレている。


 テイムモンスターは契約と役所への申請でしっかり監視されてはいるものの流石に「犬神」がほしいとみんなが騒ぎ出しては困るしな……。



「じゃ、ちょっと画角整えるわ」


「ん、英介。オレのブラッシングを先に頼む」


「はいはい」


 ごろんと腹を出すシバを丁寧にブラッシングする。まだ換毛期の前だからそんなに抜け毛はないが見た目がつやつやとする。シバの首飾りもいろんな種類欲しいな……。風間さんに頼んでいくつか作ってもらうか。蝶ネクタイとか。


「英介、案件って仕事だろ?」


「まぁ、そうだな。企業の人たちとやりとして頑張ったらお金がもらえる」


 シバは耳を下げてしまう。


「英介、仕事つらくない?」


 そうだよな。俺はずっとここで仕事の辛さに耐えてたんだった。シバにとって仕事=辛いものという認識なんだろうな。

 親父は冒険者だったからそもそもプー太郎だし。親父が死んだ後、母親は朝からパート夜は水商売で休みなく働いていた。ついでに隣の高橋さんも仕事しんどそうだし。

 だからシバはこういう幸せな仕事を知らないのだ。


 シバのおでこを優しく撫でながら俺は答える。


「辛くないぞ。この仕事はきっと楽しい。音奏とおんなじ仕事だ。しかも、お金もいっぱいだ。ごめんな、心配させて」


「英介が平気ならいい。ほら、さっさと撮影ようぜ」



***


「岡本英介の休日〜カップ麺アレンジ編〜 with 本体」


 なんどタイトルを考えてもうまいこと行かない。カップ麺のアレンジ自体はすんなり決まった。味噌風味のスープを豆乳で作り、豆板醤加えることでマイルドだけどピリッと辛い夜中のお供に仕上げたのだが……。


「だれがこんな男の動画みるんだぁ?」


 所々にシバがうつっているものの本当にこんなもんに需要があるんだろうか。でも、クライアントの期待に答えたい……!


「ギャルを落とす必殺のアレンジ! いや、流石に露骨すぎるか」


 やっぱり、俺の需要は音奏と共にあることだろう。となれば……


「彼女に食べさせたいカップ麺アレンジ!  これだ!」


「英介、メシ」


「おう、今日は何がお好みで?」


「カリカリとささみ」


「了解」


 俺はシバの飯を作ってから地獄の編集作業に取り掛かるのだった。

 




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