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第48話 俺、久々の無双配信


「では、ビッグコカトリスを倒したいと思います」


 同時接続者数は10万人。ありがたいことにバズってから俺にも固定ファンというものがついたらしい。


「音奏とシバは特別ゲストと一緒にキャンプ地で待機中です」


 ゲストの言葉に盛り上がるコメント。高橋さんが映ったら死ぬほど盛り上がるんだろうなぁ。


「今日はビッグコカトリスの肉と卵でチキンカレーのふわふわ卵乗せをつくります」


 なんて話していると大きな羽音と「ぎゃー」と耳をつんざくような鳴き声が響いた。ビッグコカトリスは平たく言うと空飛ぶダチョウのような見た目をしていて大変地味だ。


「イヤホンの方音量にご注意!」


 俺はしっかり耳栓をつけて弓を引き絞った。できるだけ叫び声を出させないために首を狙うか……。


 ビッグコカトリスは翼を揺らし、麻痺性の毒がたっぷり含まれている羽毛を雨のように飛ばしてくる。が、俺はそれを全て避ける。


 食いたい肉はもも肉、胸肉だな。じゃあやっぱ、首だな。


 俺はあの手この手で猛攻を繰り広げるビッグコカトリスをいなしながら、弓を引き絞ってしっかりと狙いをさだめる。ビックコカトリスの細い首のちょうど真ん中あたりに向かって矢を放つ。


「ぐぴっ?」


 やつは大声を出そうにも出せない。そのはずだ。俺が放った矢はやつの首を貫通し、首がごろりと地面に転がったからだ。あまりの速さで矢が貫通したせいか体も頭もまだ動いていた。


「よし、ビッグコカトリスの麻痺毒も素材として採取しようかな」


<速すぎて見えなかった……>

<いつから君の首が繋がっていると錯覚していた……? コカトリス「えっ(ひゅん)」>

<っぱ、無双ですわ>

<これはいいスカッと>

<コカトリスってうるせ〜し、つえ〜しでグダるイメージだけどこんなに早いのは草>

<コカトリスって美味いんだよなぁ>

<見た目ダチョウだけどな>

<飛ぶぞ(二つの意味で)>


「では、捌いている間は蓋絵にするんで質問どぞ。読み上げモードにします」


<キャンプするならどこがいい?>


「うーん、ダンジョンでキャンプは危ないんで真似しないでください」


<ギャル好き?>


「ギャルは好きです」


<一番好きなダンジョンメシは?>


「実は海系のダンジョンで釣った鬼火マグロが好きかなぁ。中落ちユッケがとにかく最高」


<海系ダンジョンはしんどい?>


「水中カメラがしんどいかも。ドローン的なのないしね。どこかの企業さんが開発してくれたらぜひ……やりたい」


<そういえば、配信の最後に重大発表ってま?>


「はい、まぁ重大ってほどでもないかもだけど……お楽しみっと。よし、捌きおわったのでキャンプ地まで移動します! 今日はこのまま配信で音奏とゲストがいるところまで戻ります」


<本体はよ>


「ははは、じゃあ戻りますか」



***



「みなさんこんにちは〜! お友達のアリサです!」


 高橋さんがカメラに向かって手を振る。しっかりとシバを抱っこしているので絵力がすごい。セクシー戦士お姉さんに柴犬。俺たちよりもバズるんじゃないか……?


「今日はお二人のキャンプに参加しにきちゃいました。うふふ」


 コメントは大盛り上がりである。うん、やっぱ可愛いは正義だな。


「アリサさんは明日以降に投稿する料理動画でちょこっと登場しまっす。じゃあ、最後に俺と音奏でからお知らせです」


 音奏が真っ赤な顔で俺の隣に並ぶときゅっと俺の手を握った。高橋さんは画角の外にはけてカメラのちょうど後ろ、つまりは俺たちの正面でニマニマしている。


「えっと、この度岡本と」


「伊波音奏は……」


 一拍置いて、俺たちは息を合わせる。


「正式にお付き合いすることになりました」


 ぱぁ〜ん! とカメラの後ろから高橋さんがクラッカーをサプライズで鳴らして俺はビクッとしたもののなんか嬉しくて自然と笑顔になった。音奏もびっくりしつつも俺に抱きついて嬉しそうに笑っている。


 シバもここぞとばかりに画角に入り込むと後ろ足で立ちあがり器用に拍手をして見せる。本体様のパチパチにコメントはより一生盛り上がり……


「じゃ〜、今日の配信はここまで。料理動画と今後の配信についてはSNSでお知らせします」


 音奏が「バイバイ〜」といつものように手を振って配信を終了した。


「ちょっと〜、イチャイチャしちゃってさ〜。でもおめでとう」


 高橋さんがシバを抱っこしつつ俺たちを茶化す。非常に恥ずかしかったがそれと同時にすごく嬉しかった。自分のような人間がたくさんの人に祝福されるなんて……。


「ありがとうございます」


「ふふふ、じゃあお礼にたくさん美味しいもの食べさせてもらおうかな〜?」


「了解です。音奏、料理動画の準備お願いできるか?」


「はーい!」



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