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第47話 俺、お隣さんと彼女とキャンプに行く



「お疲れ〜!」


「高橋さん、連休取れたんすか」


「もぎ取った!」


「よっしゃ! じゃあしゅっぱ〜つ!」


 音奏は助手席に座り、高橋さんはシバと一緒に後部座席に座った。彼女はもうシバにメロメロで表情が崩れている。

 配信でシバが喋っているのがバレたので高橋さんもシバを喋らせては「可愛い」を繰り返していた。


「今日はS級ダンジョンです。えっとダンジョンボスはビックコカトリスで卵がうまいので行きます。道中、鳥系のモンスターが多いのでうまそうな卵があれば拾っていこうかと」


「へぇ〜、音奏いいなぁ。料理上手で優しくて強い旦那さん!」


「えへへ〜、いいでしょ〜。岡本くんは日本一の旦那なんだよ〜」


「そっか、日本で一番強い男……なんかぐっと来るわね」


「でしょでしょ〜? 私初めて会った時からビビッときててやっと夢が叶ったってかんじでぇ」


 まだ彼氏ですけどね。こんなふうに堂々と自慢される日が来るなんて思ってなかったからちょっと嬉しい。


「あら、私お邪魔じゃなかった?」


「ほら、迷惑系をおっぱらってもらったお礼もできてなかったですし、ゆっくりキャンプを楽しんでください」


「そうだよ! それに有紗ちゃんとキャンプしたかったんだっ。女同士お酒も飲みたいし。自慢の彼氏の料理も食べてほしいし!」


「そうだ、俺ら配信しますけど高橋さんその間映るの嫌だったらマスクとか渡しますけど」


 高橋さんは「よくぞ聞いてくれたわ」とばかりにドヤ顔になる。


「配信、するのかなぁ〜と思って昔の防具引っ張り出してきたんだよね。テント設営したら着替えてもいい? もちろん、写り込みOKよ」


 そういや、高橋さんは元冒険者だ。辛い経験から冒険者をやめて看護師をしているらしいが……


——めっちゃノリノリだな!


「どうぞ、配信はビックコカトリスを倒すだけなんで俺1人でも十分ですが……」


「だと思って、とびっきりセクシーなの持ってきたの。ふふふ、私はシバちゃんをもふもふして美味しいご飯を食べるのよ! セクシーな服を着て!」


 なんというかまぁ高橋さんはすごいなぁ……。ワンチャン、配信者になりたいのか? 絶対バズると思うけども。


「まじ? 有紗ちゃん可愛い衣装着るなら一緒に写真とろーよ! アガる〜!」


 こっちもこっちでギャルだからな……。久々にこの2人が話しているのを聞いたけどなんというかノリが軽くて明るい陽キャって感じだ。でも、この会話を聞いているだけでなんとなく心地がいいな。


「そういえば、高橋さんタンクって言ってたっすよね?」


「うん、流石に斧は持ってこなかったけど盾はあるよ」


「タンク?! かっこいい〜! 看護師だし、ヒーラーだと思った!」

 

「ふふふ、実は体力には自信があるの。トライアスロンとかもできちゃうんだから。体力は重要よ、体力は」


 なんだその意味深な言い方は……。バックミラー越しに見える高橋さんは悪い顔をしている。


「トライアスロン……すごい。私も体力つけないと!」


 何かに閃いたように音奏が深く頷いた。


「だって……」


 話が下ネタに走りそうだったので終えは遮るように「つきましたよ〜」と声をかけた。



***



「有紗ちゃん、その衣装えっちすぎるよぉ!」


 まさにその言葉の通りである。「女戦士」と言われれば、ゲーム上ピンク色の鋼鉄のビキニが定番であるが、まさにそっくりそのまま画面から出てきたようなセクシー衣装である。


「それ、防御力あるんすか?」


「盾が重い分、装備は軽めなんだよね〜」


「そう言う問題じゃない気が……、念の為シバにのっといてください」


 高橋さんは目を輝かせる。シバは俺の言葉を聞くとぼふっと大きな音を立てて巨大化すると高橋さんが乗りやすいように身を低くかがめた。


「わぁ、もふもふだぁ……しつれいしまぁぁす。あぁ〜〜〜〜〜」


 まるで絶頂したみたいにとろけた高橋さんはシバにぎゅっと抱きつくような形で毛の中に埋まっていった。まぁ、幸せならOKです。


「音奏〜、下で卵うけとってくれるか〜?」


「了解っ!」


 俺はキャンプ地に行くまでの間にいくつか卵をとって行く。無論、S級ダンジョンなのでモンスターたちは引っ込んでしまっている。


「久々のんびりだねぇ〜」


「だなぁ。設営が終わったら俺はビッグコカトリス倒しに配信始めるわ」


「了解、私はシバちゃんと有紗ちゃんと料理の準備しとくね」


「火おこしと米だけ頼むよ」


「え〜、ソーセージ燻製したい」


「あぁ、そっか燻製できるんだ。いいぜ、チーズとジャーキーもあるからシバにもあげてくれ」


「うんっ、あのさ。配信の終わりに付き合ってること発表していい?」


「あ〜、うん。そうしようか」



 俺たちは中層のキャンプ地に到着し、それぞれ準備を始めた。


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