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第27話 俺、音奏に事実を伝える


「なるほど、確かに頃合いかもね?」


 音奏は今日も今日とてうちに入り浸っている。というか、どうせ一緒にいるなら彼女の部屋の方がいい気もしているがこのボロいアパートの居心地が良いと言って効かないのだ。


「ワンパンのんびり配信にもそろそろリスナーも飽きてくる頃だよな」


 そう、俺は今まで基本的にキャンプができるレベルのダンジョンに入って、料理に使うモンスターを狩ってきた。

 あまりにも余裕でSSS級のモンスターを倒すので話題になったが……それもなんというか消化気味だ。


「確かに、そもそも配信者でL級のダンジョンに入るのは本当に一握りだよね」


 L級というのはSSS級の上のクラスで、L級は1〜100までの数字階級になっている。ちなみに、俺が最後に受けた階級試験はL20、大学生の時だ。つまりはL20のダンジョンまでだったら多分死なずに帰還することができる。

 今はもう少し実力が上がっていると信じたいが、ぬるま湯に浸かっていたので微妙だ。大丈夫かな。


「まぁ、Lに入るのはガチの冒険者が多いからな。というか配信できるほどの余裕はないというかなんというか」


「そっか、でも岡本くんなら余裕だよね?」


「ワンチャン、L10くらいまでならキャンプできるかもしれん」


「えぇ〜! それは異次元すぎるよ! やばすぎるよ!」


 環境を選べば……だけどな。とはいえ、キャンプは俺が楽しいからしているのであって別にリスナーが求めている訳ではないし。

 無理にしなくてもいいような。


「じゃあ、次のダンジョンはL級で決まりだね! 映えそうなモンスターさがそーっと」


「なぁ、音奏」


「何?」


「Lに行くのはいいんだけどさ」


「うん、何?」


「お前は入れないぞ」


「えぇっ? なんで?」


「お前……まだSS級だろ?」


「あっ……」


 音奏は雷にでも打たれたように衝撃を受けるとショック過ぎて白目を剥いた。


「このままだと俺たち一緒に行動ができないわけだ」


 出会った時S級だった音奏はこれまでの間にSS級認定を受けたが、SSS級になるための条件は踏んでいない。

 冒険者の階級認定はSS級までは自己申告でOKだが、SSS級への昇格は物証が必要になる。

 物象に関してはなんでもよくて、配信者であれば討伐配信動画だったり戦利品であったり。

 

「L級からはダンジョンへの探索申請が必要になるからさ。SS級のままだと多分、音奏は許可降りないぞ」


「それ……ま?」


「あぁ、まじだ」


「じゃあ、私もLにならないとダメってこと?」


「いや、L〜L5までならSSS級でも俺が一緒なら帯同はできるはず」


「ムズカシ」


「お勉強からするか?」


「しない〜、たすけて〜」


「つまるところ、物証をとってSSS級になれば俺と一緒にLに入れるってことだ」


「それって、私にSSS級のモンスターを倒せと?」


「そうですよ、お嬢さん」


「うぅ……がんばる」


「ま、俺はどうせSSS級のダンジョンでキャンプする予定だし音奏も一緒にきてモンスター倒せる様に頑張ればいいさ」


「岡本様……それは本当ですか」


「本当です」


「え〜ん、ありがと〜」


 ぎゅうぎゅうと抱きつかれながら俺はちょっとだけ心配になる。L級のダンジョンといえば、当時最強と呼ばれていた俺の親父が死んだ階級だったからだ。

 親父がどのダンジョンでどうやって死んだかはよく覚えていないが、まぁそういう危険があるということだ。


——そもそも俺は命をかけて金を稼ぐのが嫌で社会人やってたんだよなぁ


 と矛盾を感じつつも、自分を応援してくれる50万人くらいのチャンネル登録者たちの期待に答えたいという気持ちが上回っていた。


 強いダンジョンに潜るためには強い仲間が必要だ。


「なぁに? じっとみつめて〜」


 音奏はちゃらんぽらんに見えて結構筋はいい。魔法石を使ったステッキで魔法攻撃をするのも俺と違うタイプで相性はいいと思う。

 それに、少なくとも俺は音奏をかなり信用している。


「音奏……頑張れるか?」


「岡本くんとL級行くためだもん! がんばるっしょ! 禁酒もする!」


「よし、じゃあキャンプ配信も兼ねていくつかのダンジョンで昇給に必要な物証とり行くぞ」



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