第17話 俺、ギャルのXXXXを見てしまう
——どうしてこうなった……。
俺は今、リビングの床でキャンプ用のマットをしいて寝転がっている。すぐ横では俺のベッドで寝息を立てる音奏……。
なんでコイツは俺のベッドを占領してやがる!
音奏は白いTシャツに灰色で白いラインの入ったスウェットショートパンツ。すらっとした足がベッドからだらんと飛び出している。
彼女は絶対に自分がベッドで寝るんだと言って聞かずにこうなったわけだが、よく考えたらやっぱりおかしいよな?
綺麗なキャンプ用のマットがあるのにわざわざ男臭いベッドを選ぶなんて。
「えへへ〜、ダンジョン! ぎょうざ! 岡本くんを餃子にしてやる!」
(餃子ってなんだよ!)
午前2時。しかたない……寝よう。
***
俺はシバの朝飯コールで目覚めると、美味しそうな匂いが部屋中に充満していることに気がついた。キッチンの方では白いTシャツに灰色で白いラインが入ったスウェット生地のショートパンツを履いた音奏が料理をしていた。
(あのショーパン、男がみんな好きなやつだ)
「おはよ〜、岡本くん」
彼女は俺が起きたことに気がついて振り返った。
——え?
いつもはバサバサのまつ毛にキラキラの瞼、唇はピンク色でキラキラしている彼女だが、今は違う。
あどけない少女という言葉がぴったりな美人だけど純朴そうな表情、大きな目はとろんと眠そうな二重で、真っ白でつるつるの肌が眩しい。細くて綺麗なまつ毛とナチュラルな色の唇はちゅんと尖っている。
「なによ〜、ジロジロみて〜。えっち」
「いやっ、なんか雰囲気違うなって」
俺に言われてから気がついたのか、彼女はぽっと赤くなると
「す、すっぴん見られた!」
と朝っぱらから大声で叫んだ。いや、本人は嫌がっているようだが正直言ってすっぴんの方が好みだ。なんで化粧するんだ? いや、女性にとって化粧ってのはこうなんというか大事なものだっていうしな。変なことは口に出さないでおこう。
「もしかして、朝飯作ってくれたのか?」
俺は恥ずかしがる音奏を無視してキッチンを覗き込んだ。ちょっと茶色くなった厚焼き卵に大根おろし、ぱりっと焼いたソーセージ。グリルでは昨日買った塩シャケを焼いているのかいい匂いがする。
「そりゃ? 泊めてもらってるんだし? 御礼にならないかもだけどこのくらいはさせてよ」
グリルを開けると「ジュー」と魚の油が音を立て、ぶわっといい香りが広がる。と同時に炊飯器がピーピーと音を立てる。
「英介、メシ」
「おぉ、悪い悪い。はいよ」
俺は急いでシバのメシを用意すると彼に渡す。
——やばい、こんな朝飯幸せかも……。
彼女は手際よく茶碗に白米を盛り、焼き上がった塩シャケを皿に乗せた。厚焼き卵には大根おろしと醤油、それからわさび。
ウインナーにはケチャップとマスタード。味噌汁はシンプルにわかめと豆腐だがアクセントに七味が一振りかかっていた。
控えめにいって最高の朝飯である。
「うまそ……」
「でしょでしょ〜? 私、おばあちゃんっ子だったからよくお手伝いしてたんだよね〜。さ、召し上がれ〜!」
あつあつの味噌汁を一口飲んでから、これまた炊きたての白米を頬張る。もうしゃけの匂いだけでイケる。
何より人に料理を作ってもらうのがこんなにも幸せなことだったと再認識できた。
「うまい……」
「よかった〜、ギャルも意外に料理できるんだぞ〜。じゃ食べながら相談しよっか」
「次のダンジョン?」
パリッと焼かれたソーセージにたっぷりのケチャップとマスタードをつけて白米の上に乗っける。最高に行儀は悪いが最高にうまいんだなこれが。
「そう。次のダンジョンどこにしよっかの話。あっ、岡本くんしゃけの皮食べる人?」
「うーん、カリカリなら食べるけどどうして?」
「ちょうだい?」
「どうぞ」
音奏は嬉しそうに俺のしゃけから皮を剥がすとパクッと一口で食べた。すっぴんなのも相まってとてもかわいい。
「うんまぁ〜、私天才かよ〜!」
「天才だな」
「でしょでしょ〜? このまま奥さんになってもいいんだよ?」
「なーに言ってんだ。開示請求終わって犯人捕まえたら帰れよ〜」
といいつつ俺の茶碗はもう空になりそうだ。
「じゃあ、それまでに胃袋掴んじゃおうかな〜? おかわり食べる?」
「た……食べる」
——結論、ギャルのスッピンはかわいい。
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