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Side音奏1* 命の恩人で好きな人


「岡本くんってばカッコよすぎだよ〜!」


 私はぎゅうぎゅうと可愛い黒猫のぬいぐるみを抱きしめた。あの日、私を救ってくれた彼に夢中なのである。


「お前のその不貞腐れた顔、ちょっと岡本くんに似てる? にゃ〜」


 ちゃらんぽらんな暮らしをしている。配信者として収益を得ながらたま〜に知り合いの居酒屋でバイトをしたりする。


「もっと仲良くなったら名前で呼びたいなぁ〜。えいくん? えいちゃん? すけちゃん? え〜ん、全部かわいいしゅき……」


 私のチャンネル登録者は10万人。SNSの総フォロワー数は50万人。若い女の子でこれだけフォロワーがいれば大体月に30万円くらいの収入がある。メイクの案件とかあるとやばい。

 足立区に住むには十分な金額だし、それにこの暮らしに満足している。


「パパもこのくらい楽ちんでよかったのにね」


 スマホの中にあるのは私が幸せだった頃の家族写真だ。毎日一度はこの写真を見て私は幸せだった家族を思い出している。忘れないでいることがパパのためになると思っているから。


 そんな私が今夢中なのはカレ! 岡本英介だ。


「岡本くん、次はどこのダンジョンに連れて行ってくれるのかなっ……だってだって、またトレンド1位になったんだよ? やばいって〜」


 つい昨日、狼王のダンジョンでぎゅっと抱きしめられたことを思い出して私は体がカッと熱くなった。

 細く見えるけど実際は太くて男っぽい腕、硬くて暖かい胸板。普段は優しいのに戦う時の真剣な視線……きゃっ〜!


——弱いことは悪いことなのに、弱くて良かったと思っちゃった☆


「岡本くんってどんな子が好きなのかなぁ〜? ちょっとバズってモテすぎちゃって心配。あの女優・シラカンもいいねしてたんだし。もしかして私ってばピンチ?!」


 彼ってば鉄壁って感じだもんなぁ。

 一緒にキャンプしても私をテントに押し込めて自分は外、家に行っても終電前には帰されちゃうし。でもカノジョはいないし女の子が好きだって言ってた。


「にゃん太郎! 私まさか脈なし?! えーん、こんな初恋ないよ〜!」


 猫のぬいぐるみをぎゅーーっと抱きしめて私はベッドでジタバタする。どんな子が好きなんだろ? 年上好きとかだったら詰みじゃん?!


「まぁ、押すのが正義だよね。よし、SNSチェックしたらメッセいれておうちに押しかけちゃお☆」


 私はスマホを開いて通知をチェックする。岡本くんがバズったことで私にもDMが結構きているみたいだ。



<めろちゃん弱可愛い>

<応援してます!>

<またコラボしてね>

<女視聴者です、2人の恋を応援しています!>



<クソビッチ。必ず殺してやる>


 普段、アンチが来ることは珍しくはないがなんかこのDMは変だ。

 私はタップしてそのアカウントに飛んでみる。そこには私の写真に血のような何かを塗ったアイコン、罵詈雑言が並んでいた。


「なに……これ」


 初めてSNSをしていて怖いと思った。


「まさか」


 エンスタもエックトックも同じアカウントがDMを送ってきていた。


<クソビッチ。必ず殺す>

<足立区に住んでることはわかってる>


「やば……翔子ちゃんに連絡して、えっと名刺、じゃなくてスマホに……」


 恐怖で手が震えてうまく操作できない。みたくないのにそのアカウントをスクロールしてしまう。



<岡本英介に近づくな、お前を必ず殺す>



「えっ……どうしよう、私岡本くんに近づいたら殺されちゃう」


 ——ガタッ!


 玄関の外の方で大きな音がして私はビクッと恐怖に震えた。パニックでどうしたら良いかわからないってこんな感じなんだ……。

 人から敵意を向けられるってこんなに怖いことなんだ。



「と、とりあえず、翔子ちゃんに電話!」






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