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第10話 俺、さっそく配信者になる



「おい、英介ソワソワだな」

 シバがカメラを設置する俺を見ながら言った。

「今日が初めての配信だからな」

「ハイシン?」

「あぁ、音奏がやってる金が稼げる新しい仕事さ」

「稼いだら美味いもん食える?」

「あぁ、シバのご飯もグレードアップだな」


 カメラの画角を調整して、それから撮影を始める。


「こんにちは、岡本英介です」

 セリフはあんなに考えたのにぎこちない。自分のことなのに共感性羞恥で死にそうだ。

「えっと、配信者を始めることになりました。主にキャンプをする配信をします」

 


——同時視聴者数 0人



「さ、テントの設営を始めます」


 まじでこのクッソつまんない配信誰が見るんだ?

 

 と思いながらも俺はテントを設営する。

 少し高いテントはソロキャンプ用だが機能性抜群で設営も楽ちん。テントの設営を終えたら今度は簡易キッチン。 これもキャンプ用の道具を使う。

 ダンジョンの中は綺麗に。というのがダンジョンキャンパーの掟だ。


「ワンッ」


 カメラの前でシバがアピールを始める。

 この犬神は女の子に「可愛い」と言われるのが大好きなのである。



——同時視聴者数 2人



「あ、こんちは。岡本です」



<もしかして、この前バズってた?>


「はい、そうです。この前、ケンタウロスを倒したやつです」


<すごかったです!>

<ワンちゃん可愛いですね!>



——同時視聴者数 10人


<初見です>


「初見さん……、えっと初めてってことかな? 俺も初めてっす」


<あっ、本物の岡本英介だ>


「本物です」


<やっば、配信者になったんだ>

<モンスターは倒しますか?>


「あぁ、えっと明日食材調達の配信をします。多分……」


<ツエートしなきゃ! 拡散します!>

<めろちゃんは来ますか?>


「あ〜、音奏さんは来ないです。多分……」


<めろちゃん呼んできます>

<おお、視聴者増えた>


——同時接続者数  100人


「こ、こんにちは。岡本です」


<おお! はやくモンスター倒してくれ>

<本体映せ>

<本体のもふもふはどこだ>


「あぁ、シバ」

 俺はシバを抱き上げてカメラに写した。コメントは一層盛り上がる。シバはお返しとばかりにウインクを決めて尻尾をフリフリした。


<視聴者うなぎのぼりですね! 応援してます!>


「ありがとうございます」



——同時接続者数 560人



「これから配信頑張りますので登録よろしくお願いします。えっと、それじゃあまた」


 俺が配信を切った途端、スマホがブーブーと振動する。


「もしもし」


「ちょっと〜、抜け駆け良くないよ〜! どこにいんの?! どこのダンジョン!」


 電話の相手は音奏だった。


「えっと、八王子にある狼王ウルフキングのダンジョン」


 さっきまでギャンギャンと捲し立てていた音奏が静かになる。それもそうだ狼王のダンジョンはSSS級。正直キャンプするようなところではない。


「ちょっと、なんでそれさっきの配信で言わないのよ!」


「いや、言ったら特定されて邪魔されると思って……」


「SSS級ダンジョンで呑気にテント設営してるなんてイカれてるってバズるチャンスだったのにぃ! 待ってて! 素人配信者すぎる! 私が行くから!」


 ブチっと電話が切れた。


「シバ、音奏のやつ来るみたいだぞ」


「ん、ジャーキー買ってこさせろ」


「りょうかい、ビールも頼もうかな」




 登録者数 30人


 こうして俺の配信者ライフは平凡にはじまったのである。




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