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7話「彼らの結末」

 数日後、オーツレットとルビアは国の領土の端にぷかりと浮いている小さな島へ流されることとなった。

 身勝手なことをやり過ぎた、その罪で。

 国王の命により、二人は一般人ではなく罪人だけしかいないその島へと送られることとなってしまったのだ。


「サイッテー。これじゃ普通の暮らしすらできないじゃない」

「ごめんって」

「はぁ? 許せるわけないでしょこんなの! あんたが王子だから付き合ってきたのにさぁ、こんなことになって……ホントサイテーだわ!」


 ルビアは酷く怒った。


「王子、だから……?」


 自分を純粋に愛してくれている、そう思って疑いもしなかったオーツレット。だからこそ、目の前の女性の本当の心に気づいて衝撃を受けた。怒りやら苛立ちやら悲しみやら絶望やらが混じったような感情がオーツレットに襲いかかる。


 しかしルビアはもう本心を隠さない。


「そうよ、あたしがあんたに付き合ってたのはあんたが王子だからよ。価値があるから、だから関わっていただけ! いつか王妃になれる、だからあんたと一緒にいたのよ」


 彼女は思っていたことをそのまま言葉にする。


「何だって!? 卑怯者!! 愛しているという言葉は嘘だったのか!?」

「愛してたわよ、王子であるあんたのことなら」

「俺自身をではないと言いたいのか!? ふざけるなよ!? 王子だから、なのか!?」

「そうに決まってるじゃない。そうじゃなきゃただの昔からの知り合いってだけ。それ以上なんてないわ」


 言い合いの末、オーツレットは感情に呑まれてルビアを殴り殺した。


 それによって彼は正式に人殺しとなった。


 いや、これまでも多く殺してはいたのだが。けれどもこれまでの殺しは間接的なもので。命令はしたとしても、自らの手で殺すというわけではなかった。彼ではない人、処刑人が、命令に従って殺めていた。だが、この時ルビアに手を下したことで、彼は初めて直接的に人を殺めたこととなったのだ。


 その後のオーツレットの人生は惨めだった。


 暴力で支配された犯罪者の島にて、彼は、最弱の存在として生きなくてはならないこととなって。威張っている男たちから虐げられ、奴隷のように働かされた。また、皆が嫌がることはすべて彼がやらされたし、それでもなお彼に良い地位が与えられることはなかった。それに、そもそも元王子というだけで風当たりはきつくて。どれだけ奉仕しても、なんだかんだで良き仲間と認めてもらうことはできなかった。



 ◆



「ウィージスさん、貴方と婚約できて嬉しいです」

「僕も嬉しいよ」


 あれからも交流を重ね、私とウィージスはついに婚約者同士となった。


 最初はただの折り紙を通じて関わっている二人だった。けれども同じ時を過ごしていると次第に距離が縮まっていって。いつしか特別な関係に足を踏み込みかけていて。その時に色々考え、彼と共に生きる道を選んでみようかと思うようになった。けれども上手く言えそうになくて困っていたら、ちょうどその頃彼が婚約したいと言ってくれて。元々若干その気だったので、彼の申し出をさっと受け入れた。


 そうして今に至っている。


「ああ、そうだ。そういえば、聞いた? 王子の話」


 ある日の晩、ウィージスが話を振ってきた。


 それは懐かしい人の話題だった。


「オーツレット王子のことですか?」

「そうそう。彼、勝手に処刑するとかをし過ぎて勘当されたらしいよ」

「ええーっ」


 普通なら「はめられたのでは?」と思うところだが。

 オーツレットは元々かなり身勝手な人なので、多分実際にそういうことをしていたのだろうと思う。


「リメリアさんの元婚約者なんでしょ? 彼」

「そうです」

「しかも、島流しにされたんだって」

「そ、そうだったんですか……」

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