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6話「暴走する王子」

「ねえ聞いた? あの人たち、この前廊下でいちゃいちゃしてたそうよ」

「ええーっ、何それどうかしてない?」

「そうそう。いい年して人目のあるところでいちゃつくとか、ちょっとねえ……」


 侍女たちがオーツレットとルビアについて小声で喋っていると、その後ろからオーツレットが現れる。


「今、俺たちの悪口を言っていたな?」


 オーツレットは冷ややかな面持ちで言い放つ。


 ――そう、先日の廊下でのいちゃつきは罠だったのだ。


 オーツレットとルビアは、数日前、敢えて侍女らが目撃するであろう場所にていちゃついた。だがそれは意味もなくというわけではなくて。侍女らにそれについてひそひそ言わせるために仕掛けたものであった。


「王子たる俺とその婚約者であるルビアの悪口を言うなど、反逆罪だ」


 すべては、ルビアのため。


 そして、自分たちに歯向かう心を持った者をこの世から消すため。


「えっ……」

「な、何の話ですか」

「心当たりが……」


 侍女らはごまかそうとするが。


「聞いていたぞ。廊下でのいちゃつきを悪く言っていたのだろう? しっかりと聞いた、この耳で。それでもまだ言うか? 何も言っていないと」


 オーツレットは逃がしはしない。


「……申し訳ありません」

「ごめんなさい」

「で、ですが! あの女性は周りに高圧的過ぎます!」


 侍女らはそれぞれ思い思いのことを言ったのだが――。


「ふん、もういい。君たちは処刑だ」


 オーツレットは許しはせず、その侍女らの首を飛ばすことを宣言した。


 そして翌日、三人の侍女は処刑された。


 皆驚いていた。

 しかしオーツレットたちだけはご機嫌で。


「処刑、終わったみたいね?」

「ああルビアか」

「うふふ。このあたしにあんなことを言うなんて生意気だもの、首を堕とされて当然よね」

「もちろんだ。完璧なルビアに嫉妬して悪口を言うなど非道の極み」

「今夜はぱっと飲みましょ!」

「ああ、一番高級な酒を」

「そういうところが好きよ、オーツレット」


 その後。


 そんな風にして、王子オーツレットの命令によりひと月で数十人が処刑された。


 彼は愛する幼馴染みを悪く言う者を一切許さず、少しでも批判的な意見を述べた者は次々に命をもって償わせた。彼はただ、愛する人を護っているだけのつもりだった。しかしその行いは非道そのもので、誰の目にも明らかなほどやりすぎであった。


 そしてやがて、オーツレットは国王から勘当を告げられる。


「かっ……勘当っ!? な、なぜ……」


 まさかの展開、青白い顔になるオーツレット。


「お主はやり過ぎだ」


 そんな彼を睨む国王は、表情も声の調子もすべてにおいて冷ややかで。


「俺は何も間違ったことはしていない!」

「人を殺めただろう。それも、大量に。細やかな罪にもかかわらず」


 深い海のような迫力があった。


「……あいつらはルビアを悪く言うのですよ」

「悪く言われることなど多少は誰でもある。そのたびに人を殺めるのか? それはさすがにやり過ぎだ」

「しかし! 未来の王妃に対してあのような言い方は!」

「そもそも、勝手にリメリア殿を捨て幼馴染みを選んだのが原因であろう。リメリア殿の時はそれほど悪くは言われていなかったはずだ」


 するとオーツレットは一旦黙ってしまった、が。


「父上は何も分かってくださらないのですね」


 すねた子どものようにそう呟いた。


 こうしてオーツレットは王子の座から落とされることとなった。


「何ですってぇ!? 勘当!?」

「そうなんだ……ごめん、ルビア……」

「はぁ!? 何言ってんのよ!? じゃああたし、ゆくゆく王妃になれないじゃないの!!」

「けど、父上は言い出すと聞かなくて……」

「はっきり言いなさいよ、もっと! それとも、お父様には強く言えないとか? なっさけない! 男でしょ!? こういう時こそしっかりして、どうにかしなさいよ!!」

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