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第3話*老婆と馬鹿と時々主人公

大変遅くなってすみませんm(__;;)m

とりあえず、前話の反省を生かしてとにかく読み手に読みやすく!と、書きました。

感想・アドバイスお待ちしておりまーす☆★

 頭がズキズキ痛い…。

 …そうだ、俺はちょび髭の部下らしき奴に殴られたんだ。

 てかマジ痛ぇ。もっと加減してくれたっていいじゃねぇか。

 そもそもあの髭何なんだよ。何であんな中途半端に残ってるんだよ!いっその事剃った方がよくね??

 …って!話が逸れた。

 いや、そんな事よりも、…俺何かさっきから気絶こんなのばっか!!?


「――何なんだよ、この役回り!!」


 覚醒第一声。秋斗の声が反響する。

 頭が冴えてくると同時に、冷静になる思考。とりあえず何らかの情報を得ようと、秋斗は辺りを見渡した。


 目がだんだんと暗闇に慣れてくる。どうやらここは個室のような所らしい。だがやはり辺りは暗い事には変わらず、正確には分からない。


「ひっひっひ。随分と賑やかな囚人だねぇ」


 自分がいる空間の奥から突然おかしな甲高い笑い声が聞こえたと思うと、今度はうっすらと灯りが秋斗の顔を照らした。

 小さいとはいえ、いきなり光で自分の顔を照らされた秋斗は目を細める。


「おや、また《・・》ガキとはのぅ」


 その声は驚きを零した。

 秋斗は慣れてきた眼で声の主を確かめる。


 そこには腰は曲がり、顔はしわくちゃで、飛び出んばかりの眼をした老婆がいた。老婆の片方の手には、灯りの元である蝋燭がある。 世間一般の人10人に聞けば10人が"不気味"と答えるであろう異常な容姿をした老婆。だが右も左も分からない所で1人いた秋斗にとっては、どんな容姿だったとしても人がいるという事で安心感を持てた。


「あ、あの…ここは一体…?」


 そんな秋斗の言葉に、老婆は少しの間キョトンとした顔になったが、すぐにそれは笑いの表情へとなった。


「何言っとるんじゃ。牢に決まっておるわ」


 再びおかしな笑い声。

 この婆さんは自分の笑い方に疑問を持った事はないのだろうか…?


 秋斗は違う点に首を傾げながら、老婆の言葉の意味をゆっくり噛み砕いていく。


「成る程、牢か……って牢!!?」


「ひっひっひ、いちいち反応が面白い小僧だねぇ」


 あなたの笑い方も充分に面白いと思うのですが…。


 だがあえて口には出さない。その一言で面倒臭い事になるのを秋斗は熟知しているのだ。


 意識が途切れる前の記憶を思い出し、推測する。多分…てか100%あのちょび髭に連行されたのだろう。喧嘩売るような真似もした事だし。

 だとすると――、


「ニャー」


 思考一時停止。

 突如特有の場を和ませる鳴き声が響いた。


 振り返る。

 見えるのは鉄格子。特に驚く事ではないが、改めて自分は牢にいるんだ、と実感する。

 視線をそのまま下へ。ほら、やっぱりいた。


「ニャー」


 そんな秋斗の思考に応えるかのようにもう一鳴き。

 鉄格子を挟んだ向こう側には、ちょこんと座る1匹の黒猫。

 老婆はその光景を見て、驚いた素振りを見せた。


「ほぅ、黒猫とは……珍しい事もあるものだのう」


「へっ?ただの猫じゃん」


「阿呆が。黒猫は警戒心が強いんでめったに人前に姿を見せん。常識じゃろ」


 ――"常識"ねぇ。


 心中でさっきまでいた自分の空間せかいとを比較する秋斗。


「でもさ、俺今日で2回目だぜ。黒猫と会うの」


 言いながらしゃがんで黒猫の方へ手を差し出す。黒猫は差し出された手に興味を示したのか近寄って来た。



 ―――、



 飛び出さんばかりに眼を見開き、目の前の光景を凝視する老婆。

 秋斗がしゃがむと、当然老婆は秋斗を見下ろす恰好となった。

 蝋燭の灯りは秋斗の背中を照らす。

 さっきまでは身長差のせいでよく見えなかった首から上も、今は老婆からもはっきりと見えた。


 そう、

   どこまでも深い"漆黒"と、

    何よりも映える"紅"

           もはっきりと。


「――…じゃ」


「えっ?」


 婆さんが呟いたが、その内容は聞き取れなかった。聞き返そうと婆さんの方に向き直ろうとしたが――、


「勇者様じゃぁぁああ!!!」


 突然婆さんが凄まじい形相で飛びかかって来た。眼は爛々としている。

 そんな俺は持ち前の運動神経で婆さんを避ける――なんて格好いい事できる筈もなく、体勢を崩し、


 ゴン


 倒れると共に、見事に鉄格子に頭をぶつけた。普通に痛かったりする。

 そこからは見張りであろう鎧を身に纏った人が見えた。

 あ、めっちゃこっち睨んでる。例の如くフルフェイスの兜で顔は見えないが。。あれは絶対睨んでる。そんなオーラがしてる。


「と、とりあえず婆さん落ち着け! それに俺勇者じゃないから!!」


「やはりあたしの預言は間違ってなかった…! 勇者様が来て下さった!」


 ダメだ。この人まったく話聞いてない。そして俺に馬乗りの体勢となっているこの人は結構重かった。


「それにしても、世界より先にあたしを助けて下さるとは…何ともお優」


 パコーン


 気持ちいいほどに真っ直ぐな音が牢に響いた。

 最後まで言い切る前に、老婆は背後から何者かに思い切り頭をかれたのだ。

 秋斗は内心助かった・と思い、老婆を叩いた人物を見上げた。


「ったく、ばばぁ五月蝿い!」


 まず目がいったのは、蝋燭が照らす僅かな光の中でもよく見える金色こんじきの瞳。次に何色にも染まらないような黒髪。見た目からして歳は秋斗と同じくらいの青年は、秋斗よりもいくらか背が高かった。 青年は秋斗に気付き、誰だ?、と間抜けに言うが、すぐに何かを思い出したらしく声を上げる。


「俺はスカイ!お前は?」


 人懐っこい顔で言う青年――スカイは手を差し出す。戸惑っている秋斗だったが、その動作に反射的に応えた。


「あ、秋斗…。旗元秋斗」


 その応えに満足したのか、満足そうな笑顔でスカイは腰を下ろした。


「アキトかぁ。 で、アキトは何やらかしたんだ?」


 秋斗はスカイの質問に対して疑問に思うが、すぐにここは牢である事を思い出し納得した。

 あの時の事を思い返しながらわかりやすく整理する。


「ん~…、絡まれてた人助けたら勘違いされて俺まで捕まった…のかなぁ?」


「なるほど、それは災難だったな!」


 面白い事を聞いた時のような、それこそ本当に気の毒だと思っているのか、と疑いたくなる笑顔でスカイは言った。

 スカイに対して軽く殺意を覚えた秋斗だったが、その後に言った彼のここにいる理由、「食い逃げ」という言葉にその2文字は一気に消え失せ、なんとなくスカイの性格を理解したのだった。


「ま、チンケな所だがわからない事があったら遠慮無くこの俺に聞きたまえ!」


 全くもって頭が弱い青年である。

 そんな彼に呆れつつも俺は一応ノってやる事にした。挙手。


「えっと、なら1つ質問。この婆さんは何でこんな所に?」


 「あー、ばばぁね。 確か"オオカミが来た"って村中に言い回ってたら捕まったって言ってたと思う!」


 どこのイソッ――


「あたしは何処ぞのオオカミ少年だ!!!!」


 いつの間にか復活した婆さんはスカイを勢いよく張り倒した。

 スカイ撃沈。。

 てか一応ここ《・・》でもあの物語通じるんだ。


「――…ってーな、このばばぁ!!」


 復活。


「小僧もさっきあたしを殴ったじゃないかい!年寄りはもっと大切にしな!!」


 婆さんも負けずに言い返す。

 2人の間に火花が見えるのは俺の気のせいであって欲しい。

 あ、見張りの人のオーラがもう我慢の限界っぽい。めっちゃ睨んでる。

「貴様らいい加減に――「「うっせぇっっ!!!!」」――スミマセン」


 さっきまでのイライラをぶちまけようとした見張りは、反対に一瞬のイライラをぶつけられたのだった。


「あ、あの、お二方、とりあえず落ち着きマセンカ?」


 2人の迫力にカタコトになりつつも、とりあえず事がこれ以上発展しないようにと、秋斗は説得を試みた。

 老婆はその説得で冷静になったのか、スカイと距離を置き、ふんと、悪態をついた。


「あんな童話の嘘つき小僧と一緒にすんじゃないよ。あたしゃれっきとした預言者だよ」


 "預言者"。

 またもや秋斗の今までの人生では非現実的な単語が当たり前かのように出る。

 だがここで今の疑問を出してもまたややこしくなりそうなので、秋斗はあえてそれを心の中に留めておいた。


「 ――世界に異変起こる時 "支配"と"孤独"の象徴を持つ使者 異界より現る

その使者異変を取り去り 世界に再び平穏を呼び戻す―― 」


「!?」


「何だそれ?」


 ふいに呟いた老婆の言葉に秋斗は顔を上げ、スカイは素直に思った事を口にした。


「つい最近あたしが詠んだ預言だよ」


 秋斗は何処からか湧き出て来る緊張感に息を飲んだ。


「で?何でそれがアキトなんだ?」


「"支配"、それ即ち赤。"孤独"、それ即ち黒を表す言葉じゃ。 つまり、このお方こそが勇者様じゃよ」


 そう言って秋斗を――秋斗の髪を指差す老婆。


「ま、、待て待て待て!俺が勇者で、勇者が俺…!?んな馬鹿な!てかそんな事言われてもだな…!!」


「混乱するのもよくわかる。だがここでその話をする訳にもいかんのじゃ」


 秋斗を宥める老婆は、眉をひそめ見張りを横目で見た。

 なんとなくだったが、混乱した状態でも老婆の意図を理解することができた。


「でもよ、どうする事もできないじゃん!」


 秋斗は言う。老婆もそれを感じていたのか、唸り、頭を捻らすしかできないようだ。

 そんな時――、


「何か良くわからんが…要するにここから出たいんだろ?」


 こいつは一体何を言っているのだろうか…?

 2人は同時に彼を――、


「んじゃ、とっととここから出るとするか!」


 自信に満ち溢れた金色こんじきの瞳の青年を見た。

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