22 四方山話
ラインゼルたちが帰宅すると、リリが夕食の支度をしているキッチンから漂う、甘い香りを嗅ぎつけたサラが走り出した。
「リリっ、この匂いの正体は何だ!?」
サラが、真紅のマントを翻してキッチンのドアを開けると、リリは一階の下部屋に残されていたメイド服を着ており、芳ばしい大きなオーブンの前に立っている。
「サラ様は、お料理を食べないので、夕飯のパイ包みのついでに、余ったパイ生地でアップルパイを焼いていますわ」
「アップルパイ?」
「アップルパイは、庭になっていた林檎を砂糖で煮て、パイ生地で包んだ焼き菓子なの」
「それは、美味そうだな」
サラが、まだ火が燃えているオーブンに手を突っ込もうとするので、リリは羽交い締めにして止めた。
「サ、サラ様っ、火傷しますわ!」
「私は炎龍だぞ! オーブンの火如きで火傷するものか!」
「まだ生焼けですのっ、もう少し火を通さないと駄目ですわ!」
キッチンに入ってきたリアンナは、ケーキを山ほど食べたばかりのサラが、オーブンに手を突っ込んでアップルパイを食べようとしているので、呆れて物が言えない。
「私が味見してやろうぞ!」
「私がリリを手伝いますから、サラはラインゼル様と食卓で待っていなさい。サラがいたら、調理の邪魔になるしょう」
リアンナは、サラの襟首を掴むと、回れ右してオーブンから引き剥がした。
「リアンナッ、私は炎龍だぞ! 猫づかみするな!」
「猫舌で熱い紅茶が飲めないくせに、灼熱の息とやらは、どうやって吐き出しているのか知らないけど、猫舌のサラのどこが炎龍なのでしょうか?」
「アレは、唇より先で着火しているのだぞ。私は、熱いお茶と口内炎が苦手なのだ」
「サラ様は、お口が弱点なの?」
リリが聞き返すと、サラは恥じらうように腰をくねらせる。
「冒険者どもは、炎龍の口が弱点だと知っている。先代の炎龍は、部屋に押し入った冒険者の色んな物を口に挿入られたり、色んな物を出されたり、大変だったみたいだ」
「色んな物をお口に挿入されたり、出されたりって、まさか男性のアレ的な物ではありませんの?」
「リリ、先代に挑んだ冒険者は、確かに男ばかりだったが、男のアレ的な物とは何だ?」
「男性のアレですわ」
「ちょっと意味が解らないぞ」
「もう、結構ですの」
上気した頬を手で仰いでいるリリの発想は、男性の生気を喰らう淫魔なので、いつも下ネタ方面なのだ。
炎龍サラが猫舌なのは、どうでも良いので閑話休題。
サラが猫舌は、思いつきで書きたくなったネタです笑
また明日も頑張ります!
おやすみなさいm(_ _)m




