ルージュの中身
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皆さん、今私の目の前でルージュが仁王立ちしています。
あの後、式が終わり教室へスンリンと向かいホームルームを無事終え、寮へと帰ろうとしたところにルージュに話があると言われました。
スンリンはいい顔をしなかったですが、遅かれ早かれ話はしなくてはいけなかったことでしょうから、私はルージュについていくことにしました。
何かあったら呼ぶようにとスンリンからは念をおされ、私は頷きルージュの後を追いかけ2人して空き教室に入った所で今に至ります。
「ねぇ、あんた誰?」
突然言われた言葉に私は何と答えれば良いか迷いました。
元貴女だった人物です?
そんなこと言って信じてくれるでしょうか。
頭のおかしな人物だと思われるだけだと思います。
私なら確実にそう思いますね。
「シャロンと申します」
なら、今の名前を言うしかないです。
すると、ルージュは間髪置かずに違う、と言いました。
「それはもともと私の名前だし、その身体は私のものだったの」
「え?」
つまり、私とシャロンの中身が入れ替わっているということですか。
ということは、今までこの世界に来て私が経験してきた事柄はシャロンの過去ということということでしょうか。
「そうねぇ…
ある日廃墟で目が覚めて、空腹で倒れた所をクロックっていうおじさんに拾われてそれからアーウィンと兄妹同然のように育てられたんでしょ? そんでもって、城から誕生日パーティーの知らせがあったけど、行けるような財力もないって諦めて家の外から城の方を眺めてたら見知らぬ男の子と遭遇したんじゃない?」
「その通りです」
凄いです。
流石元シャロン。
その通りです。
「その男の子から特待制度のこと言われて、書類が届いた。推薦者が王族の名前になっていたから断れずに入学を決めたって所がここまでの流れよね?」
「全くその通りです」
「やっぱりね。私が過去に経験した通りだわ」
裏返せば、私が過去に経験してきた事柄をルージュは経験してきたということなのでしょう。
やりたいことをやらせてもらって、言いたいことが全て通るそんな世界。
ルージュがどんなことをしても否定する存在のない世界をルージュは味わってきたということですね。
「私はね、イアン様と気持ちを寄せ合うことができて、これから2人でハッピーエンドを迎えるっていう所で何故かこの身体に入っていたの。この『幸せを呼ぶ花』っていうゲームの悪役令嬢、ルージュ・グランディオという女性に」
ゲームが何だか分かりませんが、私が知らないところで悪役令嬢という認識を持たれていたということですか。
そうですよね、やったことを振り返ればそう言われて当然なことしかしてきておりません。
「もともとはゲームの主人公、シャロンだったはずなのに何で処刑されるだけのキャラクターになってしまったのかしら」
処刑されるだけのキャラクター、確かに私の最期はそうでした。
それだけ聞くとその為だけに存在していたように聞こえますが、私はそんなことをされるために存在していたわけではありませんでした。
ただ、イアン様の婚約者で居ること、それだけを望んで生きてきただけだったのです。
「で?あんたの中身は誰なわけ?まさか新たなプレイヤーじゃないでしょうね?」
また知らない用語が出てきました。
何のことだかさっぱり分かりませんが、ここは素直に答えた方が良いのでしょうか。
「ま、誰であっても、私はイアン様を攻略して見せるわ。どれだけ貴女(主人公)がイアン様を狙おうともイベントなんて起こさせないから。彼が何を抱え何を考えどうしたいなんて私は全て知り尽くしてるから絶対に彼は私を好きなるわ。あぁ、でも貴女がゲームのプレイヤーだったとしたら私と同じ土俵に立っているってことになるわね?」
ルージュが何を言ってるのかさっぱりだが、ここは否定した方が良さそうだと首を横に振れば不気味に口角を上げました。
何と悪どい表情でしょう。
こんな表情を浮かべること出来たのですね、過去の私。
「あら、プレイヤーではないの。それは良かった。そうね、私は悪役令嬢であるルージュ・グランディオと違って人を傷つけたり人生を終えさせることなんてするつもりはないの。悪役令嬢に成り代わって主人公より溺愛されるって話があるようにそれを私は目指す予定よ。貴女に手を出すつもりはないから安心しなさい」
ルージュは声高らかにして笑ったかと思えば、こちらに近寄ってきて小さな声で囁きました。
「貴女が前に見た男の子だけど、あれはイアン様よ。王族があんな所にいたことがバレてしまっていけないということで、監視目的で貴女はここに連れてこられたの。口外でもしてみなさい。処刑されるわよ。いくら主人公と言えどもね」