入学式について
皆さん、あの後どうなったのか気になりますよね。
私も気になります。
気になるのですが、校舎に入ったらすぐに会場へ早く向かうようにと促され、後ろで何かあったとしても確認が取れる手段が私にはありませんでした。
あんなに人がたくさん見ている所で婚約者と不仲であることが知れ渡ってしまえば、次々とイアン様のもとへ女性が集まってしまいます。
それで以前の私---ルージュ・グラディオは良いのでしょうか。
ルージュにとって不利益なことばかりのはずですけども。
「いつもよりボーッとしてるけど、大丈夫?」
スンリンに顔を覗かれ、私は慌てて首を縦に振りました。
「大丈夫です」
「そう、なら良いけど。ここってさ、ご令嬢とかどっかの王子様とか住んできた世界が違う人ばっかりでしょ?あんまり目立つことはしない方が変に目をつけられなくて良いかも」
小さい声で言われ、私は何度も頷いた。
確かに少しでも私が平民であるとバレれば標的にされるリスクが上がってしまうでしょう。
以前はそんな心配したことなどなかったですが、こんな所も考えなくてはいけないのですね。
大変です。
それから入学式が始まり、新入生の挨拶にイアン様が登壇されました。
女性やはたまた男性までも彼の容姿に見惚れていました。
イアン様は挨拶を終えるとすぐに席へ戻られたのですが、挨拶を終えたときの表情が無表情でした。
イアン様にとってそれはデフォルトかもしれませんが、普段より苛立っているように私には見えました。
だからなのか、席に戻ってからというもののイアン様の近くの人たちが慌てて視線を明後日の方向へ向けているのが分かりました。