寮へ
皆さん、ついに入学式の準備が始まりました。
以前は自宅から車で通学していましたが、今は車もないですし学園まで遠くて家からとても通うことは困難です。
そのため、学園にある寮にアーウィンと共に入学式前に向かうこととなりました。
その話をしているところにスンリンが家にやって来ました。
学園に通うことをお伝えしました所、私とアーウィンを寮まで送り届けてくれることになったのです。
そのスンリンなのですが、やはりと申しますか、その学園に通うそうで、寮に入られるそうです。
ただ、寮に入る日にちが別のようで私とアーウィンが先に入ることになったのです。
折角送り届けてくださるのですからご一緒にと思っていたのに残念です。
寮へと向かう日があっという間に来てしまいました。
クラックに挨拶をした後、スンリンが準備してくれた車に乗せて貰い学園へと辿り着きました。
そこは私の記憶にある学園そのもので、何度瞬きを繰り返しても風景が変わることはありませんでした。
寮は学園の建物の裏にあり、男性寮が手前、女性寮がその奥にあるそうです。
門のところで降ろしていただき、アーウィンと2人でお礼を言ってから学園へと入っていきました。
懐かしい風景です。
あんなにほぼ毎日と言って良い程に通っていた学園の校舎です。
まるでお城のような立派な建物に、以前は特に何も思うことはなかったのですが、今では圧倒されてしまいます。
こんなきらびやかな建物など縁がありませんでしたし、高級志向は処刑されたあの時からきっと消えました。
そう感じるほどの時間をこの世界に来てから過ごしてきたということですね。
染々とそう思っていますと、目の前を歩いていましたアーウィンが足を止めました。
どうしたのかと思っていますと、寮の方から聞いたことのある声が聞こえてきました。
この声はまさか、ロビンではないでしょうか。
そう思っていた所、紫色の髪で耳にはたくさんのイヤリングをつけたロビンがこちらに向かって歩いてきました。
まさかロビンまで同じ学園にいたとは驚きです。
こんなに目立つ格好をしていれば、存在に気付きやすいはずなのに以前の記憶のなかにロビンの姿はありませんでした。
自分のなかで対して関係ないと思った人物は記憶から失くしていたので、そのせいかもしれません。
そう考えてみると以前の私は本当に酷いことをしていましたね。
「あれ、2人ともヤッホー」
片手を大きく振って近寄ってくるロビンに私は小さく手を振りましたが、アーウィンは顔をひきつらせていました。
どうしたのでしょう。
これは驚いたというより引いている感じですね。
「お前別の高校入るって言ってなかったか?」
「あぁ、あれね!変わったんだわ。言わなかったっけ?」
「聞いてねぇよ」
これはただ聞いていなかったことに対して拗ねているだけですね。
それにしてもあの地域からこれで4人集まったということですか。
それも知り合いばかり。
なかなか家から遠くて選ばなそうな学園なのに、どうして集まってしまったのかは私には分かりません。
「拗ねるな拗ねるな!良いじゃないか、また一緒に通えるんだしよ」
「拗ねてない…」
明らかに拗ねている顔をしていますが、認めたくないのですね。
アーウィンがロビンと接していると子供のように見えてしまうのは何故なのでしょう。
身長がロビンの方が20センチほど大きいからですかね。
アーウィンは平均的な身長はありますからただロビンの背が高過ぎるだけですね。
「部屋案内してやるから落ち着け」
「落ち着いてるし、どうせお前と同室とかだろ?」
「当たり!」
アーウィンはロビンに背中を押され男子寮の方へ話ながら向かってしまいました、私を取り残して。
酷いです、2人とも。
私の存在を忘れるなんて、と思いましたが怒った所で仕方ないのでゆったりと寮へと向かいました。
辿り着くと建物の前に部屋の案内図を手渡されました。
どうやら1年生は1階で2年生は2階と学年によって階が異なるそうです。
私は一番奥の部屋のようで、その部屋の前に辿り着けば表札に私の名前とは別にスンリンの名前が書かれていました。
その事にほっとしつつ、早く来て欲しいなぁと思ってしまいます。
今までクロックやアーウィンが当たり前のように側にいてくれたので、部屋に1人というのが慣れないのです。
以前はこの寮の部屋の何十倍も広い部屋に1人でいても寂しく感じたことなどなかったのに不思議ですね。