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パーティーの開催のお知らせ

皆さん、こんにちは。

道端で栄養不足により倒れていたという私を男性---クラックにより助けられ、帰る家があるのかどうかさえ分からない私を、無理に追い出そうとせず、そのまま我が子のように育てていただくこと数年の月日が経過いたしました。

クロックの孫だというアーウィンとは兄妹同然に育ててられ、彼とも普通に話せるようになりました。

その間、何か記憶に引っ掛かるようなものがあればと思っていたのですが、全てが新鮮なものでした。


まず、今まで好きなときに好きなようにしていた頃とは異なり、買えるもの買えないもの、お金を稼ぐとはどういうことなのかというものをこの数年学ばせていただきました。


次に食事です。

大きなテーブルに並べきれない程にあったのが、当たり前ではなくスープとパンだけというものが如何に豪勢な食事なのかを知ることが出来ました。

今までの生活が如何に恵まれており、お風呂も入りたいと言えば入れてくれる人が側に居るのが当然で、着替えさせてくれるメイドも居ないのが当たり前だという生活に漸く慣れてきました。

最初は戸惑うことが多かったですが、今では慣れたものです。



そんな生活をしながら私は過去を振り返るようになりました。

以前の私はやりたいことをやりたいようにしておりました。

それを反対する人も居なかったですし、自分のやっていることが何故か正しいとさえ思っていたのです。

王子様の婚約者、それが私の全てでそれを邪魔するような人たちがどうなろうとも知ったことではないと思っていました。

今思えば、本当に王子様のことが好きだったのか王子様の婚約者という地位に酔いしれたかったのか分からなくなりました。

何故なら王子様に好きな人が出来たなど、知りませんでしたし、私のことを王子様がどんな風に思われていたのかなど知ろうともしていなかったのです。

王子様が本当に好きなのであれば地位を守ることを優先するのではく、彼に好かれる努力をすべき所なのに私が行っていたことは自分の立ち位置を守るための行動ばかり。

王子様が何を感じ、どう動いていたかなど知ろうとも思っておりませんでした。

きっと、私が好きだったのは彼の外面のみ。

中身など知ろうともしてきませんでした。

それなのに彼を好きなどとよく言えたものです。

こんなの処刑されて当然だと今では思っております。



「シャロン、貴女は明日の誕生日パーティー何を着ていくの?」



ふと、目の前にいた私の友人であるスンリンに問われ、何のことかと記憶を辿ってみました。

ここ数日で誰かの誕生日パーティーなどあったでしょうか。

アーウィンの誕生日はまだまだ先ですし、クロックの誕生日はこの間終わりました。

私の誕生日といいますか拾われた日はまだ先ですし、スンリンの誕生日もまだです。

他に誰の誕生日があったでしょうか。

そもそも以前のような令嬢であったときには当たり前のようにあったパーティーは、平民となった今では縁のないものとなっているのでそんなものに今の私が呼ばれるわけがございません。

あ、あとシャロンというのは今の私の名前です。



「その顔は分かっていないね?王子様の誕生日パーティーがお城で行われるでしょう?」



「王子様の誕生日パーティー……」



この国にも以前住んでいた国のようにお城があるそうなのですが、私が今住んでいる地域から遥か彼方先にあるそうなので見たこともありません。

以前住んでいた場所の近くにあったお城なら何度も見ていましたし何度も行き来しておりました。

スンリンの言っているお城が同じものなのか、はたまた全く異なるものなのかは現時点では全く分かりません。

今の国王も王子様も誰だか知りませんし、今の生活には全く関わりのないものでしたので知ろうともしてきませんでした。



「国民皆でお祝いしましょうって手紙が配られていたでしょう?」



「そう、でしたでしょうか?」



「そうなの!」



そう言ってこの地域に一ヶ所だけあるドレス店に行こうとスンリンに誘われましたが私は首を横に振りました。

以前ならドレスの購入など心踊らせながら店へ行き、気に入ったものを片っ端から購入していました。

ですが今は、居候のみですしドレスが買えるほどのお金はありません。

行ったところで追い出されてしまうのが目に見えています。



「えぇ、行かないの?」



「スンリンは是非行ってきてください。どんなドレスを購入したのか後で教えてくださいね」



そう言って笑えば、スンリンはがっかりしてしまいました。

すみませんね、スンリン。


スンリンの家は資産家で有名な一族なのですが、どうしてこんな僻地に住んでいるのか不思議で仕方ありません。



「アーウィンは行くの?」



「さぁ、どうでしょう。そういう賑やかな所は好きではなさそうですが、友達が行くと言えば嫌がりながらもついて行きそうでは有りますね」



「ありそう。ロビンあたりが声かけて行きそう」



ロビンとはアーウィンの友達で、派手な見た目で大変ノリのよい男の子です。

引きこもりがちなアーウィンを引っ張り回し、2人してじばらく家に帰ってこず、クラックやロビンの両親やお姉さんから怒られていた記憶があります。

アーウィンは私と異なり格好のことなど気にせず城に入りそうですが、城に行く前にロビンに連れられ服を借りそうです。

ロビンの家はお金持ちですからね。



「仕方ない、1人で行ってくるわ」



「いってらっしゃい」



何度も後ろを振り返るスンリンに姿が見えなくなくなるまで私は手を振り続けました。

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