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人生、そんなもん。  作者: 野島なう
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努力が趣味ですが、なにか?

初めて小説を書きました。

拙い文書では御座いますが、少しでも多くの人に呼んでもらえれば幸いです。


「人生、意外と捨てたもんじゃないな。」

なうはそう思っております。

 


「四月二十一日、月曜日、お昼の校内放送を始めます。」


 何となくの選択で、ーそれこそ何となく選んだ委員会活動で、自分の人生が大きく変わるということを、私はまだ知らなかったんだ。



 *



 吉沢晏奈(よしざわあんな)にとって、頑張ることは趣味だ。目標がないと、することなんて何もない。朝早くに起きてストレッチをするのも、電車の中で本を読むのも、好きでもない映画を見るのも、目標のため。

 先生が言っていたから。ストレッチをした方が良い、本を読め、映画を見ろ。きっとそれが目標への道筋なんだろう、と晏奈は思う。周りの人は「毎日やるなんて真面目だね」とお堅い人間判定をするけれど、私からしてみれば、した方が良いことをしない君たちが異常なだけだ。もちろん、絶対口にはしないけど。





 傾斜二十二度の激坂も、のびのびと生えた緑のルーフを見ながら登れば、気分は悪くない。むしろ坂を一歩一歩踏みしめて歩くのは、自分が毎日頑張って生きていることを足で実感しているようで、誇らしい。晏奈はわざわざこの坂道を選んで、登って、下る。


「おっはよーう。」

 締りのない声の方へ向くと、生え際の黒くなった赤茶の髪に、デニムの短パン、大きめのyシャツをルーズ着こなす、いかにも奔放そうな女の子、谷崎京(たにざききょう)がいた。京は小さい体の中にある、全ての力を使って動かしているのではないかという勢いでこっちに手を振っている。

 晏奈も、周りの通行人たちの目を気にしつつ、軽く手を振り返した。


「よくこの坂を登る気になるよねー。激坂から来るの、あんあんぐらいだよ?」

 変なの、と京はにーっと口を引いて笑う。

 私のことを変だって言うのは京ぐらいだ。晏奈は真面目な良い子。こういう表現は自分が面白味のない人間だと言われているようで本当は好きじゃないけど、自分でもそうと思う。だから、私を変なのと言ってくれる京といると世界の価値観が逆転したみたいで楽しい。




 激坂の先には、変哲もない住宅街が続く。買い物帰りらしいご婦人やお母さんに手を引かれた小さな子供が歩いていて、こんな場所に憧れの声優事務所があると知った時は不思議な気持ちになったものだ。



 晏奈の目標は、声優になることだ。夢じゃなくて、目標。昔誰かが言っていた、夢だと言っているうちは叶わない。したいことを現実にするために計画的に予定を立てる、これは夢じゃなくて目標だ。

哲学にも影響を受けやすい晏奈はなるほどと思って、それからずっと夢を目標と呼んでいた。





 「はい。これ、次の授業のプリントね。三人組で組んで次回発表してもらいます。」

 晏奈は大手声優事務所、プロテクションの養成所に通っている。六月の始めの授業は朗読だった。授業の最後に、可愛らしい少女のような声で、可愛らしい洋服を纏った、六十三歳の先生はそう言った。


 養成所に入って初めてのグループ活動。四月に入所して一ヶ月半、やっとクラスに馴染み始めた晏奈とっても、他のクラスメイトにとっても、誰かを選んでグループを組めというのは、少し悩ましい課題だった。何となく、京に目線を送る。京はこっちを見ていない。別に気にするようなことではないけど、晏奈は少しだけ寂しい気持ちになった。




 しかし、晏奈の気持ちは一時間後には復活する。京が課題を一緒にしよう、と声を掛けてくれたのだ。ぺいぺいにも声掛けといたから、と京はサラッと言う。

 ペいペいというのは、クラスメイトの山川淳平のこと。クラスのお兄さん的存在で、実際年齢も一番年上の二十七歳。晏奈と京とは七歳も違う。

「...ぺいさんも誘ったんだ。」晏奈は呟いた。

誘われたのが、自分より淳平が先なのは面白くないが、大人っぽい淳平にも興味はあったし、晏奈はこの課題をやることが楽しみになっていた。


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