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No.010 そして始まる二度目の対戦

「対戦?」


「そう。あ! 勘違いしないで。別に初心者だから勝てるだろうとか、そうゆうんじゃないから!」


 急な提案に訝しげな顔をしたぼくに、ミズナはあわてた様子で初心者狩りとは違うことを説明しようとする。


「そもそも、あたしが負けた相手に勝ったカイキさんに初心者狩りをしようってのも変な話でしょ? だから……」


 まだいろいろと言っているミズナの言葉をさえぎるように、ぼくは言う。


「いいよ。その挑戦受けますよ」


「え? いいの?」


 ミズナの反応にぼくは思わず吹き出す。


「あっははは。なに言ってるんですか。言ってきたのはそっちでしょう」


「それはそうなんだけど……」


「それに、対戦する理由なんてどうでもいい。ぼくは挑まれた勝負は断らないようにしているんです」


 そうだ。ぼくにとって対戦に理由はいらない。相手が何かを考えていたって、そんなことに興味はない。


 ただ、戦いたいから戦う。そして相手が誰だろうと、勝つ。


 戦う理由なんてそれしかないし、それだけで十分だと思っている。


「さぁやりましょうよ。対戦申請ってどうやるんです?」


 その前に場所の移動を提案してきた。確かにこんな町の中では戦いづらい。というかそもそもシステム的に町の中では対戦が出来ないようになっているらしい。


 移動した先は町から少し離れた草原。他のプレイヤーもモンスターもいない。ここなら邪魔が入らずに戦えそうだ。


 申請はせっかくだからと、ミズナに教えてもらいながらぼくから送った。申請はすぐに承諾された。


 少し離れた位置にミズナはいる。表情は今までの笑顔から一転して真剣そのものだ。互いに見合って武器を構える。ミズナはやはり片手剣を手にしている。それがメイン武器なのだろう。


 さっきの説明の際、ミズナはこうも言っていた。対人戦のときは専用のステータスが用意されると。それはレベルによるステータス差を最小限にするためで、どんなにレベルが離れていても強ステータスによる一方的な暴力を出来ないようにするシステムだ。


 そう。対人戦に至ってはレベルよりもなによりも、プレイヤースキルが高い方が勝つ。


 ただ、差が全く無いと言うわけではないらしく、やはり高レベルのほうが有利ではあるらしい。しかしそれも何十レベル離れていても一か二違うだけとのことだ。


 このシステムをぼくは気に入っていた。やはり格ゲーはこうでなくてはならい。


 自然と笑みがこぼれる。やっぱり対人戦はどんなことよりもワクワクする。相手はどんな戦い方をするのか。どんな技をどんなタイミングで使ってくるのか。どうコンボを決めるのか。


 そして、ぼくよりも強いのか。


 カウントダウンが入る。スリーカウント後に表示される「FIGHT!」の文字。


 対戦が開始された。


 まず初めに動いたのはミズナだった。


 まっすぐ距離を詰めてくる。彼女の攻撃が当たる場所まで来たところですかさず後方へと下がる。直後、元いた場所を縦に切るミズナの剣。


 間合いはお見通しだ。だって、ぼくも同じ片手剣だから。


 相手も避けられることは想定済みだったのかすぐさま横へ跳ぶ。おそらく、反撃を予想しての回避行動だろうけど、ぼくは動かない。


 再び向かってくるミズナの動きに集中する。次に来るのは、横か縦か。


 初撃は縦だった。何となくだけど、同じ攻撃は避けたくなるもの。ぼくは、すかさず身をかがめるよう入力。


 予想は見事に的中!


 ミズナの剣が頭上を横切ったところで、相手の顎をめがけ飛び上がりながらの斬撃をお見舞いする。キレイに決まったミズナの体は大きく仰け反った形を作り、少し宙に舞ったあと背中から着地した。


 このゲームではダウン中はダメージが入らないから追撃は無意味。起き上がり攻撃を貰わないよう少し離れた所でミズナが起き上がるのを待つ。


 すぐに起き上がると、走り出すミズナ。ぼくの周りをまわるように移動し、ちょうど左横に来たくらいで攻撃を仕掛けてきた。


 やってきたのは三日月状の真っ白いなにか。飛び道具系の攻撃だと気づきとっさに横に跳んだ。


 それがよくなかった。跳んだ先にミズナがいたのだ。彼女は一瞬だけ前進の速度を速めると斬撃を放つ。


 ガードも回避も間に合わない。一撃目を食らった後に流れるような三連撃。最後の突きでぼくは後方へと押し出される。


 そうか。これが<アサルトラッシュ>ってやつだ。ミズナも同じ片手剣だから使えても不思議はない。


 そう考えている間にもミズナは空いた距離を取り戻そうと詰めてくる。直前にまた一瞬だけ前進する速度が速くなった。


 この動きさっきと同じ……。


 おそらく、技の出始めにある前進効果を利用して距離を早く詰めようとしたのだろう。


 それは逆効果だ。


 やはりきたのは<アサルトラッシュ>。けれど、さっきと同じようにはいかない。


 ぼくは始めの斬撃も三連撃もすべてガードする。


「うそっ⁉」


 ミズナの驚きの声の直後に来る、最後の突き。これにはジャストガードで返す。突き少し溜めが入るから、合わせやすかった。


 ミズナの剣が弾かれ大きく開いた懐に同じ技を叩きこむ。


「お返しだよ!」


 キレイに技が決まり今度はミズナが吹き飛ばされる。


 追撃が来ると思ったのかすぐに構えなおすミズナだったが、ぼくはその場から動いていない。


 不思議そうな顔をするミズナに答えを教えるために口を開く。


「たぶんだけど、<アサルトラッシュ>のあとに追撃を入れることはできない」


「へ?」


 突然の言葉にすっとんきょうな声が聞こえる。構わずぼくは続けた。


「<アサルトラッシュ>の最後の突きは間合いが開くけど、それを詰めるために移動する時間よりも、ダメージ後の硬直が解除される時間の方が早いみたいだ。だから追撃しようとしても、回避されるかガードされる可能性が高い。だから追撃するのはやめたほうがいい」


「へえー、そうなんだ」


「あ、ごめん。中断させちゃって。続きやろう」


 改めて構えなおすミズナを見て、今度はぼくの番だと前進する。


 このあとの戦いはぼくの一方的な試合に終わった。ミズナの動きはとても分かりやすく攻撃のデパートリーも少なかった。


 結局、ダメージを受けたのは初めの<アサルトラッシュ>の時だけで、ぼくの圧勝でこの勝負は幕を閉じた。


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