とある恋愛事情について
彼女との出会いは中一で、ちょうど桜が散り始めた頃だったー。
彼女との出会いはそれなりに良かったものだろう。
部活内で初めて知り合った彼女は、気さくに声をかけてくれた。
お互いの名前と名前を交換しあう。
それは友達になるための儀式のようなものに感じられた。
一年の頃はそれなりの仲であった。
私の所属していた部活は合唱部であったので、コンクールにも出場していた。
いつも通りの練習。
それなりに部活に慣れた頃、先輩方の提案により一人1パートを歌うというのがあった。
私は緊張しすぎて上手く歌えなかった。
一年だからこんなものだろう、と思っていたが彼女は違っていた。
自分にとても自信をもち、力強い歌声だった。
無論、同じ学年で同じ練習をしてきたはずなのに。
ただただ尊敬した。
そんなこんなであっという間に一年すぎ二年になった。
この頃からだろうか、彼女と一緒にストレッチ(二人一組)をする仲になった。
彼女からの申し出であったので、少し優越感に浸りながら「いいよ〜」と返事した。
何故自分だったのかは気にならなかった。
彼女は寂しがりやなのか、ただ構ってほしいだけなのかは分からなかったが時々、抱きしめてくることがあった。
最初は物凄く驚いた。
友達という存在から抱きつかれるなんて考えてもみなかったのだ。
無論、小学生の時はそんなことなかったわけで。
そんなこんなで、最初はただ抱きつかれていただけだった。
その内、自分も抱きしめてみようかなと思い始めた。
彼女は暖かかった。
とても、安心感があった。
それが今の私たちの関係を表しているようだった。
その頃から私は彼女を意識し始めた。
始めは、気のせいだと思った。
相手は女子で、自分も女子。
今の時代そんなこと世の中で許されないと思っていた。
自分も普通に男の人と恋に落ちて、結婚したり子供作りをするものだと思っていた。
しかし、私の場合そうではなかったようだ。
どうやら神にちょっとしたいたずら心を仕掛けられ、しっかりと自分からはまってしまったらしい。
それからは、彼女を特に意識し目で追ったり、ちょっと近寄ってみたり…。
今思い出しても恥ずかしことだと思う。
月日は過ぎ、二年目のコンクールに出場した。
結果は、去年よりも遥かに上回った。
けれど、それでも悲しくて泣いてしまった。
釣られ泣きというやつだ。
彼女は凄く泣き虫なのだろうか。
一番泣いていたような気もする。
それだけ、思入れが深いのだろう。
そんな、彼女を横目に見ながら、来年は自分達が最後の番なんだなと改めて思い知らされた。
先輩方の卒業式も終わりようやく落ち着いた頃、卒部式が行われた。
主役の先輩方とはこれが最後なのか、と思いながらその日が終わった。