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24.日々の鍛錬②

 俺はその辺にある小枝を拾い、ヒュンヒュンと軽く素振りをした。

 そして、一つの大木の前に立ち、深く、深く、深呼吸をする。

 限界まで集中力を高め、己の意識を非常識なモノへと変化させていく。

 俺に出来ないことはないと、そう、心の奥底から信じる。


「すぅーー」


 やがて己の意識の書き換えが極限に達した瞬間――


「疾っ!!」


 ――渾身の力で、小枝を横薙ぎに振るい、大木に当てる。

 本来の小枝の強度であれば、大木に思い切り当ててしまえばあっさりと折れてしまうが、俺の想像力が具現化したそれは。大木を切り裂き、そして――


「クソッ。七割ってところか?」


 ――大木を七割ほど横に斬り付けたあたりで止まってしまった。

 今の俺ではこれが限界だが、父さんは大木を縦に切り裂くような芸当をいとも簡単に行う。少しずつ近づいているのは確かだが、その道程は、遥か長く険しいものだと毎朝痛感させられる。

 だが、俯いている暇などない。そんな暇があれば、この一瞬をどう有効活用するかに考えを回すべきだ。


 俺は腰に携えたロングソードを抜き、再び想像力と魔力を剣に注ぎ込んでいく。同時に探知魔術を行使し、己の周りの状況を脳内に展開する。

 剣を振るう対象は、目の前と真後ろにある二つの大木。

 剣に魔力の線が走り、紅く煌めく。


「二ノ型――」

 己の脳内に攻撃対象を捉え、そして――


「――散華!」


 ――一息に振るった。その次の瞬間、


 ズズゥン……ッ。と地面に鈍い音を立てて目の前と真後ろにあった大木が全くの同時に倒れた。

 同時に倒れた理由は単純で、俺が全く同時に二本の斬撃を放ったからだ。

 この型は父さんに教えてもらった物の一つで、俺が想像力を現実に昇華できるようになり始めた時に一度だけ教えてもらったのだ。

 尤も、これに関しても父さんには遠く及ばない。父さんは百を超える斬撃を任意の場所に出現させることができるらしいからな。

 他にも、任意の空間を切り裂いて次元の壁を作る『万華』、空間を削り取るほどに魔力を圧縮する『閃華』、あらゆるものを切り裂く斬撃を生み出す居合『斬華』などを教わっているが、今の俺では父さんの百分の一も再現することができていない。

 きっと、まだまだ鍛錬が足りていないのだろう。


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