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義兄妹LOVE入門編  作者: はるやこやな
9/15

夜更けの父息子




 やれやれ……今日も帰りが随分と遅くなってしまった。まあ日付が変わっていないだけ、まだマシか。


 車を降りて我が家を見上げると、2階の電気はすでに消えている。ゲームばかりして夜更かしすることの多い娘だが、今日はもう寝ているようだ。

 玄関を開けて家に入ると、どの部屋の照明もついていない。妻は今日は夜勤だから、帰りは明日の朝になるだろうが、息子ももう寝ているのか。

 シンと静まり返った家に帰ってくるというのは、やはり寂しいものがあるな……と、ダイニングの照明をつけた私は、悲鳴を上げそうになった。

「……!? な、なんだ!?」

 誰もいないだろうと思っていたダイニングのテーブルに、暗いオーラを放った男が1人、座っていた。

 一瞬、同僚の医師から聞かされた、ホラー話の悪霊か!? と、ゾッと悪寒が走ったが、よく見ると、それはよく知った我が息子であった。

「せ、清一! なにをやっているんだ、電気もつけずに! 驚かすんじゃない!」

「…………よう、親父……帰ったのか」

「なんだ、どうしたんだ一体」

 酒にめっぽう弱い息子だというのに、テーブルには空になったビール瓶がすでに2本も転がっており、さらに3本目に入っている。座っているのに体がフラフラとしていて、目の焦点も合っていない。

 よっぽどのことがなければ、清一がヤケ酒などしないだろう。まあ、清一をこんなにしてしまう原因は、たった1つしかないが。

「あやと、何かあったのか。とりあえず、もう飲むな」

「あや……うっ、ぐっ」

 清一の向かいの席に座り、ビール瓶を取り上げる。すると息子は妹のことを思い出したのか、なんと目元を片手で覆いながら、泣き出してしまう。息子が泣くところなど、子供の時以来見ていなかっただけに、さすがの私も、これには焦る。

「わ、わかった! ちゃんと聞くから話してみなさい!」

 本当は帰宅してすぐ、まずはゆっくりと風呂にでも浸かって1日の疲れを取りたかったが、もうそれどころではなさそうだ。だがまあ、たまには、息子の悩み相談に付き合ってやるのも悪くないだろう。

 私は食器棚から新しいグラスを取り出して、あらためて清一の向かいに座り、飲みかけの瓶ビールを自分のグラスに注いだ。

「あの小僧、殺す!」

「……いきなり、医者の息子とは思えん発言だな」

 泣いていたと思ったら、今度は目を血走らせて怒りを露わにする。危険だ。

 下手なことはいわないほうがいいなと、勝手に喋り出した息子の話を、私はただ静聴した。

「あやが、あやが変なんだよ……今朝まではたしかに俺のこと好きだって……何回も何回も! いってたのに! 放課後にあいつ……あの小僧が勝手に家に上がり込んでて…………あやのか、彼、かれ、か、彼氏? とかいってんだよ。何いってんだよって感じだよなぁ」

「ほ、ほう……それで?」

「いや、それはいいんだよ。あやとあいつの演技だから。多分。いや絶対だな! ……問題はそのあとだ…………あぁ……! 思い出しただけでツライ!」

 早くいえよ。明日も早いんだから。と、急かしたくなる気持ちをグッと抑えて待つ。

 清一は、また泣き出しそうな顔をして、やっと話し出す。

「俺……演技とはいえ、ムカついてさ…………あいつ! あやのおでこに……あやはあやで、あんな小僧にあんなことされて顔赤くしてるし……ムカついたんだよ」

 えらくあやふやな内容だが、まあ要するに、目の前で他の男とあやがイチャついてるのを見せつけられて、腹が立ったのだろう。まんまと2人の思うつぼ、というわけか。

「……演技とはいえ、あやが俺以外に触られるのなんて許せねぇ……だからやめさせようとしたら……子ども扱いしてると思われて……あや、すごい怒ってた」

「子ども扱い? なんだそれは」

 さすがに話が飛びすぎて理解できない。詳細を聞いてみると、つまり、あやとその少年の別れを清一が強要しようとしたため、あやが怒り出して部屋に閉じこもってしまったらしい。

 本当に、あやとその少年が交際しているのであれば、悪いのは100%清一のほうだが、演技だというのならば、事情が変わってくる。変わってくるが……あいにく私は、息子よりも娘の味方だ。

「それは清一、お前が悪い。」

「……いうと思った」

「そもそも、お前があやの気持ちに応えてやらないから、こんなややこしいことになるんだろう。いい加減、子ども扱いはやめてあげろ。お前だって、好きなんだろう? あやのことを。恋愛対象として」

 義兄妹とはいえ、自分の息子と娘の恋愛事情を尋ねるのは何気に勇気がいったが、ここまできたからには、とことん腹を割って話し合うほかあるまい。

 家で1人、ヤケ酒していたところを見ると、可哀想なことに、他に恋愛相談できる相手もいないのだろうから。

父と息子の恋愛トークw 続きます(/ω\)

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