表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
義兄妹LOVE入門編  作者: はるやこやな
12/15

両想い




 柔らかくて温かくて、気持ちいい…………? じゃない!!


 私は慌てて、目の前の影近から離れる。そして、たしかに彼の唇に触れていた口を押さえて呆然とする。


 今……何した? 影近の口と、私の口がくっついた。でも一瞬だったから、事故? いや違う。影近はごめんと謝ってから私にキスした。キス…………してしまった……清一の前で。清一以外の(ひと)と。影近はわざとした……? どうして……。


 咄嗟の出来事に、頭が混乱してうまく回らない。いいようのない不安のような悲しみのような感情に苛まれた私は、兄と目が合った瞬間――ついに泣き出してしまう。

「……っ……こんの…………クソガキ!」

「お! お兄ちゃん……!」

 私同様、何が起こったのか理解できない様子で、しばらく呆然としていた兄だったが、私の泣き顔を見て我に返ったように、怒りを爆発させる。

 影近の元まで大股で距離を詰めた清一は、怒りのままに影近の襟元を乱暴につかみ上げ、そのままソファの裏側に叩きつけるようにして投げ飛ばした。影近は背中を強く打ったせいで、咳きこんでしまう。

 しかしそれでもまだ兄の怒りは収まらず、苦しそうに息を整えようとする影近に歩み寄って、まだ何かしようとする。これにはさすがに泣いている場合じゃなくなった私は、兄に縋りつくようにして止めに入る。

「やっ、やめて! 乱暴はダメ!」

「っ! だってお前! 泣いてるじゃねぇか!」

「そ、それはビックリして……。とにかくもう大丈夫だから、やめて!」

 しっかりと兄の目を見て説得すると、兄の表情から怒りの気配が徐々に消えていく。固く握られていた拳からも力が抜けていった。

 そして影近を素通りして、リビングのテーブルの上に置いてあるティッシュボックスから2、3枚ティッシュを抜き取ると、私の元へと足早に戻ってきた。

「なん……んんっ!?」

 何の断りもなく、ゴシゴシと少し強いくらいの力で、唇を拭かれる。

 やっとティッシュが離れた瞬間、唇が荒れてしまうと文句をいおうとした。


 いおうとした、その口は――今度は目の前の愛しい人の唇によって、塞がれていた。


 今度は間違いなく、私の一番好きな温度と感触。何度も与えられた、兄の温もりだった。

 でも信じられない。今の兄は酔っ払いじゃない。素の状態で私にキスをしている。

 ドキドキと張り裂けそうになるほど、心臓が鼓動を打っている。恥ずかしい。でも、この瞬間がずっと続いてほしい。

 突然のことであるにもかかわらず、確かな幸福感を感じながらも、ゆっくりと唇を離していく。

 間近で見た兄の目からは、初めて見るたしかな熱を感じた。


「あや……好きだよ」


 ゾクリとするような声音での告白を、私はどこか夢でも見ているかのように聴いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ