秘密
今日は、軍学校の入学式だ。はっきり言おう、何でこんなことになった?女子に囲まれて移動出来ない。レンは、ため息ついている。なっ、何かごめん。これって、僕のせいなんですよね。
「天然無自覚男、これで少しは思い知ったか?」
「なんか、ネーミング変わってないか!?」
当たり前だとばりに、ムスッとしてこちらを見るレン。うん、ごめんごめん。
「あのさ、お前って子供っぽく無いよな。」
「………。」
言うべきだろうか?言えば、怖がられるかな?
「お前って、俺らと同じなんだよな。」
「そうだね。肉体と年齢は同じだよ。同じなんだ。」
「????」
含みを入れつつ否定はしない。
「それより、場所取りしないと行こう。」
「おっ、おう。」
レンは、戸惑いつつも考えるのをやめる。
「そう言えば、お前って物知りだよな。異世界には、魔物は居ないんだって。何でだろうな?」
「何でって、魔力が無いからだよ。この世界では、空気や地面に魔素がいっぱいある。その魔素を、たくさん体内に溜めたものが魔物になる。」
「なあ、何で異世界には魔素が無いのかな。」
暢気に、聞いてるレンに違和感を感じる。
「それは……、必要無いからじゃないかな。」
「お前って、異世界人なのか?」
真剣にこちらを見てくる。心臓を鷲掴みされた気がして息を呑むと、やっぱりなという表情をする。僕は、訂正するため口を開く。
「元異世界人だ。今は、転生して一応こちら側の人間だよ。けど、秘密な。」
レンは、驚く。異世界人は、たまに召喚されるのでそれなりに居るが転生児はとても珍しいのだ。それこそ、昔の伝説やおとぎ話にしか出てこない空想の人。それが、目の前に居るのだから。
「わかった。あと、秘密を教えてくれてありがとうな。死んでも、秘密にするから。」
「馬鹿!死にそうになったら言っても良い。」
「おまえな、ばれたら全国の武装勢力や武装集団とかに狙われるんだぞ。そんくらい、お前の存在はまれで凄いことなんだ。」
シーン。レンが、遮音魔法をとく。僕も、人ばらいの魔法を消す。それにしても、思ってるときの口調としゃべる時の口調が違いすぎる。なおすべきなんだろうけど。まぁ、大丈夫かな?
「さて、あと10分で始まるし急がないと!」
僕は、頷くと追いかける。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
おっ、終わった……。校長の話し長い。レンも、隣でぐったりしている。先輩たちは、なれてるのか苦笑して僕ら新入生を見ている。
「大丈夫か?お前ら」
先輩が、心配そうに言う。
「はい、何とか……。」
「俺、もう駄目……。」
「まぁ、あれはわざとだから。」
なるほど、新入生の精神力を試すためか。
「お前ら、名前は?」
「俺は、レン・エイトンです。」
すると、周りがざわめく。当たり前だ、軍本部のエリート第七小隊の副隊長の息子だしな。
「僕は、ファイ・シュナータルです。」
更にざわめく。あらためて、ロゼのすごさが分かる。先輩も、驚いて口をパクパクさせている。
2人同時にため息を吐き、アイコンタクトすると頷きあう。
面倒だし、逃げるか?
そうだね。何か、人が集まって来たし行こう。
コクリッ コクリッ
「「それでは、失礼します。」」
ペコリ ダッシュ!
「おいおい、今回は大物揃いだなぁ……。」
こうして、無事に乗り切るのだった。