誘拐
駄目だ……。体が、重い……。家に帰り、水を飲むがさっきの光景が頭から離れない。僕が、人を殺した。無慈悲に、容赦なく……。光り輝く光の刃。それが敵の急所、頭や心臓を貫通していく。吹き出す鮮血と、断末魔の声。うっ……。僕は、慌ててトイレに向かう。結局、吐き出すものが無くなるまで吐いてしまった。
「本当に、親が帰って来る日じゃなくて良かったとつくづく思うよ。はぁ……。」
うがいをして、服を着替えシャワーを浴びる。そして、急いでベッドにもぐる。疲れた。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
軍本部第七小隊の部屋に電話が入る。出たのは、不幸か幸いかロゼだった。
「はい、こちら第七小隊。えっ、学校から電話ですか?分かりました、繋げてください。」
皆は、作業をやめて見ている。すると、ロゼが息をのみ血の気が無くなって行くのが分かる。
「お前の息子が、サリバーズ軍の軍人に襲われた。幸い、怪我もかすり傷くらいらしい。」
青ざめて、出て行こうとするロイを止める。
「待って、本題はここからだ。それにきずいたファイが、サリバーズ軍の軍人たちと交戦になってファイがレンを助けるために初めて人殺しをした。けどレンは、ファイを化け物を見るような目で見たらしい。しかも、ファイはもし自分の予想が間違ってたら退学ものだと言われ覚悟を決めて助けに行ったのに。だから、2人の親は直ちに家に帰り子供達の精神的なケアをして欲しいらしい。これは、軍の幹部からの命令でもあるらしい。未来ある、若い芽を潰さないように。」
ロイは、頭を抱える。ロゼは、皆を見る。
「行って来い。たぶん、2人とも心がボロボロなはずだ。とくに、友人を助けるためとは言え初めて人殺しをしたファイは負担が大きいはずだ。」
2人は、真剣に頷くと帰る支度をして出て行く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
体が熱い。寝ても、魘されるし……。でも、寝ないと寝ないと……。フラッシュバックする光景。…………っ!!駄目だ、考えては忘れないと。
ピーンポーン♪
動きたくない、体が重い……熱い。
ガチャッ……
んっ?今のは、まさか……。青ざめる……。
「なるほど、人殺しは初めてだったのか。」
たくさんの、サリバーズ軍人達。不味い、ベッドから出て魔法を展開し隙をうかがう。
「なるほど、術式の展開速度と魔力量そして技術。さすが、あの魔女の息子だな。」
「!」
「抵抗するな。お前は、こっちにとって身内だから傷付けたくない。それに、お前と戦うとなればこちらも手加減出来ない。」
「身内?どう言うこと……。」
「俺は、お前の従兄弟カインだ。だから、手荒なまねをしたくないが……時間が無いな……。」
攻撃してくる。最悪だ、集中が乱れる。
「俺は、運が良い。まさか、お前が弱ってるとは思わなかった。と言うわけで、砕けろ!」
パーン。シールドの魔法が、砕け散る。カインに突き飛ばされ、ベッドに倒れる。カインは、部下に僕を押さえるように言う。
「うっ……。」
「さて、やっとひと息だな。」
「お前達の、目的がわからない。」
すると、優しい笑みで言う。
「俺達の目的は、最初からお前だけだ。あの少年は、かすり傷しかしてなかっただろ?じわじわと攻撃して、お前の心を折るつもりだった。」
「何で、僕を狙う。」
すると、真剣な表情で言う。
「お前の母の、研究データはおまえに封印されているのが分かったからだ。と言うのは、軍人としての理由。1番の理由は、家族として一緒に暮らしたいからだ。まぁ、嫌だろうけどな。なんせ、母を殺したのは俺達が所属している軍だからな。その表情からして、知ってたか。」
「嫌だと分かってるのに連れて行くのか?」
「あぁ、恨んでくれても構わない。とりあえず、眠って貰おうか。」
コンタクトを外して、こちらを見る。
「魔眼……。」
すると、笑ってカインは息がかかるくらい近づくとゾッとするような声で言う。
「俺の目を見ろ。」
目をそらしたい。だが、カインが押さえてるので動けない。緑の魔眼が、光る。嫌だ、その魔眼は母さんと同じ……。体から、力が抜ける。
グッタリ……。
「はぁ、手間かけさせやがって……。」
「お疲れさまです、カイン隊長。」
「あぁ、それよりそろそろあいつが来る。みんな、撤退するぞ。目的は果たした。」
急いで出て行く。カインは、ファイを抱え森を全力で走る。追い付かれないように。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロイと別れ、家に急ぐ。ドアをみて、息を呑む。ピッキングの跡が残っているからだ。
「ファイ!」
慌てて、ドアに触れるとやはりドアは鍵がかかっていなかった。部屋には、土足の跡がたくさんある……。青ざめる、ロゼ。ファイの部屋に、慌てて行く。ファイの部屋は、滅茶苦茶だった。家具は倒れ銃や魔法の痕跡もたくさんある。ファイは、抵抗むなしく連れ去られたようだ。
「くそ、やられた!奴らの目的は、最初からファイだったのか……。」
もっと、自分が早く帰って来られてたら……。悩んでる暇は無い。この様子からして、今から追っても追い付かないだろう。軍に、報告してロイの場所に急いでいく。
「おい、どうしたんだロゼ。」
「やられた……。」
それだけで、だいたい分かったのかロイはロゼを真剣に見つめ一応確認する。
「何があった。」
「ファイが、サリバーズ軍に連れ去られた。」
村人達も、驚いて子供達も泣き出す。
レンは、複雑な表情をしているが本心はとても心配していた。俺、まだ謝ってもいないのに……。




