始章
双子神はまず一つの世界を作り出した。
それは原初であり全てが等しき無であった。
その姿に憂いを覚えた双子神は自らの力を分け与えた三つの種族を生み出し、それぞれに世界を構成するための力と役割を与えた。
天使には秩序を築かせ、精霊には法則を司らせ、竜は世界に悪をもたらした。
天使は空を生み出し、精霊は海を生み出し、竜は大地を生み出した。
天使と精霊は悪たる竜を滅ぼしたのちに、創造主たる双子神の行いに倣って星の数の命を生み出した。
後に天使は星の海へと浮かび世界を見守る道を選んだ。
後に精霊は生まれ出た命を見守るために人の心へと居場所を移していった。
死した竜は骨となり砂となり大地と一つとなって生命を育む礎となった。
我が子達は立派になった。この世界に祝福あれ。
双子神は三種の結末を見届けるとこの世界から旅立っていった。
人の子よ。罪深き人の子らよ。
万物を生み出し見守る者達への畏敬を忘れるなかれ。
全ての始祖となる双子神への感謝を忘れるなかれ。
己が宿命を忘れるなかれ。
今汝らが己の足で立っていられるのは全て双神によって与えられたものである。